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経験値100000000  作者: SHIKIMINE
序章 オリガミ日記。
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第八話 蜜葉オリガミフラグ回収しちゃいます。①

「おいおいおい!」


街全体には警戒をうながすような凄まじいサイレンが鳴り響き、所々で赤ちゃんの泣き声や人々の叫び声が聞こえる。オリガミはそれを聞き胃が軋む。まるで体育祭の競技開始前や大会の数分前のように、ありえないほどに心臓が脈打ち、特有の冷たさが身体を包む。


「おれは、あの小ちゃいドラゴンの十倍くらいの奴を想像してたんだけど流石にこれは予想外だ」


オリガミが例に出したドラゴンは山のふもとにて狩りを行った小柄なドラゴンの事だ。だが今オリガミの目の前にいるのは十倍所ではない五十倍はくだらない程の、それも只々でかくて太いドラゴンではなく本気でカッコいいドラゴンだ。


「紫姫陽はいないし、俺がいるのはドラゴンの真正面。どうすんだよこれ!!」


そのドラゴンはゆっくりだが街の中心に向かい歩を進めいく。とはいえこの世界、2.5次元世界の広さは伊達じゃない。つい先程までオリガミは勘違いしていたが、この世界はオリガミが初めて見た街一つどころではなく山の向こうや、そのまた向こうと何百、何千という街が広がっているらしかった。その為に街に被害が出るまではまだ時間があるだろう。


「紫姫陽は素人でも一撃は入れれるとか言ってたけどこれは……」


紫姫陽が言った素人でも戦えるという一言の意味をオリガミは現在初めて理解した。素人。それはオリガミの様な完全な素人ではない。紫姫陽が言う素人だ。それは即ち最低限この世界で生きていけるようになったハーフプレイヤーの中の素人を意味しているのだろう。それを瞬時に理解出来るほどに目の前にいるドラゴンというのは凄まじい。


「…逃げるのは簡単だ…逃げる勇気も必要だ…でも…このチャンスを逃していいのか?……この…緊急コールを!」


そう蜜葉オリガミは現在、紫姫陽がたてたフラグを回収するかのように緊急コールが発言し超巨大モンスターと偶然にも鉢合わせしていた。




時間は咲夜にたらふくアイスをご馳走し憂鬱な気分になったオリガミが部屋に帰宅した頃に遡る。


「…あー、あいつ食い過ぎだろ…今冬だよ?大食いの人でも冬にあんなに食べねーよ!」


さて、と着替えを済ませいつものパーカを羽織ると紫姫陽から連絡先を貰った事を思い出す。


「飯を食べずに行くのはまずいから食べてからだよな、よしそれから連絡しよう」


その頃、紫姫陽宅二階にある紫姫陽の部屋にて。


「…………………」


紫姫陽は部屋の絨毯の上にスマホを置き、その前で体育座りをしていた。決して狭くはない黒を基調にした部屋からは大人の雰囲気が漂うものの、その部屋からは想像できないほどにシュール過ぎる光景だ。暇なのか絨毯を指で円を描くようにクルクルとさすっている。


「……いや、私は待ってないわよ新人君の連絡なんて……もしかして電話番号とか間違えてたかなぁ……」


うーんと言いながら姿勢を崩し膝を抱えながら絨毯の上をころころ転がっている。そんな時


「彩菜〜ご飯できてるわよーって何してるのよ…」


「あ、いやそのべつにその…………何よ?」


紫姫陽の母親がご飯が出来ている事を伝えに部屋のドア開け、転がっていたところを目撃されてしまったらしい。


「何よって慌てた様子から一気に変わったわねアンタ」


「べ、別にいいじゃない。というか帰ってきてたんだね」


「ご飯作っておいたから適当に食べといて、あと私は一旦戻ってきただけだからすぐに戻るわ」


「そう、いってらっしゃい」


「はぁーい、いってきまーす。あぁ後、まきちゃんくるかもしれないから連絡が来たら家にあげといて」


「わかった」


そう言って彩菜の母親は仕事に向かった。まきちゃんとは彩菜母の妹だ。バタンと扉が閉まる音を聞いてからふぅと脱力しまたスマホに向き直る。


「……一先ずご飯食べて考えようかな」


そう言って彩菜は台所へ向かった。

そして場面は戻りオリガミのマンションの一室。


「よし!準備できたな!」


オリガミはコンビニでラーメンとおにぎりとお茶という無難すぎる夕食を終えると紫姫陽へと電話をかけた。


『はぁ…はぁ…あ、オリ、新人君?』


「随分、息が上がってるけどどうしたんだ?」


『いや、別に何でもないわよ』


紫姫陽はスマホを二階に忘れ一階でご飯を食べていた為に全力で二階へ上がっていた。


「そ、そうか準備できたぞ!いつでもオッケーだから」


「そ、そうじゃあ部屋にいて。着きそそうになったらまた電話するわ」


「おう!」


その電話が終了し三十分が経った頃、紫姫陽からの着信を確認するとオリガミは2.5次元世界に入り紫姫陽と合流した。


「さて新人君、謝りなさい!」


「やっぱりか!」


「えぇ、謝りなさい。何回付き合ってる言われたと思ってるのよ」


「それに関して言わせてもらうのなら


「ダメよ言わせないわ、あなたに発言権なんてないわ」


「あるわ!」


関西弁。


「はぁ、もうなんかさっさと行こ」


「おいおい、ボケといてそれはないだろ!?口調も崩れてるしどんなキャラだよ」


「だって彩菜会話するのめんどくさいしー、なんか疲れちゃってー」


「なんだよそのキャラ!本当にわかんないんだけど!」


「彩菜まじで疲れてるからはやくいこーよ」


紫姫陽は急いで来たらしくかなり疲れていた。


「そんなに急がせたか?来てもらってなんだが、もうちょっとゆっくりでも良かったのに」


「い、いそいでないわよ!来てあげたんだし感謝しなさいよね!ほらいくわよ」


超図星である。


「お、おう」


「今回の狩場は昼間に話した通り、山のふもとから入れる場所にある洞窟よ」


「おっけー」


「山のふもとといっても場所自体は少しかわるけどね。ここから見える山のちょうど裏ね」


「え、この世界ってあの裏もあるの?」


「はぁ?あなたもしかして見える範囲だけと思ってたの?」


移動しながら話していると紫姫陽は呆れたようにため息を吐きオリガミに説明を始める。ちなみにだがこの世界には車や自転車などの移動手段はなく馬車は山道が険しく使用不可能なために移動は徒歩だ。


「この世界はもっと広いわ、あの山の裏だけじゃなく、そのまた向こう。望遠鏡を使っても見渡せないくらい街や洞窟、神殿とか、この世界じゃありえない世界が広がっているわ」


「そうだったのか…え、じゃあ果てはどうなってるんだ?この世界の果ては」


「この世界の果ては私もまだ見た事ないけど、ある人から聞いた話によると地面が終わっていて空が続いてるらしいわ」


「空?」


「ええ、空」


「いや空ってなんだよ、浮いてるのか?この世界は」


「わからないのよ、何も」


「……」


紫姫陽の話によれば、この世界の果てでは地面が途切れそこから先は見渡す限り青い空が広がっているが浮いているかどうかも確認できず、何もわからない状況らしい。2.5次元ではこの様に現実世界とはかけ離れている事がいくつもあるという事をオリガミはしった。そんな話をしながらもオリガミ達は山のふもとのに到着した。今まで見えていた山の裏側だ。


「ここよ」


「洞窟って聞いたからてっきり、でっかい穴があいてるもんかと…」


ふぅと紫姫陽が吐息をはき、指をさしたその先には高さ四メートル、横に三メートル位の扉があった。


「この先は本当に危険なモンスターしかでないから扉で仕切りをしてるのよ」


「めちゃくちゃ恐いんだけど」


「なにを恐がっているのよ、戦って死ぬなんて男としては最高のエンドじゃないかしら」


「最高のエンドじゃねぇよ!大体、死ぬ前提をやめろよ!」


「大丈夫よ、あなたの勇姿は私が必ず皆んなに伝えるから」


彩菜は親指を立て、任せてとばかりに胸をはる。相変わらず全開な紫姫陽さんだ。


「だから死ぬ前提をやめろよ!」


「なによ?あぁ死ぬ寸前に君を斬ってせめて経験値だけでも受け取ってくれって言いたいのね?わかったわよ私が受け継いであげるわ」


「恐い恐い!本当にやりそうで恐い!」


「心配いらないわ、あなたが死にそうになっててもそんな事はしないわよ」


「安心したぜ」


「だってアナタの経験値なんて足しにならないもの」


「いや、図々しいけど助けてくれよ!ていうか死ぬ前提をいい加減やめろよ!」


「あなたは死ぬわ、私が守らないもの」


「おい!あの名言をそんな残酷な言葉に変えるな!」


「ツッコミに残酷を絡めて来るなんてやるじゃない」


「いや、これは偶然だ!」


「あらそう、とはいえ本当に死にかねないから気をつけなさい。万が一の時は助けるけど、出来るだけ自分の力で乗り越えなさいよね」


「お、おう。ありがとう」


「じゃあ行くわよ」


そう言って彩菜は扉を開く。扉の金具の錆びつきから出る音がオリガミの気分を高揚させる。



だがオリガミは二度とこの高揚を味わう事は無かった。




レベルアップまで99,998,800






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