第11話 一方その土地神は
もうどのくらい時間が経ったのかな?
村人の方々とは1週間と約束したはずが、もうそれ以上過ぎてますよ。
あ、ど~も皆さんお久しぶりです。 土地神のマコトです。
簡単に状況を説明しましょう。
ここ、時間の経過がおかしいんです。
しかも誰も来ない、人どころか動物も全く。
確かに陽光さんは人払いともう一つ、何か効果があるようなこと言ってたんですけど……
「ホント誰も来ないなぁ……」
ズズッ
……ふぅ、お茶が美味しいです。
何処から出したって、式神さんが渡してくれたこのヤカンからです。
「さて、皆さ~んっ、そろそろ休憩ですよ~」
「「あいよーっ!! 」」
式神さん達も休憩が必要ならしく、朝、夕食後の2回に力を注ぐだけで良いとの事でした。
……うん、私もなんか想像してたのと違う。
ちなみに力を与える以外の仕事、まず一つ目は皆さんにお茶を配ること。
式神でも汗を掻くようなので冷たいモノを出すんです。
どんな原理なのかは私もわかりません。ホントこのヤカン、不思議なんです。
※不思議なヤカン
式神から渡された不思議なヤカン。
気中の霊力を吸収することで中が満たされ、自分の淹れたい(飲みたい)飲み物を出せるようだ。
温かいモノから冷たいモノまで、お好きなのをどうぞ。
ちなみにマコトは温かい緑茶にしている。本人曰く「普通に美味しい」らしい。
「マコトよ~いっ、次はこっちにも茶ぁくれい」
「は~いっ」
神社自体もほぼ出来上がっており、最近は倉庫と社家住宅へ人を割いてます。
材料費は気にしなくていいと棟梁さんが言ってました。
……どうやら陽光さんが大変なことになるそうです。
「まぁこの調子なら来月あたりにはできるだろ、外の時間でちょうど4日、いやもう1日掛かるかぁ?」
「あの棟梁さん? だいぶ前から気になってたんですけど、外の時間ってまさか」
「おう、時間の流れだが……外よりも早ぇ。外で1日経ったらここでは1ヶ月は経ってるぜ。お前さんの張った札のおかげでな」
……ん? ということはすでに3ヶ月は過ぎてるのっ?!
な、なんとそんな便利なお札だったのですか……まるで精神と時のゲフンッ、何でもないです。
そこまでしてもらったのならこれから始まるもう一つの仕事を頑張らないと!
「気合い入れるのは良いが、俺ぁ寝るぞ」
「俺も」「オイドンも」「オイラも」
棟梁さんがそう言うと他の式神さん達も寝る宣言。
そりゃもう次々と境内に広げてある茣蓙にゴロゴロと……
同時に不穏な気配を察知、これまでに2回、今回で3回目。
……いったい何なんですか? これじゃぁ結界を張った意味がないですよ。
「そりゃあれだ、ここ等辺に隠れてた物の怪も一緒に閉じ込めたんだろうさ。まぁ壊されねぇようしっかりと守ってくれや、ふぁ……」
そのこともできれば最初のうちに知りたかったです……。
あ~もうっ、分りましたよ、相手をすればいいんでしょ!
クルッ
……できれば見たくなかったなぁ。
きっとあの小鬼みたいなのしか出てこない、と思っていた時期が私にもありました。
ボロボロの鎧と刀を身に着けた武者。しかし兜はなく、髷がとかれた髪が両脇に伸びている。
そして血色は悪い。もう真っ青……ってよりもあれは真っ白なのかな? おそらく私も。
あ~あ~あ~……顔の一部分の肉がなくなって髑髏が、目玉が垂れてるぅ……。
よく漫画本とかで見る【落ち武者】って言うのかな?
『アアア……ゥゥゥ』
まともに話せてない、まぁ当然ですよね。
此処は色々と堪えて頑張りましょうか……っと、なんですか?
あぁ、動く死体を見て大丈夫なのかですね。
よく見てましたよ、ゲームでッ! 物の怪が出る時点で大体は予想出来てましたから大丈夫。
……実際、某ゲームの方が怖いっ!!
「戦に負けて、逃げ延びた末に此処で力尽きた……って感じなのかな? でも―――」
「【此処を壊されるわけにはいかない】ってかぁ? カッコいいねぃ、まこっちゃんよぉ」
棟梁さんセリフ取らないで……久しぶりの出番なんですから。
とりあえず武器になりそうなモノは、あの角材かな?
「まこっちゃんそいつぁ駄目だ、使うモンだからな。 どうせなら創ってみな、ホレっ」
「ちょっ……な、ナイスキャッチ。じゃなくて、つ、創る? 」
その時、私の脳裏に浮かんだのは陽光さんだった。
ほら、神界……でしたか? 粉々にした筆を直した時のです。
でも投げ渡されたのはそこそこ長いの木の枝……どうしろと?
「陽坊は直しただけのようだが、使い方を変えれば【創りかえる】事もできるってこった」
式神が神様を【陽坊】って……しかもやり方分からないし
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!! 』
ブゥンッ
「わわわっ?! 何するんですかっ、当たったら痛いでしょっ!?」
正直、痛いじゃ済まないですね。
いくら錆と刃の欠けたボロボロの刀で切られたら大変なことに……ばい菌が入っちゃいますよ。
それにしても綺麗な構え方だなぁ、正眼の構えと言えば分かるかな? 分かりますよね?
おそらく、ちゃんと剣術を習っていた方……ってそんな事より何とか武器を創らないと次の―――
『オ゛オ゛オ゛ッ!』
ザッ……ブンッブンッ
「あぶっ危なっ!? それゾンビの動きじゃないっ! ひ、卑怯ですよ!! 」
『アアア……オ? 』
ん? 【卑怯】という言葉に反応してるのかな?
とりあえずやってみましょう、私も死にたくないですし。
「い、いくら女子といえど、ぶぶ武器の持たぬものに襲い掛かるとは……それでも武士ですか! 」
『ア……アア、ウウウ……』
「少しお待ちください、今から準備しますっ! 」
ど、どうでしょうか? 思いつくまま言ってみましたが大丈夫かな……
『……』
おお……刀を置いてその場に座ってくれました!
「おいおい、死人を説得する奴なんて初めて見たぞ」
「そんな事より棟梁さん、創り方教えてください」
「んなもん木の棒にグッと力込めて、頭でブワ~っと考えりゃあ出来んじゃねえか? 所詮俺も式神だ、そこまでは分らん」
そんな適当な説明で……考えるな感じろってやつですか?
むむむ、ならばやってみましょう。
枝に意識を集中させる。
これを、何にしましょうか? とりあえず木刀に……
突然手に持った木の枝が光る。
マコトも多少驚きはしたが、そのまま持ち続けた。
次第に形を変え、ソレは枝分かれのモノから一本の刀状のモノへとなった。
「で、できました! 」
「ん、上々だろう。じゃぁ俺ぁ寝る……ぜ」
限界だったんですね、他の式神の方も寝始めました。
落ち武者の方はそのまま座ってるけど、声をかけてみましょうか。
「あ、あの……準備できましたよ~? 」
『……! 』
一瞬身体がビクッてなりましたよ、意識を失ってたのでしょうか?
互いに武器を構え、向き合ってる状態になりましたが一つ気づいた事があります。
いくら刃欠け&錆びだらけとはいえ金属の刀に対して木刀で戦えるのかと。
……どうしたんですか皆さん、何か疑問でも?
何故式神を出さないかと、これは簡単に説明できます。今私が出せる式神の量が限界なのですよ。
もう一つは自分で戦えるのかですね、これも大丈夫です。
これでも現世では有段者だったんですよ、まぁ最初の時は転びましたけどね。
『オ゛オ゛ッ! 』
質問はちょっと待ってくださいね、戦いに集中します。
とりあえずはあの一撃を避けましょう。
「……ほいっ! 」
最初の攻撃も含めて避けれないモノではないようです。
次は怖いけど受けてみましょう、っと来た!
ガキィン……ッ
明らかに金属同士がぶつかった様な音です。
鍔迫り合いの状態になり、互いに次手の探り合いになる。
受けて分かったことは2つ。木刀には傷が全く付いてない、そしてもう一つは―――
「……ちょっと重い打ち込みだけど、爺ちゃんの方がもっと強かった! 」
まずは脚を使い、主導権を獲得。後は手先の動作でこうすれば!
クィッ……グワッ
相手の態勢は崩れ、大きく腕を上げながら後退してくれました。
うまく表現ができないですが、簡単に言うと胴ががら空きの状態です。
ちょっとした技を使ったんですが……今回は強引過ぎたので試合だと反則貰います、多分。
「どおおおぉぉぉうッ!」
『グォ……ッ?! 』
相手方からはメキっと少し嫌な音がしましたが、うまく切り抜けられました。
あ~爺ちゃん相手でもこれくらい綺麗に決められればなぁ……。
ややこしいかもしれませんが、【最後の人生】での爺ちゃんのことですよ。
女の子でも身を守れるようにと教えてくれたんです、結局1度も勝てなかったけどね。
「段も受けろ」と言われたので……段位は想像にお任せします。
さて、相手は動く気配がありませんね。
ちょっと見てみましょう。
「……終わったのかな? 」
振り向くと打った所からは黒い煙が出てます。こ、今度はなんですか?
新しい物の怪が出るの? それとも……うわっ、勢いが増したっ! 距離を置いて様子を見ましょう。
『オ゛オ゛オ゛ォォォ……ぉぉぉ……』
ちょっと声が変わった? 人らしいモノになった様な……
『ぉぉぉ……ぁ、あり……が、とぅ』
お礼を……言われた?
溢れる黒煙は空へ散ってゆき、次第に勢いは止むと、物の怪はその場に崩れ落ちました。
警戒しながら近づくと不思議な事が起こっていることに気付きます。
先ほどまで有ったはずの肉体はなくなり、白骨が鎧を着けている状態になってるんです。
「……へぁ? ど、どうなってるの?」
当然戸惑いますよ、さっきまで有ったモノがなくなるんです。
さらにお礼まで言われるとは……完全に思考が停止しそうでしたよ。
これは後々陽光さんに聞いたことですが、大昔に死んだ人の魂が、何らかの原因でこの地に縛られ、物の怪となったモノだそうです。自身の骨に土を変化させて肉付けを行うがあの状態になる……とのことでした。一度死んだ者はちゃんと順を追わないと次の人生を迎えられないって事なのかな?
色々と複雑な気持ちになりましたが、何とか物の怪を撃退できました。
これ……完成まで後何回あるのかな?
八月も終わり、ついに九月に……。 梨に葡萄、私の好きな果実も出てくる季節です♪
挨拶はこれぐらいにして、ど~もKUMAです。
まず最初にご報告が一つ、またまたイラストを! 貰いましたぁーーーっ!!
早速前書きに挿絵として使わせていただきました。
今回はすっぽん(@suppon27)様こと、本サイトの東雲小實都様(http://mypage.syosetu.com/277851/)よりまこっちゃんを描いていただきました。作者としても様々なお方からいただけて幸せです、本当にありがとうございました!!
さて、お話ではなにやらまこっちゃんが頑張っていましたが、実はちゃんと戦える子なんです。
代行手形の力がなくとも人間相手なら戦える……と頭の中にあったのでそのまま書いてみたらあの通り、物の怪にも勝っちゃいました。今回は生ける屍が相手だったから勝てたのかな? と思っていただけたらなぁ(チラッチラッ)
現状でマコトのできる戦い方は2種類。メインは式神を扱う後方支援型、サブ又は緊急として剣術による近接型となってます。まぁあまり剣術の方は出さないかなぁ……いや出そうかな? と手探りしながらやっていきます。
そして相手にした物の怪、【落ち武者】ですが……そんな名前の物の怪はいないようです。
簡単に言うと、没落したり後ろ盾が無くなった公家や武家を指すモノとありました。
しかし落ち武者と聞くと、やはりゾンビっぽいのが頭に浮かぶので本作では【何らかの原因で地に縛られた人の魂が物の怪化したモノ】としました。その方が使いやすいですし……
ん……カンペ読め? え~
【他にも便利な道具がチラホラと出ましたが、後々資料を投下します】
何のことでしょうか……私の知らない所で何かあったのかな?
まぁ良いでしょう。
では後書きはここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました、また次の機会にお会いしましょう。
ではでは~




