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土地神ライフ  作者: KUMA
19/68

第18話 仕事よりもお団子


~璃狐の霊魂世界~


「ふぅ……ふぅ……、あとどれくらい上ればいいの? 」


石段を登り始めて大分経つ……一定の間隔で大きな空間が広がっており、やっと終わったと思ってたら物の怪との戦闘……正直疲れてきました。

最初に助けた子狐は相変わらずだけどちゃんと守ってますよ、相手も執拗に狙ってくるから相当重要なモノなんでしょう。でも、ずっとこのままだといざという時に動けないから困るんですよね。ついさっきも式神さんが突破された時は危なかったですし……何とか元気になってくれれば良いのですが。


「あ~もうっ、長いなぁこの階段! ちょっと休憩しよ……っと」


うん休憩も大切だよね、子狐を下ろして座りましょう。

でも、この子。よく見てみると綺麗な毛並みをしてます。撫でてみるとほんのりと暖かい……太陽の日差しのように心地良いです。


「弱ってる……と言うよりも、寝てる? ちょっと元気になってるのかな」


だったら良いなぁ、物の怪を退治していく甲斐もあります。



キュルルル……



静かな空間で鳴り響く私のお腹、霊魂世界でも空くんですね。

何か食べるものは……そうだ、クロから朝に貰ったおにぎりがありました。

お昼用に1個残してたんですよ。


「竹皮で包まれたおにぎりって時代劇でしか見た事ないなぁ、いただきまぁ~……ん? 」


食べようとしたところである視線に気づく、物の怪かと思いましたが違うようです。

隣をみたら子狐が目を覚ましてこちらを見てるじゃないですか……おにぎりをじっと見つめてますよ。


「ご飯の匂いで目が覚めました? 」

『きゅ~ん……』

「半分こにして、一緒に食べましょうか」

『きゅっ! 』


おお、言葉が分かるのですねこの子は。

竹皮をお皿代わりにして……っと、どうぞ召し上がれ。



スンスンスン……



嬉しそうに返事をしたのに匂いは嗅ぐのですね、本能?


「大丈夫、クロ特製のおにぎりです。美味しいですよ」

『きゅ~……』


不安なようでしたら私が先に食べましょう、多少時間が経ってもおにぎりは美味しいのです。

今回は具は入っていないシンプルな塩にぎり。口に入れると分かるこの丁度良い塩加減、さすがクロ。

いつか宿で出している料理も食べてみたいですね。ちなみに主に宿で料理を作っているのはクロ、稀にシロも作るようですが……とても刺激的な味で珍妙なモノと聞いてます。


『ハグハグハグ……』


私の様子を見て食べ始めたようですね、あの食いつきよう……気に入ってもらえたようです。

落ち着いて食べないと喉に詰まらせますよ?


『ハグハグハグ……ぎゅッ?! 』

「ああもう、言わんこっちゃない」


竹筒持ってて良かった、とりあえず水を。

しかし飲み方も可愛いですね……おやおや、あっという間に空っぽになっちゃいました。

まぁ予備はもう一つありますし、落ち着いたらまた階段を上り始めましょう。

此処を登り切れば九つ目の広い空間があるはずですし、そろそろ一寸さんと合流できるかも。



             ※※※



「さぁてさて、どうしたもんかねぇ……この患者さんはッ 」

『シャァッ!! 』

「ホイッと! ……どれだけ溜め込めばこうなるんだ!? 」


いやはやいきなり声を荒げてしまって申し訳ない。

今、私が戦っているのは八つの尾を持つ獣……いや、すでに半分を切り落としたから四つか。

生えている尾はそれぞれが意思を持っているように動き、私を狙ってくる……中々に厄介だ

紹介が遅れてしまったが、私は一寸と申す者。神界では医者をやっている。

一時だが彼女(マコト)の代わりに語りをさせていただこう。


『フルルルル……ッ! 』


威嚇と同調するように尾は荒ぶる、早くアレを何とかしないと押し切られる。

本数を減らすほど手数が減るとは限らなかった、全く変わってない、むしろ増えた気がする。

最近運動不足だったからなぁ……煙草も控えるか考えなくてはな。


「彼女が来てくれると助かるんだが……」

『ガッ!! 』


うーむ……本格的に危なくなってきた。四本切り落としてから防戦一方、属性と言えば分かるだろうか?

尾の数が半分になってから炎、水、雷、土……その他諸々、もう何でもありな状態となっている。


『……ギャンッ!?』

「掛かったな! もう1本、貰ったぁっ!! 」


仕掛けておいた罠札が起動し、獣の動きを封じる。

もちろん、その隙を見逃すわけがない。その尻尾を一つもらい受ける!


『ッォォォォオオオオッ?! 』



私の愛刀、【針命丸(しんめいまる)】に切れぬモノ無し……とまではいかないが切れ味は抜群。

なにせコレは霊刀の一種、瘴気の浄化にはもってこいの得物。

また一本減らして残りは三尾……罠札はもうない、これからどのような攻撃が来るのだろうか?


フム、何故罠を持っているか……と? 治療(たたかい)で必要だからだよ。

此処での相手は瘴気に侵された患者の魂、多少手荒になるがここまで酷い状態の時は直接叩いた方が速い。もちろん痛みは感じているとは思う。しかし、それは治療が進んでいる証拠だ。


「そろそろ来てくれないt―――ウグぅっ!? 」

『フゥゥゥッ……フゥゥゥッ…………!』


痛みに怯んだと思っていたが、コイツわざと……まさか切り落とした尾に捕まるとは。

目から涙が滲んでるが、こちらに対する憎悪もヒシヒシと伝わってくる。

三本の尾が変化し、刀の様な形に……おいおいまさか?


「これは……あの手を使―――」

『ガァァァァッ!! 』




~少し時間をさかのぼり、土地神(マコト)の今~




さてさて、そろそろ階段が終わります。

何やら戦っている音が聞こえる……まさか一寸さんが? でもあの小柄なおじさんが動けるのでしょうか……仮に動けてもすぐに息切れしそうですね。


『きゅいっ! 』

「どうしたんですか? この先に何かいる――――」


『ギジャァァァァァッ!! 』



ああ……いますね、確実に。多分大きな動物、獅子(ライオン)みたいな猛獣が居そうですね。

これから先に進みたくない気持ちも若干ありますが、璃狐さんのためにも進まなくては。


「……って一寸さん大丈夫なの?! 急ぎますよ、子狐さん! 」

『きゅっ! 』


一段飛ばしながら上りましょう、大丈夫。転びませんから、フラグじゃないですよ?

子狐さんと共に軽快に進みましょう。



タンタンタン……



「よし、あと少しで……着いたッ! 一寸さ―――」


名前を呼ぼうとした時、三本の影が何かを貫いた。

シルエットだけで判断をしたくはないのですが、アレは……


『ォォォ……コオオオオオオオッ!! 』

「一寸、さん? 嘘ですよね? 」


九つ目の広場は他よりも明るい、先に石段が無い事からここが終点と言うことは分かる。

そこへ響き渡る雄叫び、貫いた三本の影は獣の尾。黒い塊は地面に落ちて、赤い液体が溢れてくる。


流石にショックが隠せない、会ったばかりでしたが目の前で亡くなられるのは精神的にクルものがあります。相手もこちらの存在に気付いたようです、雄叫びを止め、ジッと睨みつけてます。

真っ黒な身体に紅く光る二つの目、頭部の耳や尻尾の形状から狐……おそらく妖狐と呼ばれる物の怪でしょう。


「あ……ああッ……! 」

『シャァァァッ!! 』


相手の先制攻撃、真ん中の尾がこちらに跳んできました。

今までの物の怪と何かが違う、何と言うか……そうですね、恐怖のあまりにその場から動けなかった。

さんざん戦っておいて何を今更と思われる方もいるかもしれませんが、対面して感じた重圧……睨まれた瞬間に身体を鎖で縛られた気がしました。こう……地面に押さえつけられる感じです。


『きゅ~っ!! 』

「フグゥッ?! 」


鋭く尖った尾が目の前に迫り、身体を貫かれると思った瞬間。

私の脇腹に衝撃が……ま、丸い何かが突撃してきました。

吹き飛ばされ、地面を転がり、咳き込んでいると突撃してきたモノは頭をテシテシと叩いてくる。

コレは……子狐さんですね。


『きゅッ! きゅきゅきゅッ! 』

「コホッコホッ……あ、ありがとうございます。 助かりました! 」


なんと飛○文化アタックを使えるとは……それよりも体勢を整えないと。


顔を上げると相手の尾は虚空を貫いたまま止まっていました、静かにコチラに視線を移し、何事も無かったのかのように尾を戻す。獣が見ているのは私ではなく子狐さん、コレは狙ってる?

でも、互いに睨み合ったまま動きません。


『きゅ~……きゅっ! 』


次は私を見てきますね、一緒に戦えって言ってるような気がします、この視線は。


「……分かりました。一寸さんがいない今、私が何とかするしかないッ! 」


お札を取り出し、構えると三尾の獣は再度雄叫びを上げる。

怖い、怖いですけどやるしかない!




            ※※※




戦い始めて大分時間が経ちました。なぜか相手は全力で攻撃をしてきません、体当たりや爪による切り裂き攻撃、三本の尾での攻撃は全く……と言うより真ん中の尾で薙ぎ払う位しかしてきません。

初撃で火炎の札を当ててからずっと単調な攻撃ばかり……もしかして舐められてる?


「こ、このッ! これはどうですか、氷結の札!」

『……ガァッ! 』


全然効いていない。札の張り付いた場所が凍ったと思えば一吠えで割れてしまいます。

火、氷と試しましたがどちらも無意味……残りは雷光の札一枚。

いつの間にか子狐さんはどこかに行っちゃいましたし、試せるモノは全部やってみるしかないですね!


「じゃぁこれは……どうです! 」

『きゅっ! 』

「へ……? こ、子狐さんッ?! お札に突っ込んじゃ駄目! 」


何処からともなく突如目の前に飛び出してきた子狐さん、私の投げた札に回転しながら体当たり。

やってしまった……と思いましたが予想外の事が起きる。


『きゅ~ッ!!! 』


札に接触し、その身体に雷が落ちてもその勢いは止まらない。

むしろ回転数が上がり、電気を纏い始めました。

発電……? 徐々に輝きは増し、彗星のように光の尾を引きながら獣に近づいていきます。


『?! グッ……ギャァ!! 』


獣の様子もおかしいですね、突然逃げ始めました。

でも距離は詰められていきます、戦闘機のフレアのように妖力の弾をばら撒いても間を縫うように抜けていく……子狐さん凄いな。


『ギャ、ギャォォォォォォォッ?! 』

『きゅーーーーーーーーーーッ!! 』



ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!



激しい光を発し、轟音が響き渡る。断末魔の叫びは打ち消され、私の耳まで届かない。


光球、と言うよりもアレは雷球でしたね。もう色々と突っ込みをいれたいのですが、開いた口が塞がらない。大丈夫なの? 技名を言わなきゃ問題ない?


「どう見ても、ボルテッ―――」

「それは言わない約束。 マコトさん、よく持ち堪えてくれた」

「――――え? 」

「いやぁアレは危なかった、私も死ぬかと思ったよ」


ええええぇぇぇぇっ?!

不意に聞こえてきた声に反応して、振り向いた先にいるのは……一寸さんッ?!

待って待って、理解が追いつかない。まずは―――


「驚くのも分かるけど、少し落ち着こうか。はい、まずは深呼吸」

「すぅ~……はぁ~…………ひ、一つ聞いても? 」

「その答えは簡単だ。私が人の世でなんと呼ばれているかを考えればね」

「……少名毘古那神(すくなびこなのかみ)ですか? 」

「違う、そうじゃない。聞き方が悪かったか、それでは―――」



            ※※※



一寸さんの説明を簡単にまとめると……一寸法師になったらしいです。


冗談です。黒き獣の攻撃を受ける直前、自身の霊力を使い等身大の身代わりを創り出したとの事。

霊力がほぼゼロになった一寸さんの身体は小さくなり、切り落とした尾の拘束から逃れ、現在(いま)に至る。


「その……小さくなられた後はどちらに? 」

「君の頭の上さ、治療を始めるよ。ささ、集中集中」


私の上に居たのか……一寸さんはそのまま黒き獣へと近づいていきます。

安全である事を確認すると、手招きをして私を呼ぶ。


「私が治療を進めたいが、今回ばかりは無理をし過ぎた。霊力の足りない今、その役目を君に頼みたい」

「へ? わ、私ですか!? 」

「大丈夫、隣から指示を出すからその通りに行えばいい。一番大切なのはこの子を救いたいという気持ちだよ」


大丈夫と言われても、初めての事ですよ?

霊気治療とは何をすれば―――


「まず、手をこの獣に向けて……そう、丁度胸部辺りだ。霊力の調整はこちらで行う」

「は、はいっ」


考えているヒマは無く、次々と指示を出して来る一寸さん。

大切なのは気持ち……と言いましたね、まだ私が人間だったら「気持ちがいったい何になるの? 」と思いそうですが、今は土地神。なんとなくだけど分かります。


私は璃狐さんを助けたい、その気持ちに偽りはありません!


「素晴らしい心意気だ、純粋な浄化の霊力……これなら」


眩い光が私の手から溢れ出す、それは黒き獣を包み込んでいく。

自分で言うのもおかしいかもしれませんが、とても温かい光です。心が落ち着き、私自身も癒される気がします。





……まぁ、此処で私の意識は途切れているんですよね。

これからお話しするのはその後のお話です。


そうそう……子狐さんですが、璃狐さんの魂の一部だそうです。

あの一撃と共に、自身の存在を守る為に自ら黒き獣と一体化。狐の妖怪は少し特殊な魂の構造で、九つの人格が内部にあります。すべての妖狐は九尾になる可能性があるらしく、今回は八つの人格が瘴気に侵されていました。一歩間違えば、九尾の狐がヒノモト村に……? 中々危ない状況でしたね。



            ※※※



~甘味処 あまてる~



「おばちゃ~んッ! 追加でお団子3つ、お願いします! 」

「あいよ~! 」


元気に声を出しているのは枯狸さん、現在はあまてるのお手伝いをしています。

もちろん、お姉さんも健在ですよ。身体から瘴気は消えましたが、玄内さんと一寸さんの意見により、診療所で一週間の絶対安静でした。……言いつけを破って、こっそり甘味処(あまてる)で汁粉と団子を食べていたそうです。


「ほいさ、出来たよ~! 」

「枯狸、アタシが行く」


彼女も今はしっかりと快復し、一緒に働いています。住む場所は現在建築中ですのでまだですが、クロとシロの宿に泊まっています。宿賃を稼ぐために日々頑張ってますよ。


「良い天気ですね~」


そして私はお団子のお代わりを待っています。

もちろん、お仕事の一環ですよ? 私の姿を借りて飲食していた妖怪たちが真面目に働いているのかを監視してるんです。その為にお団子のお代わりを頼むのは必然な事なのです!


「食べ過ぎなのよ、あの土地神は。一本位食べてもバレないよね?

いただきま~す…………うん。やっぱり美味しいわ、もう一本……」

「ね、姉さん、ダメだよ。 それマコトさんのお団子……ひぃッ!? 」

「何よ枯狸? 大丈夫だって、じゃぁもう一本……あ~」


「…………」





団子をつまみ食いする璃狐、後ろにおばちゃんがいる事に気づいていない。枯狸は言い訳を考えているようだが、パニック状態ではまともなモノはできないだろう。


「お団子まだかな~♪」


そしてこの土地神の頭の中は、仕事よりも団子の事で一杯だった。



挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)




何だか4月はとても長く感じました。ど~も、KUMAです。

5月になって気温も安定するかな~と思っていましたが、そんな事は無かった。肌寒かったり、暑かったりと……体調を崩しそうで怖いなぁ。


さてさて、今回でやっとこさマコトの偽物、化狐の璃狐と化狸の枯狸のお話が終わりました。

え~と、去年の12月頃から始まって……2、3、うん。今回を合わせて5ヶ月掛かりましたね。

新キャラを出すのはいいけど、ちゃんと纏めておかないと混乱しそうですね、気を付けます。


最後に絵を付けていますが、恥ずかしながら自筆のモノとなっております。Twitterでは先に投下しており、そこでは「花より団子」と言ってましたが、今回の最後の展開を考えて2枚目も追加……言わなければネタバレじゃないよね?

……ハイ正直に言います、ネタバレ要素含んでおりました。描いたからには投下したかったんや、ゴメンね。


よし、言うことも言ったし、今回はこれくらいにしてまた次回にお会いしましょう。

皆さんも5月病にはお気を付けて……ではでは~


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