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土地神ライフ  作者: KUMA
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第24話 鎌鼬の夜

月日は経ち、私が土地神になってから初めての秋を迎えました。

吹く風は冷たく肌を刺すようで、冬が来るのもそう遠くない事も感じています。


今いる場所は村の墓地、神社と同じ山の中にありました。現代と違っていて、お墓の形は綺麗に整った四角いモノでなくごつごつした楕円形の石が多く置かれています。その中でも新しい花、線香と蝋燭が添えられたお墓の前に立っています。


「ごめんなさい、遅くなりました……」


村人や旅の方々を守る事が出来なかった……ある期間の間私はヒノモト村に居れなかったんです。

この世界のルールによって。


神無月に……つまり十月。

その間は地上に神様が存在してはいけない期間。神使、そしてスサノさん達も例外ではありません。皆神界へ帰ってしまうんです、本人の意思に関係なくね。


もちろんその対策はしていましたよ。八頭(やがしら)さんからアドバイスを受け、シロとクロから協力を得て村に強力な結界を張ったんです。いない間はその結界で物の怪が出現する事や外からの襲撃を防げるはずでした。


しかし、神界滞在期間が半分を過ぎた時……役場からある知らせを受けました。



【ヒノモト村が物の怪の襲撃を受けた】



「未熟な土地神とはいえ神使の協力を得た結界が破られることはまず無いはずだが……」

陽光さんはそう言いました……この知らせを聞いた時に私の頭は村の事で一杯で半分以上話を聞いていなかったんですけどね。



早く戻らないといけない



それだけしか考えられず、部屋を飛び出して広場にある転移の鏡の元へと急ぎました。でも其処にあったのは光を失った大きな鏡のみ……通行証である勾玉も反応しない。


他に村へ戻る方法がないかを考えた、それはもう必死に。

一寸さんにミコトさん、八頭さん、この時気が動転していた所為かスサノさんにまで聞いていました……最後の頼みの綱であった陽光さんからも言われた事は同じ。


【世界の理を無視する事は出来ない、例え神であっても】




……それから約二週間。

神無月が終わり、ようやく私は戻る事が出来ました。いない間に村の雰囲気は大きく変わっていましたよ。村内には黒い風が吹き、修繕した建物は所々大きな切り傷が目立っています。

人々も暗く、ひゅうひゅうと唸るような風の音を聞くと身を竦め神社へと逃げていきます……よほど恐ろしい物の怪だったんでしょう。

聞いた話では襲われた時間帯は夕方~夜、畑仕事の帰り際だったそうです。風が吹き始めたと思うと後ろを歩いていた村人の姿は消え、視線の先には黒い風の渦が発生していたとの事。不気味に感じその場から早々に立ち去り、次の日に同じ場所へ行くとそこにあったのは血まみれの衣服を来た骸……一緒に居た村人だったそうです。


それから同じように姿を消す人々が増えていき、被害は旅の方にまで広がっていました。再び神社へ逃げ込む人々……これでは私が初めてこの村に来た時と同じ状況ですね。

璃狐さんや枯狸さんもいましたがどちらもその物の怪から傷を負い、瘴気に穢されていました。治療を行い、彼女たちからも情報を得ましたよ。


その物の怪は風を使う(いたち)、【鎌鼬】。

私の知っているモノであれば三匹組なのですが、この村に現れたのは大型で数は一体のみ。

野生の鼬が瘴気の進行によって腕は鎌へと変化し、身体は巨大化。村内に目に見えるほど濃い瘴気を含む風を発生させ、日々獲物を選定しているそうです。



戻った時、皆さんホントに怯えていました。傷を負いながらも戦おうと外に出た璃狐さんを見た時は泣きそうになりましたよ。玄内さんからは平手打ち……ぶたれてもしょうがないですよ。おばちゃんはその行動に対して怒っていましたね。

それからは物の怪討伐のための準備……クロとシロの協力もあって1週間で終える事が出来ました。璃狐さんも「やられっぱなしじゃ気が済まない」と言われ傷の治療を急かされましたよ、駄目といっても無理やりついてくる勢いでした。



「そろそろ行きますね、貴方達の仇……きっと討ってみせます」


外も暗くなり、月の輝きは普段よりも不気味に感じます。

……鎌鼬が動き出す時間だからなのかな。



決戦場所は村の広場、いつもは行商人の方々がいて賑わっているのですが、襲撃に遭ってからその声は聞こえなくなりました。広場の中央に設置されているのは血で汚れた衣服を着た案山子、誘き出すための餌ですね。その周囲には黒い風が集まってきています……次第に案山子の姿は見えなくなりましたが、私の目には風が渦巻いている様にしか見えません。


「主殿、奴が姿を現す……警戒を」

「マコト様は璃狐と共に後方で支援をお願いします、前衛はお任せを」


「シロ、クロ、よろしくお願いします。璃狐さんも無理は駄目ですよ? 」

「なんで私が後ろに……」


璃狐さんは何やらブツブツと呟いていますね、彼女の怪我もまだ完全に治っていないので注意は向けておきましょう。風の勢いも強くなってきました……そして今にも押し潰されそうな重圧、渦は次第に大きくなりチラチラと内部にいる相手の姿が見えてきます。人よりも大きい、一瞬見えた腕部は大きく変形し蟷螂のような形をしていました。


相手は腕を振るい、自身を囲む風の壁を切り裂くと同時に攻撃を仕掛けてくる。

真直ぐ黒い真空刃が私の元へと向かってきます。


「やらせはしない!飛べッ、繊月(せんげつ)!」


シロの薙刀から霊力の刃が放たれ、真空刃と衝突し相殺されました。

続けて第二撃が放たれますが鎌鼬はその場から跳んで回避……枯れた桜の大木の上に着地しこちらを威嚇してきます。


『フシュルルルッ!! 』


「よほどこちらに恨みがあるようですね、でもこっちも負けるわけにはいかないんです! 」


弓の式神・丁を召喚し、攻撃の指示を出すも相手の動きの方が圧倒的に速い……でも良いんです。

この攻撃はあくまで囮。本命はクロの方ですから


真神流剣闘術まがみりゅうけんとうじゅつ(ろく)ノ段―――」


空に逃げた鎌鼬を追うようにクロも飛び上がり何もない空間を蹴る、すると彼の身体は勢いよく加速した。

一歩、また一歩と回数を増すごとに速度は上がっていきます。

目で追えなくなってきた頃、クロの攻撃が始まりました。


疾術剛犬(しつじつごうけん)!! 」

『グ、ギャゥゥッ?! ガアッ!! 』


四方八方から繰り出されるの斬撃の嵐……申し訳ありませんが今回は最初から全力です。

シロの方も攻撃準備が出来たようみたいですよ、刃が金色に輝いています。

真神流薙刀術まがみりゅうなぎなたじゅつ 七ノ段 仲秋名月(ちゅうしゅうめいげつ)

前はその場でコマのように回っていたと聞いていますが、腰を深く落として武器を構えています。

スサノさんの一件で神界に行っている間に修業をしてたんでしょう、帰って来た時には2人とも傷だらけでしたからね。


彼女は両手で薙刀を回しながら相手に接近し、クロへ声を掛けました。


「クロ、行くぞっ!」

「任せて、合わせるッ!」


クロの斬撃の速度がさらに上がり、霊力の込められた軌跡は空中に銀色の月を生み出しました。

今私の目の前には二つの月が見えています。


「真神流―――」

「―――秘奥義」


「「双月十文字斬そうげつじゅうもんじぎりッ!! 」」


なんと合体技ですか!? くそぅカッコいいなぁ。

金と銀……二つの月が交わると十字の亀裂が入り、光が弾けました。

鎌鼬の身体から血が激しく噴き出し、地面へと落下。



ズシンッ……と重い音が聞こえました。

ピクリとも動かず血が溢れて地面へと消えていくのを見て、「仇は打てた」と思った時―――


『グ……グゥゥゥ』


「なッ?! アチキ達の全力を受けてまだ生きてるのか! 」

「シロッ?! 駄目だ、今近づいちゃ―――」


クロの制止を振り切り薙刀を突き立てようと飛び掛かるシロ……その様子を見た鎌鼬の口角が上がっていました。こう、ニヤリと目で見てわかるくらいハッキリ。


「やらせま……せんよッ!! 」


懐から札を取り出し、シロに向けて放ちました。使ったお札は【突風の札・丁】、この格のお札一枚だけでは彼女を動かす程の威力がないので三枚同時使用です。コレは神界で聞いた裏技で、使用する枚数を増やすことで威力も上昇すると陽光さんに教えていただきました。……その分身体への負担も増加するんですけどね。


お札は飛んでいく途中で風に変わり、宙に浮いていたシロの身体を真横から吹き飛ばしてくれました。

そして先ほどまでいた位置に鎌鼬の腕が空を切る……あと一歩遅かったら身体が真っ二つになってましたよ。


「グッ……すまない。助かった主殿」

「早く体勢を整えて! 次が来ます!! 」


鎌鼬はその場から身体を回転させながら立ち上がると、その身に風を纏わせて黒い竜巻となりました。

ゆっくりですが移動し始め、速度を上げながらシロの元へと向かっていきます。

援護しようにもお札があの風に負けてしまう、どうすれば……?


「マコト、私にさっきの札を貸して」

「璃狐さん? いったい何を―――」

「早く、間に合わなくなるわよッ! 」


もの凄い剣幕でこちらに訴えかけてくる。

札を取り出すと奪い取って自身の目の前に浮かべ呪文を唱え始めました。

先ほどと同様に風が吹き始め、璃狐さんを覆い始めていきます。


「目には目を歯には歯を……竜巻には、竜巻よ!! 」



ゴオオオォォォッ!!



じ、自分の身体を変化させて竜巻に?!

鎌鼬の生み出した竜巻にぶつかっては離れ、再び近づいてぶつかる……まるでコマの様ですね。

互いの勢力は均衡状態。もう一押しあれば状況が好転するかもしれません。


「援護行きます! 」


何処からともなく弓を取り出したクロは複数の矢を放ちました。

先端にお札が付けられているようですが、あの風では……


しかし矢の勢いは止まらず、それぞれに火が灯ると璃狐さんの竜巻に飲み込まれていきました。

どうやら性質が変化し、炎の竜巻となって勢いが増したようです。


「よし、燃えてきたぁっ! 一気に押しきるわよ!! 」


ホントに燃えてます、熱くないのかな?

黒い竜巻は徐々に小さくなり、璃狐さんに呑み込まれてしまいました。内部では切り裂きながら炎で燃やしている様です、このまま終わってくれれば良いのですが……


11月になりましたか……あっという間でした。ど~もKUMAです。

9月、10月とかなり忙しい期間が2ヶ月続くも何とか更新できました、時間を見つけてチマチマ書いてて良かったぁ……(;´・ω・)

これからは徐々に寒くなり、雪が降って、温かい食べ物がさらに美味しくなる……あ、私は冬眠しませんよ? 今後も更新できるように頑張りますとも。


え~今回のお話はチョイとばかしシリアスに書いたつもりなんですが、マコトが語りを行うとその雰囲気が薄れるというか何というか……どこかこう、ほのぼのとしてしまう気がするんですが私の気のせいでしょうか?

そして最初から物の怪の正体も分っている状態、相手は鎌鼬。この物の怪はメジャーな存在なので特に説明はいらないかと思います。ヤマトでは大型の一個体、両手が鎌状に変化しているモノとなっていますね。4対1で数では有利なマコト陣営ですが、相手は結界を破るほど強力な物の怪……一筋縄では勝てないでしょう。


とまぁ今回は此処まで。結果は次の更新で、いやそれともまた次? それは彼女達の奮闘次第……ではでは失礼します、後書きの最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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