第49話 シロの過去 見習いは辛いよ
コレは、アチキの過去の記憶。
具体的に言えば”神使見習い”だった時の話だ。
語りも当時に合わせるから、まぁ釣りしながらでも話そうか。
~神界 神使養成所~
此処は神界、要は神様達が暮らす世界だ。
その中にある施設、真神神使養成所にアチキは所属している。
今日から一ヶ月間の研修がある……初めて地上へ降りる日なんだ。
予定地はヒノモト村、そこにいる土地神様の手伝いとなっている。
真神師匠は行き先を伝えた時に怪訝そうな顔をしてたが―――
『まぁお前なら上手くやってくれるだろう、しっかりお役目を果たしてこい』
と言っていた、その土地神には色々と黒い噂が立っているようだ。
アチキも不安だが頑張るしかない。
……同期にクロというへなちょこもいるんだが、今回は別々。
アイツは泣き虫だからなぁ、アチキがいないとピーピー泣いて仕事にならんだろうな。
だがいつまでも甘えさせるわけにはいかんのだ。
※偶然研修地が別になっただけである
「ん……そろそろ時間か」
あれこれ考えている内に降りる時間になってしまった。
武器や道具の準備が終わったらサッサと行ってしまおう、シショーからお小言を貰う前にな。
~ヒノモト村(約100年前) 神社~
さて、とりあえず神社に降りたは良いが―――
「ボロボロだな、ホントに土地神がいるのか……? 」
雑草が生え、長年放置されていたであろう建物にはキノコや苔が生えている。
いつから手入れをしてないんだ? いくらなんでも酷すぎる。
……と色々考えていたら、急に後ろから男に声を掛けられる。
「あ~……お前が研修に来たっつう神使見習いか? 」
「貴方が此処の土地神、様ですか? 」
「やめろやめろ、敬語なんて。お前も災難だな、こんな辺境の地に寄越されるなんて」
「辺境、ねぇ。静かで良い場所じゃないですか、昼寝とか捗りそうです」
「へッ、まぁいい。早速だが神社を綺麗にしてくれ、式神でもなんでも使っていい。俺は散歩行ってくる」
そう言うと土地神(自称)様は神社から出ていってしまった。
散歩、とは言っていたが流石にサボりではないだろう。村の様子を見て、人々の困りごとを解決してくるに違いない。神界で読んだ書物にはそのように書かれてたから、きっとそうだろう。
まずは式神を召喚して―――
「よし、格が低くても5体ほど出せば何とかなるだろう」
『……』
「まずは雑草を―――」
そして半日が過ぎた頃には境内に生えてた雑草は綺麗さっぱり刈る事が出来た。
次は手分けして建物の修復作業を行おうとしてたら、あの土地神(自称)様が戻って来る。
それにしてもだらしない服装だな、髪もぼさぼさだ。
一応人の上に立つ者として身だしなみくらいはしっかりした方が良いと思うんだが……言った方が良いのだろうか?
「なんだ、まだ終わってないのか」
「雑草刈りは終わりました、これから建物の方に移ろうかと―――」
「使えんヤツだな」
「なっ……!? 」
「寝てる間に直しておけよ」
何なんだコイツは!
……しかし相手は仮にも土地神、アチキは神使。
消すとなれば一瞬だろう、抑えなくてはな。
まずは式神を増員して夕方までは終わらせる事にしよう。
~一週間後~
「だーッ!! もう我慢の限界だ! 」
早くも一週間が過ぎた、しかしやっている事はほとんど雑用ばかり。
内容もどれも人助けとは関係のないものが多かった、主にあの土地神の周り支度が多かったな。
飯を作れだの、掃除しろだの、酒買ってこいだの……一度後を付けてみたが土地神らしい仕事は全くしてなかった! アチキが物の怪を狩らねば村人は危なかった時もあった。
「帰ったらガツンと言ってやる……! 」
ましてやアイツはつけあがっていた。
土地神だから人よりも上位の存在と言うのは分るのだが、崇められても、モノを奉納されても感謝を言わない。それは人として……いや、神としてもあってはいけない。真神師匠はよく言っていた、”たとえ神であっても感謝の気持ちは忘れてはいけない、人あっての神だからな”と。
村の人々が丹精込めて作った作物にケチをつけるなんてとんでもないヤツだ、あんな神には使えたくはない。もし配属がそのようになったら引きこもってやるさ。
ガサガサガサ……
「……ん、何か動いたか? 」
この時は丁度ヒノモト山を哨戒中だった。命じられたからではない、アチキ自らの意思でやっていた。
川沿いの茂みで何かが動いた気がするが……すこし突いてみるか?
「誰かいるのか? 」
薙刀の柄で茂みを突いてみる……すると揺れは一層激しくなり中から何かが飛び出してきた。
『シャァァァァァ!! 』
「うわっ?! あ―――」
蜘蛛の様な物の怪に突き飛ばされ、アチキは川へと転落してしまう。
激しい流れに抗う事も出来ず、そしてアチキは気を失った……この時はもう駄目だと思った。
散々クロにも”集中を乱すな”と言ってたくせに、怒りで散漫していたようだな。
あぁ……死ぬ前にもう一度、アイツの塩むすびを食べたかった、な――――――
~ヒノモト山 カワゾイ集落~
『……~い』
誰だ? 何か呼ばれている気がするが……
『お~い、シロ~? 起きてよ~』
クロか? アチキは眠いんだ……睡眠の邪魔をするんじゃない
『痛っ?! こんのぉ、起きねぇと食っちまうど!! 』
……んん? クロ、お前喋り方がおかしくないか?
そんなに訛っていなかっただろう。
「蹴る元気があるんなら起ぎろってんだよぉ! 」
「分かった! 分かったから……ってあれ? 此処は、何処だ? アチキは確か川に落ちて―――」
「ったく、川さ犬っころが流れてっから不思議と思って拾ったら人さなるし……お前ぇ何もんだ? 」
拾った、と言う事はこの河童がアチキを助けてくれたのか。
ひれの付いた手足に青緑の湿った肌、頭には曇りのない皿……男性らしく腰簑を付けている。
さらには釣り竿と獲物を入れるための籠、アチキはどうやら釣られたようだな。
「それは……その、まずは礼を。助けていただき感謝いたす、ご老人」
「お、乱暴なヤヅど思っだら意外に礼儀を知っとったか。カッカッカ! 」
「アチキの名はシロ。神使見習いで、ヒノモト村の土地神の元で修業をやってたんだ。山を哨戒中に物の怪に襲われて川に落ちてしまったんだ」
「ヒノモト……? あぁ、あの麓の村か。運が善がったな、オラが丁度下りて釣りやってての」
その後彼からこの集落の事を聞いた。
ヒノモト山の中にあり、川のすぐ脇に集落が建てられた事から”カワゾイ”と呼んでいるそうだ。
住んでいるのは水を必要としている種族、此処では河童が多い。
他の村との交流はなく、狩猟で生計を立てているらしい。
そしてアチキは傷が癒えるまでの間はこの老人の元に厄介になる事になった。
……一応式神を使ってあの土地神様にも報告はしておかないとな、後々面倒くさそうだ。
”神が助けられてどうする”とか言われそうだけどな。
「改めて、少しの間世話になります」
「おう。しっかり治していけよ、飯はちゃんと食わせてやっからよ」
ふぅむ……何から何まで申し訳ない、傷が癒えたらしっかり恩を返さないとな。
明けましておめでとうございます。
皆さま、今年もよろしくお願いします。
ど~もKUMAです。
今回はシロの過去話、新年だからもっと新年らしいお話にしようかと思ったのですが思いつきませんでした。とりあえず話の内容をば……彼女が神使見習いの時のお話になってます。
まだまだ未熟な時代をいかに表現するかを迷いましたが、動きをそのまま文にしてみたらいつものシロになった気がしなくもない……”あれ~? ”っと思いましたが、変に変えるよりはいいかと思いそのまま続けました。
とりあえず今回は助けられたところまで、次回は戦闘をチョイと入れる感じになるかな。
あくまで予定なので変わるかもしれませんがね。
ではまた次の機会にお会いしましょう、ではでは~




