第47話 立場の違いはあれど……
洞窟を見つけたは良いが、隠し扉が閉まると光が射しこまない為中は真っ暗だ。
ここは【灯りの札】を壁に貼りながら進むとしよう。
しかし……入り口の近くからデカい蜘蛛の巣が多い、道を塞ぐように張ってある。
「この程度であれば武器に霊力を籠める必要もないな」
灯りで向こう側も見えるくらい薄い、薙刀を軽く振るうだけで簡単に撤去できる。
厚い束のようになっている場合は霊力を籠めて刃に直接触れる前に斬るんだが、毎回やっていては敵と対峙する前にバテてしまう。少しでも節約できるのであればその方が良い。
ある程度進むと分かれ道にぶつかった。
片方は下へ、もう片方は上に進むようだ。
「フム……こっちは外に繋がっている、のか? 」
上に続く道からは微かにだが微かにだが風に乗ってくる外の匂いを感じる、そして堕ちた妖怪の匂いも……子供が数人だな。正確な人数と性別までは分らないが、おそらく集落に住んでいる奴らだろう。
道を塞ぐ巣を取り除くと匂いも濃くなった、しかし厄介なのは巣以外にもある。
妖蜘蛛の卵だ……糸で作られた大きな玉が壁に点々と引っ付いていた。
すでに生まれている個体もいる、黄色と黒の縞模様の蜘蛛だな……おそらく警備を行っているらしい。
「処理しながら進むか、敵の情報はあった方が良い」
アチキに気づいた妖蜘蛛は牙をカチカチ鳴らし威嚇を行う……すると奥からワラワラと湧いて出て来たではないか。やれやれ、主殿から火華を(無断で)借りてきて正解だったな。
「出番だぞ、火華」
『……』
鞘から抜いて声を掛けても反応なし、半ば無理やり持ってきたから拗ねているのか?
……仕方がない、ならばこうするとしよう。
まずは切っ先を蜘蛛たちに向け、あの呼び方をする。
「華ちゃん」
『その名で呼ぶなと言っているだろ!! 』
刀身から勢いよく炎が噴き出し、前方の蜘蛛を焼き払ってくれた。
ようやくやる気が出たならばこのまま突き進んでしまおう。
『ったく、お前の所為で供え物を食い損ねたではないか』
「仕事が終わったら後で食える。ほっておけば村の脅威にもなりうる相手だ」
刀が食事をすると聞いて疑問に思う者もいるだろう、簡単に説明しよう。
たしかに霊刀である火華は意思があり、女子の姿で現れる事もあるが我々と同じように実物を食べているわけではない。実体があるわけではないから当たり前だ。コイツが食うというのは供え物に宿る霊力の事……味は人が感じる物と同じらしい。
『後で甘味処の饅頭を持ってこい、それで手を打とう』
「……まぁ考えておくよ」
最近になってコイツも舌が肥えてきたらしい、主殿にもこうなのだろうか?
仮にそうだとしたら一度お灸を……とりあえずソレは後だな、蜘蛛を一掃出来たのであればドンドン進んでいこうではないか。
※※※
特に分岐点もなく行き止まりの空間に到着した。
構造は大きな半円状で天井には穴が開いているが侵入者を防ぐためなのか蜘蛛の糸が張り巡らされている。
所々に大小さまざまな岩が転がっており、蜘蛛の糸に包まれた何かが張り付けられている……卵ではないようだ。
何かが包まれている部分は楕円状に盛り上がっている、そう丁度大人一人が入りそうなほど―――
「……! ま、まさか」
アチキは中を傷つけないように慎重に糸を斬る……すると中身がズルリと出て来た。
あまり表現したくはないが、簡単に言うと死体が入っていた。
身体の所々が液状化し目玉は垂れさがり、他の臓物もはみ出ている……主殿は来れなくて正解だったかもしれん、アチキも慣れているわけではないがあまりにも酷すぎる。
「生き残りは……? 」
周囲を見回すと同じようなモノがいくつもある、一つ一つ確認するが……皆死んでいた。
天井から垂れ下がっているモノも同じ、此処にあるのは遺体ばかり。
アチキはそれらを集め、一カ所にまとめると火華の力を使って火葬を行う事にした。
何故この事態に気づけなかったのか、もっと来訪する頻度を増やすべきだったか? 話を聞くべきだったか?
どれだけ考えても答えは出ない……既に手遅れだったのだ。アチキは、命の恩人である彼らを助けられなかった。
『おいシロ』
「……」
『人はいずれ死ぬ、それが遅いか早いかの違いだ』
「……なんだと? 」
『全ての命を救うのは無理だ、例えあの天照でもな』
「お前に何が―――」
『聞け、人の生死で動きを縛られるのであれば神界へ帰った方が良い。この先辛くなっていくだろうからな、それが嫌なら自分の立ち位置をもう一度よく考えろ』
アチキは言葉を返せなかった。
ただただ俯き、拳を握る事しかできなかった……火華の言っている事は正論なのだ。
だが、アチキは―――
「それでも、救いたかったんだ。コイツ等には恩がある」
『フム……そこまで言うなら俺は止めん。今は進むしかないだろう? もう一方の道に微かにだが生気を感じたぞ』
「な……何故それを早く言わない! 」
『聞かれなかったからな、急げばまだ間に合うかもしれんぞ』
文句を言いたかったがそれどころではない。
来た道を急いで戻り、もう一方の下り道を駆け足で進んでいった。
道中には先ほどよりも多くの妖蜘蛛がいたがほぼ無視、攻撃の合間を縫いながら無我夢中で突き進んだ
※※※
~蜘蛛の洞窟 最奥~
最奥には廃れた寺院があった。
苔の生えた瓦や床の木材も一部失われており、今にも崩れ落ちそうだ。
遥か昔から建てられていたらしいがその理由は不明、文献すら残ってはいないだろう。
そして入り口付近の階段には濡れた足跡と米粒が落ちている……ヒノモト村から食料を盗った者が入ったのは間違いない。中から青年の怒鳴り声が聞こえてくる。
「もう……コレが最後だ! 皆を返してくれッ! 」
『足りん、足りんのぉ。これでは我が子達の腹は膨れん……やはり童を喰らうしかないのか』
蝋燭の灯りが二人の姿を照らす。
食料を持ってきた青年は河童のようだ、頭部には皿、顔には鳥の様な嘴。緑がかった肌に手足には水かき、背中には甲羅を背負っている。対するは人間の女性のようだがどこか様子がおかしい……衣服は一切纏っておらず、背中から細く鋭い脚が八本生えていた。
「や、約束が違うじゃないか! あと米俵一つ持ってくれば―――」
『また子が生まれたのだ、とても俵一つでは足りん程な……ククク』
「……ッ」
『ほれ、童どもが食われても良いのかえ? 』
背中の脚を動かすと上から糸で包まれた子供たちが降りてくる。
歳は5~6才ほどで人数は6人、男子と女子が半分ずつだ。
細い糸を伝って大人の手のひらほどの大きさの蜘蛛が次々と寄ってくる。
「わ、わかった! もう一度行ってくるから待ってて―――」
バンッ
青年の言葉を遮るかのように扉が開かれる。
振り向いた先にはシロが息を切らしながら立っていた……服はアチコチすり切れ、頬には傷もある。
相当無理をして此処まで走り抜けてきたのだろう。
「ぜぇ……ぜぇ……ふぅ、その必要はないぞ」
「あ、貴女は……? 」
『嗅ぎ付けるには遅くはないか? ヒノモト村の神使、シロよ』
「五月蠅い、黙って斬られて消滅しろ」
シロは火華を抜き、地面を強く蹴った。
板材が弾け、青年はその姿を見失ってしまう……次の瞬間、突風が吹きその場へ尻もちを衝いてしまう。
既にシロは蜘蛛の物ノ怪に斬りかかっており、相手は背に生える脚で受け止めていた。
「チッ、流石に硬いか」
『血気盛んだねぇ……』
物ノ怪は力を込めると簡単にシロを押し返した。
彼女が着地を行う頃に静かに立ち上がると、両手と背の脚を開き戦闘の構えをとった。
『まぁ良かろう、この絡新婦が相手になろう』
はいど~もKUMAです、今回はサピッと挨拶させてもらいます。
実は先々月あたりからガッツリ体調を崩しており、割と大変な状況の中書き上げました。
……え、愚痴は聞きたくない? ハイ、分かりました_(:3」∠)_
えっとぉ、今回はシロが物ノ怪の巣へ入り込んだお話ですね。
蜘蛛ですよ蜘蛛、絡新婦が相手です。
どんな姿にしようか迷いました、最初は着物姿としようとしたんですが「なんか違う」となりました。
「思い切って男……? いや違う」と部屋で悩み、詰気分転換にゲーム実況のタイトルを見たんです。
「”防具を付けない”……? こ、コレだ! 」となって衣服を纏っていないという姿になりました。
終わった後にバイ○ハザードで似た敵がいたと思いましたが、きっと気のせいでしょう。
そして道中でシロが過去に助けられたという話をこぼしましたが、コレは今の話が終わったとに書く事になります。神使の2人の修業時代のお話……神界でどんな風に過ごしてたんでしょうねぇ。
おっと久しぶりの様な気もしますが今回はここまで、また次の機会にお会いしましょう。
ではでは~




