第19話 神界の異変は地上にも…
~神界 ???~
現在、神々は窮地に立たされている。
町中で爆発音が響き渡り、建物は破壊され、火は燃え盛る……いわゆる壊滅状態と言うモノだ。
街の中央には巨大な蛇が暴れている……首の数は八つ、見るからに異形であることは分かるだろう?
『八頭ぁっ! ソイツの好きにさせるなッ!! 』
『む、無理を言わないでください!? 力を抑えるだけでも精一杯なんです! 』
『うるせぇっ! その体格で手加減もクソもねぇだろッ!? 念話せる余裕があるなら身体の全制御を取り戻せ!! 』
緊急事態だがとりあえず挨拶をしておこう、天照大神の陽光だ。念話の相手は八頭、コイツの事は追って説明する。マコトが地上で色々やっていたようだが、こちらも負けじと賑やかだぞ?
あ~……賑やかとは言うが、悪い方向でな。
状況は最悪、簡単に説明すると……妹がキレた。
ああいや、ミコトじゃない。一番下のヤツ。
「キャハハハハハハ! やっちゃえ、ヤマタノオロチ~!! 」
『スサノさん?! それは止めてーーーっ?! 』
ゴゴゴゴゴゴ……ドガーンッ!!
それぞれの首からは炎や熱線等、何かしら放っていやがる。
その轟音に混じって無邪気な笑い声が聞こえるだろ? あの八岐大蛇の頭部、一つだけ誰か上に乗っているだろ? そこから大蛇を操ってるのが俺の妹、スサノだ。
現世で須佐之男命と言えば分かるか? 見ての通りかな~…………りっお転婆娘でな。
なんで俺が面倒を見てるかは追々説明するとして、此処もそろそろ危ない。
「あ~ッ!! 天兄ぃ、やぁっと見つけた! 逃げちゃ―――」
「チィッ! 見つかった! 」
「―――駄目だよ!! 」
今の標的は俺だ、コイツから離れるわけにもいかない。
瓦礫やら廃墟の影に隠れても数分で見つかてしまう、千里眼でも付いてるのか俺の妹は?
「ああもうっ、頼むから蛇の頭を突撃させるのは止めてくれ! ソイツは一撃が重すぎて往なすこともままならん!」
「アハハハハハハッ! イ~ッだ、絶対潰してやるんだから……イケ~!! 」
おい、見てみろよあの無邪気な笑顔。そして迫りくる七つの蛇の頭、八頭仕事しやがれ。
「ヌォォォォォォッ?! それは流石に受けきれん、俺は逃げるぞっ!! 」
「あっ逃げた! 待て~!! 」
※※※
~ヒノモト村 神社~
「おお……? また揺れた、最近多いなぁ」
ヒノモト村では最近弱めの揺れですが、地震が起きています。
村人の方々も不安になっているようですので、近々周辺を調査しなくては……
「マコト様っ、ご無事ですか~?! 」
この声は……クロですね。
心配なのは分かるけど、今は村の方を優先してもらった方が良いかな?
「大丈夫だよ、私より村の人達は? 」
「ハイッ! もちろん全員無事です、シロに周辺の調査を頼みました。璃狐と枯狸には村内の確認。与作、玄内の二人に……」
う~ん、仕事が速いなぁ。
被害は特に無いようだけど、一応見回りは必要だよね。
「そっか、じゃあ私も村の様子を見てくるよ。ちょっとの間神社をお願いできるかな? 」
「分かりました、お任せください! 」
※※※
~ヒノモト村~
「特に異常は無し……っと、クロの報告通りだね。 せっかくだしあまてるに寄ってから……」
グルッと一回りしてきましたが、怪我人も建物や作物への被害は無し。
とりあえず一安心です。
こういった村の見回りも神様としての仕事の一つ。他には自分の神社の管理や、村や外から来た方々から願いを聞く事……でもなんでも叶える訳ではないですよ? 願い事に関係した小さな幸運が訪れるらしいです。
そうそう、物の怪退治も忘れてはいけません。いくら土地神がいても発生してくるんですよね。餓鬼、幽霊、堕ちた付喪神等々……これ位なら一人で対処できる程度までは成長してますよ。
ただ最近、ここ2~3ヶ月に定期的に発生している地震の影響の所為か強めの物の怪が出てきてるんです。
まぁ色が変わっただけなんですが……複数体出てくると厳しい戦いに。そういった敵が出現すると村の空気が少し重くなるのですぐに分かるので、神使の2人に手伝ってもらって退治してます。
説明している間に甘味処に到着……ん、結界? 店の前で誰かが騒いでる、いや……戦ってる?!
「枯狸! そいつ等を一カ所に集めて! 」
「はいッ、イきます……木葉舞!! 」
どうやらこの中で璃狐さんと枯狸さん達が物の怪と戦っているようです。
相手は餓鬼が5体……被害を抑えるために結界を張っていたのかな? それで感知できなかったのか。
いやそれよりも! あの2人戦えたの?!
結界内では小さな竜巻が発生し、餓鬼たちを巻き上げていきます
「続けて変化、分福茶釜……吸引ッ! 」
枯狸さんが木葉を投げたと思ったら巨大な茶釜に変化しました。
自分が化けるんじゃないのですね……先ほどの竜巻に巻き上げられた餓鬼達が次々と入っていきます。
「義姉さん! 」
「いくわよ~、蒼炎……派手に燃えなさい! 」
璃狐さんの手のひらに蒼い火が……や、火傷しちゃいますよ?
皆さんは絶対にマネしないでくださいね。
「ふ~っ! 」
ボッ、ボボッ! ゴオオオォォォッ!
息を吹き掛けると小さかった火は勢いよく燃え盛り、炎となって茶釜を包み込みました。
よくよく考えてみれば彼女達は妖怪。これ位できて当然なのでしょう。
徐々に蒸気を吹き出して……これ爆発するパターンでは?
「これでおしまいね、枯狸。霊力を収束させるわよ! 」
「ハイッ、慎重に……慎重に」
溢れる蒸気が茶釜と炎を包み込んでいきます、宙に浮いて球状になり徐々に小さく……あ、中でキラリと何かが光りました。
「よしッ、封印完了! 久しぶりにしては上々ね」
「ふぅ~……今回は成功だね、結界を解くよ」
蒸気が宙で霧散すると、何か落ちてきた。
そしてソレをキャッチした璃狐さん、一体なんだろう? 結界も解けましたし、聞いてみましょう。
「お二人とも、大丈夫ですか? 結界の中で沢山の物の怪と戦っていたようですが」
「ま、マコトさん?! だだ大丈夫、です」
「大丈夫よ、世話になっている所くらいは自分で守らないと。ハイ、コレあげるわ」
ポイッと銀色の球体を投げてきました。線がはいっていてソコから割れそうですが、カッチリくっ付いています。そうですね……正面から見ると勾玉を二つ合わせたような感じです。
大きさはゴルフボール位、結構軽いけど材質は金属かな……多分。
枯狸さんが投げた正体はコレだったんですね。相手を油断させるために道具を化けさせてたらしいです。
……え、あの一連の流れは全部まやかしだったの?
「それは【封印の勾玉】。さっき戦ってた物の怪が入ってるの」
「多少時間は掛かりますが中でしっかり浄化されますので、何度も使える便利な道具ですよ」
ヒノモト村に来る前に持っていたモノなのでしょう、璃狐さんは「もう必要ないから」と言って残りの二つも譲ってくれました。
この【封印の勾玉】というのは、とある妖怪の方々が物の怪と戦う力のない同胞や人間の為に作り出した道具との事。旅の際は複数個持ち歩くのが常識らしいですよ。
注意点としては性能が持ち主の霊力に大きく影響される為、自分よりも格上の相手に対しては意味がない事。
「(本当は私達を助けていただいたお礼なんです。恥ずかしいみたいで義姉さんはあのように言ってますけど……)」
「(そうなんですか、貴重なモノをありがとうございます。大切に使わせていただきますね)」
「ちょっと何二人でヒソヒソ話してるの、お団子食べに来たんじゃないの、土地神様? 」
おおっと、本来の目的を璃狐さんから見抜かれていたようです。
~休憩中~
外でお団子を食べながらおばちゃんから近況を聞いていました。
お二人は現在、甘味処で働いており、おばちゃんの家に居候させてもらっているそうです。
「璃狐さんはすっかり快復したようですね、元気そうで何よりです」
「ええ、あの二人はしっかりしていますよ。宿代はいいからと言ってるのですが、璃狐が払うと聞かなくて……」
休憩中のおばちゃんは嬉しそうに話してくれます。仕事の覚えが早く、客の呼び込みも上手い。
さらに物の怪が出た際は先ほどのように退治してくれる……宿代以上の働きだと思う。
「ただ、つまみ食いするのが……マコト様、失礼します」
「はい? どうしたんですか? 」
静かに立ち上がると、食べ終わった団子の竹串を手に取り、厨房目がけて一投。
真直ぐ飛んでいき、璃狐さんの元へ。
「美味しそうに出来た……一個位食べてもは分からないでしょ、いただきまぁ――― 」
スカーンッ
柱へ突き刺さると良い音が鳴りました。
串には璃狐さんが食べようとしていた刺す前の団子が一個、見事真ん中を貫いてます。
「あーッ?! 何ナニ?! 外から!? 」
「つまみ食いは駄目と、何度も言ったでしょう。よもやマコト様にお出しする団子を……」
「ね、義姉さんまたやったんだ」
穏やかな口調で言っているようですが、おばちゃんの目が笑っていない。
だってあの細い目がしっかり開いているんだもの、凄みがある。
やっぱり只者じゃないのでしょう。
「お、おばちゃん。私は大丈夫ですよ、お代わりの分は二人の休憩時にでも食べてください。
御代は此処に置いておきますね」
お金を置いて、席を立つと何か声聞こえてくる。
コレは男性の声の様ですね、とても聞き覚えのあります。
「ォォォ……」
周囲を見渡しますが、他の人には聞こえていない様子。
首を傾げてフと視線を上げると人影が見えました。
「退いてくれぇぇぇぇぇぇっ! いや、マコトかっ!? なら退くなッ!! 」
「は……? ハァァァァァァッ?! 」
ズドンッ
空から陽光さんが落ちてきました。
唐突過ぎる出来事に避ける事は出来ず、そのまま私と衝突。
砂煙が巻き上がり、甘味処のお客さん達が集まってきました。
「なんだなんだ? 」「土地神様に何か落ちてきたぞ」
「うぉ、団子が砂で……」「汁粉うめぇな~」
等々、反応は様々。
いやぁ~不思議な事が起きますね、まさか空から天照大神が降ってくるなんてね。
「イタタタ……おい、大丈夫か? 」
「だ、だいじょばないでず……グフゥ」
「おいおいおい、マコトッ?! しっかりしろ! 割と危険な状態なんだ! 」
いやいやいや、いきなり落ちてきてソレは無いでしょう。
姿がハッキリと見えているような気がしましたが、私の意識はここできれました。
※※※
目を覚ましたのはそれから約1時間後。
時間で言うと16時過ぎくらいかな。自宅の布団で寝ていました。
「……ん、んん? 家の中? さっきまで外にいたのに」
「ま、マコト様?! 良かった……もう目を覚まさないかと」
いやいやソレは言いすぎでしょう、クロ。
いくらなんでも上から落ちてきた人から潰されて死んじゃうなんて―――
「いや普通の人間なら死ぬだろ。……とは言え済まなかったな、マコトよ」
後ろに振り向くと陽光さんが座っていました。
いつものように綺麗な恰好かと思いましたが、アチコチ傷だらけで鎧姿でした。
心身共に疲れ切っているのでしょうか? なんと言うか……覇気がないです。
「よ、陽光様も無理はなさらないでください。いくら貴方様でもあのお方の……」
「クロよ、ソレは言わんでくれ。俺も好きでアイツの相手をしているわけじゃないんだ」
むむむ、話が見えません。クロも陽光さんの前だから緊張しているように見えますが、それとは別に何かに怯えているようにも感じます。【あのお方】という時に服の袖を強く握っていました。
「……とりあえず、何か作りましょうか? 」
布団から出て料理の準備をしようとすると、クロが止めに入ってきました。
「だ、ダメですよ! マコト様も安静にしていてください! お食事でしたら僕がお作り―――」
「私が寝ている間、ずっと此処に居たんでしょ? そろそろ戻らないとシロに文句言われるよ。私なら大丈夫だから……ね? 」
そう言うとクロは渋々と了承してくれました。もっと食い下がってくると思いましたが、何かを感じ取ってくれたんでしょう。「お困りの時はいつでも呼んでくださいねッ」と言って持ち場に戻りました。
さてさて……何を作りましょうか。
「ご要望があればお聞きしますよ? 」
「……白飯を頼む、それだけで良い」
「ハイ、では少しお待ちくださいね~」
~土地神 料理中~
「お待たせしました、どうぞお食べください」
「……おい、俺は白飯だけと言ったんだが? それとこんなには食えんぞ」
「それだけでは寂しいかな~と思ったので、大根とその葉を使ったお味噌汁、胡瓜の浅漬けも追加してみました。滅多にない機会ですし、一緒に食べませんか? 」
料理の準備とアレコレ作っている内に外は夕暮れ、私もお腹が空きました。
疲れていて、さらにお腹が空いているのではまともに話すこともできないでしょう。
「……スマンな、ありがたく頂くよ」
「はいッ、ではいただきましょう! 」
弱ってる時は頼った方が良いのです、人間でも神様でも……ね。
「ム……中々良い漬け具合だな、この胡瓜」
「フフフ、今回は自信作なのですよ。前作った時は塩加減で失敗しちゃって……」
それから他愛もない話が続きました。陽光さんからは神界での仕事話や、神様同士での飲み会。私はヒノモト村であった最近の出来事等々。彼も食べていくうちに元気が出てきたのか白米を二杯もお代わりを……多めに炊いておいて良かった。
「ふぅ、食った食った。ご馳走さん」
「いえいえ、お粗末様でした」
食後にお茶を一杯……飲んでいる途中、陽光さんは何かの覚悟を決めたのか真剣な顔つきとなりました。
「今回の事だが、神界で厄介なヤツの相手をしていてな」
「……もしかして、クロの言っていた【あのお方】ですか?」
「そうだ、まぁ……俺の妹なんだがな」
妹さんの相手をするのに武装は必要なの? 刀も本物に見えますし……ああ、成程。
現世のサバゲーみたいなことをしているのでしょう、それなら少しは納得できます。
「そんなもんじゃねぇ、下手したら俺が死ぬ。お前も声だけなら聞いたことがあるかもしれんぞ? たしか神社を建てた時に会話に乱入してた」
「……え、あの幼い女の子の声の方ですか? 駄目ですよ、危険な事をしては」
「ああもうっ、色々とややこしくなるからしっかり説明してやるよ。俺の妹の名前はスサノ、建速スサノ。お前が神社を建て直した辺りから親父達から預けられてな……」
どうやら神界の決まりを破った事が原因のようです。私も関係しているとの事ですが、全く身に覚えがありません。相談で時々神界に行くくらいで、他にはお札の調達ですかね……。
スサノさんが来てから陽光さんの周りは賑やかとなった。仕事で相手にできないと部屋の中で大暴れ、かと言って職場で面倒を見ながら仕事をしていれば他の職員にも様々な邪魔をしてくる日々。
伝承でかなり破天荒な事は知っていましたが、まさか女の方になっているとは予想外です。
今回は彼女の溜まった鬱憤が爆発して、神界で大暴れ中……その影響が地上にも地震となって現れているらしいです。
「ミコトや、他の神と交替しながら相手にしているが事故が起きた。交替の転移寸前で一発直撃してしまってな……誤って地上に来ちまった」
「そ、そんな……神界は大丈夫なんですか?! 」
「それはまぁ問題はない、今のところはな。神界とよく似た場所に仕立てた空間で暴れている……が時間の問題だろうなぁ」
そう言うと、陽光さんの身体が輝きだしました。一定の間隔で発光を繰り返し、徐々に早くなっていく……何かの時間切れでしょうか?
「あの陽光さん、身体が……」
「ん? あぁもう時間か。あいつ等もう少しは持たせろっての……」
脇に置いていた刀を手に取り、此方を見て一言。
「邪魔したな、ちょっくら妹の相手をしてくるぜ。飯も美味かった、ありがとうよ」
「いやいや、何を言ってるんですか。そんな死にに行くような事を……」
そう、この時手を伸ばしたのが失敗でした。
引き留めるように袖を掴むと、私の身体も発光し始めたんです。
「バッ、馬鹿や―――」
「ふぇ? 何が―――」
全てを言い切る前にヤマトの地から二人の姿は消えてしまった。
「陽光様、マコト様、失礼致します。お身体の方は……ん? 」
その後様子を見に来たクロは異変に気付く。周囲を探した後、血相を変えてシロの元へ向かったが……
「五月蠅いッ! お前は常に主殿がいないと駄目な奴なのか? ……良い機会だ少し稽古をつけてやる、覚悟しろ」
シロも朝から仕事をすべて押し付けられた鬱憤が溜まっていたのだろう、神界の神使強化訓練【式神無限組手 極】を神社の境内にて行うとの事。それを聞いたクロの顔色は真っ青になっていた。
ついに6月……1年の半分が過ぎたのか、早いなぁ(;´・ω・)
ど~も、KUMAでございます。昨日は体調を崩してダウンしておりましたン……え、関係ない?
さてさて、今回もまた新キャラ出しちゃいましたよ。と、言うよりも……すこ~し前にチョロッと出ていたので憶えている人はいるかもしれませんね。
武速スサノと八頭、かの有名な須佐之男命と八岐大蛇です。
二人ともこの作品が始まった時から決まっていたのですが、やっとこさ出せました。もうウズウズしてて大変だった……まぁ、マコトには少しの間神界でドタバタしてもらう予定です。
最初に言いましたが、気温の変化等で体調を崩しやすい季節と思います。
自身の管理はしっかりしないとね~……ハイ、分ってます。KUMAさん気を付けます。
さぁ今回はここまで。また次の機会にお会いしましょう、ではでは~




