第29話 取り戻せた? それとも……
~ヒノモト村 神社にて~
時刻は与作さんの顔が取られた日の夕方頃。
今日は村の会合がある日でした、今回のお題は新しい住人の受け入れについてでした。
最近になって一気に増えましたからね……住居のほかに商売したい方の為に土地の分配、資材の確保、資金運用方法等々、時間はあっという間に過ぎてしまいました。
「よ~しッ、こんなもんだべ」
「あ゛~終わった終わった、オラぁ腹減っただ」
皆さんもお疲れの様です、その中には与作さん……の偽物もいます。玄内さんも出席される予定でしたが予定の時間になっても来ませんでしたね、何かあったのかな?
「結局最後まで玄内さん来ませんでしたね。与作……さん、何か知りませんか? 」
「んん、オラはぁ―――」
「玄内なら昨日一緒に酒飲んだっぺ、飲み過ぎて忘れたんか?」
「んだんだ、まだ寝てんだぁ」
ん~……玄内さんならもしかしてって思ったのですが、フム。制限時間もハッキリしていませんし、私達が直接対処するしかないのかもしれませんね。
「そうでしたか、お酒を……あぁそうだ与作さん、ちょっとお話があるので残ってもらえます? 」
「ま、まだあるだか? 疲れてんだがなぁ」
「山に関する事なので与作さんにしか聞けなくて、すぐに終わりますので」
他の方はササッといなくなってくれました、最後まで渋っていましたが偽者さんも折れてくれたようです。
さてシロ達には念話でコッソリ伝えておきましょう。
※※※
~ヒノモト山~
何とか偽者さんを村人たちから引き離せましたがここからが本番です。
広い場所にも出れましたし、行動開始ですよ。
「なぁマコト様、此処さは木が無ぇだ。次の場所さ行ぐべ」
「いえ此処で良いんです。与作さ……いえ、その偽者さん」
お札を取り出し相手との対峙、顔が一瞬引きつった様な気もしましたがすぐに悪い顔になりましたよ。
物の怪としての本性が出たのでしょう。
『やはり気づいてだか、さすがは土地神様。何時からだ? 』
「朝の喧嘩の時からですよ、私だけだったら危なかったけど後ろの二人のおかげで確信できました」
彼はジリジリと後退り。しかし後方からは武器を構えたシロとクロが現れ退路を塞いでくれました。
結界は今回は使えないので助かりました、相手は物の怪と人間の間に位置する宙ぶらりんな状態……結界を張ってもすり抜けてしまうとクロ達が言ってたのですよ。
「おおっと、逃がさんぞ? 」
「諦めろ。この山奥までくる人はほとんどいない、村でのように隠れられないからね」
『……チッ、だがオラを殺したところでアイツは―――』
「元には戻らない、ですか? 大丈夫、貴方の事はちゃ~んと調べてありますよ。今回はかなり強引な手段ですが、これ以上時間をかけられませんので」
制限時間が不明ならばこうするしか手段がありません、幸いにも偽物さんを倒せば元に戻ると報告は聞いてますし、後は神界の調査資料に間違いがない事を祈るだけです。
『じゃあ戦うってか、見た目以上にオラは強ぇぞ? 』
「借り物の姿で何を言ってる!! 」
ズバッ!
偽者さんの身体に一筋の線が入り、真っ二つに割れた……と思った矢先にスゥっと消えてしまいました。
シロの不意打ちは失敗し私も相手を見失っちゃいました、周囲を警戒すると何処からか声が聞こえてきました。
『おぉ怖ぇ怖ぇ、一瞬反応が遅れたら死んでただ。強ぇとは言ったが守りに関してだ』
「そこか! 」
今度はクロが近くの枯れ木の上を目がけて刀を振るうと青白い剣撃が放たれましたが、シロと同様の結果に。気が付けば周囲には無数の偽物さんがいます、身体は与作さんで、それぞれの顔が別人のものに……いままで奪った人の顔でしょうか? 少し気持ち悪いです。
「あわわわ……何か沢山増えましたよ?! 」
「クッ! こんなに多くては匂いも分らない、シロッどうする!? 」
「……別にまとめて薙ぎ払えば良いだけだろ? クロは主殿を頼む、さっさと跳べッ! 」
振り向くと後ろで刃が青白く発光した薙刀を構えるシロがいました。
彼女は私が反応できないと思い、クロに指示を出したと思うのですが……うん、正解です。
かなり動揺してるのに突然跳べるわけないじゃないですか。
「陸ノ段―――」
「いぃッ!? ま、マコト様失礼します!! 」
「ワッ……クロ意外に力持ち―――ムグゥ!? 」
「小望月!! 」
肩に担がれたと思ったら急上昇、舌をかんじゃいました。
シロの薙刀をそのまま真横に薙ぎ払うと青白い光は伸び、次々と偽者を斬り裂いていきます。
確率は半分ほどでしたがどうやら当たりを引いたようです、前方の集団の中から1つ影が飛び出しましたよ。
「いちち……ハッ、クロあそこ! 」
「何処ですか!? 」
「下じゃないよッ上! 1体だけ跳んでるのがいる、私を投げて! 」
「み、見つけましたが……本当によろしいのですか? 」
「良いから早く! 相手が逃げちゃうよ!? 」
流石に彼も一瞬躊躇しましたが両手でしっかりと掴むと、2~3回ほど回転で勢いをつけ対象へ投げくれました。飛びながらの確認でしたが、飛び上がったのは偽者さんであっていたようです。まだ下に注意を向けているからか私の接近には気づいていませんね。
「にぃ~がぁ~しぃ~まぁ~……」
『ん? ヌォォォォッ!? オメェいつ―――』
「せんよッ!! 」
偽者さんの頭部にお札を1枚ペタリと貼り付けると、私はそのまま失速。
落下しながら手を向けお札を起動させました。
張り付けたのは雷光のお札、頭部で青白く発光しバチバチと帯電を始めます。
『と、取れねぇッ! クソォォォォ!! 』
バチ、バチチチチッ……
音の間隔は短くなり、遂には空から一筋の雷が放たれました。
耳を塞いでも聞こえるほどの轟音が響き渡り、偽者さんは弾けた……と思います。
目をつむってましたからね、結構な近い距離でしたからこればかりはしょうがないでしょう。
地面に到達する前にシロが私を受け止めてくれました、分身が消えている様子から上手くいったみたいですね。
「主殿! 」
「ワワッ……と、シロありがと」
「マコト様大丈夫ですか!? お体に怪我は……」
「まさかクロに投げさせるとは思わなかったぞ、まぁ見た所外傷はないようだな」
その後二人には周囲を探知してもらいましたが反応は無し。
これで終わったと思い、神社に戻りましたが与作さんの顔はのっぺりとしたまま……言葉を失ってしまいました。機転を利かせたシロが戻るまで時間が掛かる事を伝えてくれましたが、与作さんは分かっているみたいです。念のためクロには神社で待機してもらい、シロはもう一度山へ、私は村へと向かいました。
※※※
時刻は夕方、もうじき日は完全に沈み夜が訪れようとしていたころの事。
長屋にある玄内の家に何者かが訪ねてきていた。
「だぁれだ……コッチは昨日の酒のせいで頭が痛ぇってのによぉ」
「げ、玄内、助けてくれ」
「……早く入れ、何があった? 」
入ってきたのは裂傷やひどい火傷を負った与作であった。
ヨロヨロと部屋に入るとそのまま倒れてしまう。
玄内は彼の身体を布団に寝かせると治療を始めるために薬草を煎じ始めた。
「何からやられたんだ、物の怪か?」
「―――だ」
「あんだって? 誰と―――」
「マコト様にやられただ、突然オラを物の怪と言って……ぅぅぅ」
与作の言葉に玄内も固まってしまう、一度冷静になる為に別の作業を行う事にした。
薬草を保存している棚の前に立ち何かを探しながら彼に声を掛ける。
「そうか、アイツがそんな事を……」
「オラだって信じたくねぇ! 」
「はなから俺は信じちゃいねぇさ」
玄内は棚から1本の短刀を取り出し、鞘から抜いた。
その様子を見た与作も顔を青くする。
「な、何をしてるだ? 」
「信じてねぇのオメェの事さ、誰だ。与作じゃねぇのは分かっている」
「ま、まさか……グォッ?! 」
正体を見破られた顔盗り……与作の姿が溶け、中から白く顔の無い人が出現した。
すぐさま玄内の顔を奪おうと接近するが自身の頭部に短刀を突き刺される。
『ギャァァァァッ?! な、何故人間がこんな刀を持って―――』
「うるせぇ、俺の部屋で騒ぐな」
『グッ?! ォォォ……』
玄内は短刀を抜くと逆手に持ち替え今度は喉へと突き刺した。
それが止めになったのか顔盗りはその場で膝をつき、消滅していく。
彼の持つ刃はほのかに光を放っていた、マコトや神使の扱う霊力と似た輝き……おそらく霊刀か妖刀の一種だろう。完全に消滅した事を確認すると半紙で刃をふき取り、鞘に納め棚へしまった。
そして次の日の朝、神社で夜を明かした与作の顔は元に戻っていたという。
5月……そしてGWにも突入、皆さんどのようにお過ごしでしょうか?
ど~もKUMAです。
新しい環境もやっと慣れたころに連休に入るのは勘弁してほしい……いえ、休みがいらない訳ではないですよ? 色々とやりたい事もありますし、休日は大歓迎です。
さてさてそんな事よりも、新しく登場した物の怪ですがあっさりやられてしまいましたね。話の展開を3パターン位用意してたのですが、まさか玄内が倒す方向に傾くとは作者自身思ってもいませんでした。最初はマコトの顔を奪って、力の暴走でパーンっと自爆する内容だったんですが、練りに練っているうちに
自爆→マコトたちが討伐→村人の誰かが討伐の流れになっていきました。……不思議ですねぇ(;´・ω・)
とりあえず今回はこのくらいで、また次の機会にお会いしましょう。
ではでは~……あ、そういえば新作も公開してますのでそちらもどうかよろしくお願いしますね




