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経験値100000000  作者: SHIKIMINE
序章 オリガミ日記。
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第二話 蜜葉オリガミの物語。

第2話


「何だ…このパネル…」


押してみるか?とオリガミは考えるが冷静になり、しっかり考えて行動しようと踏み留まった。オリガミは気にしながらも湯船に浸かり体を癒した。





「あ、ご飯できてるよー」


オリガミがお風呂から上がった事をさっしてエプロン姿の咲夜が言った。あれ、これ何か新婚さんみたいと思った咲夜は自分の考えに掌で顔を覆いにやけきった顔を隠している。


「う、うんありがとう…なんで顔隠してるの?」


「いやいやいや、何でもないよ何でもない……顔は見ちゃだめだからね」


「はぁ?」


何だ?とオリガミは不思議に思ったもののご飯が用意されているのを確認し席に移動する。咲夜の意味の分からない仕草は日常茶飯事だ。


「さぁ、食べようか!今日は結構、がんばったよ!ってオリガミ!?」


「??」


「上、着なさいよ!」


上、つまりはシャツだ。オリガミは一人暮らしという事もあり、いつもの癖でシャツを着ずに座っていた。

咲夜は気持ちを切り替え外しかけた掌を瞬時に顔に戻す。とは言え顔を覆う手の隙間から咲夜がしっかりと上半身を見ていた事をオリガミは知らない。


「もう、私が居るって事を考えてよね!」


「でも、初めて見るわけでもないだろ?昔だってよく家に来てたし」


「何でそういう話になるのよ!それとこれとは別よ!あの頃はオリガミも私も小ちゃかったし!!」


「うーん、そんなもんかなぁ?よし、シャツ着たし食べようか……サク、顔赤いよ?」


「ううん、大丈夫だよ早く食べよう!うん、食べよう!」


「うん、いただきます」


そう言ってオリガミは三日ぶりの食事を始めた。胃がびっくりしないように温かいスープから飲みおえると食欲に火がついたらしく、物凄いペースで食べ進めていく。


「ふぁー、よく食べるねえオリガミ。よっぽどお腹空いてたんだね」


「そりゃあ三日も寝てたらこうなるよ」


「あぁ、その事だけどがっこうの課題が結構たくさんでててね頑張らないとヤバイかもよ?」


「あ、そうだった!倒れた事ばっか考えててすっかり忘れてたよ学校の事!どうしよう!?病気だったからとかで見逃してくれないかなぁ?」


「無理じゃないかなぁ?病院の診断書とか必要だと思うし。それにやるとしても提出期限が明日よ」


オリガミは最悪だと言いながらもお腹が空いているらしく、料理にがっついていてイマイチがっかり感が伝わってこない。


「まぁ、答え見せてあげるから元気だしてよ」


「……助かるよ」


「でも、よかったよ…連絡もなかったし玄関で倒れてるの見たときはどうなるかと思ったよ」


「……そうだね…」


三日、その間にオリガミの体に何があったのかをオリガミはまだ理解していない。今も消えない目の先に見えるニューゲームの文字が何なのかも分からないでいる。昨日の煙とこのニューゲームの文字が関係している事は明確だろう。


「……どうしたの?」


「あぁ、いや何でもないよ考え事」


「ふぅーん……そっか…何かあったら隠さないでよね!絶対だよ?」


「わかったよ」


そんな会話もありながら夕食の時間は過ぎ、咲夜は家に帰っていった。


ーーーーーーーーーーーー

学校の課題を終え寝室に向かう頃にはすっかり夜も深くなっていた。ベランダに繋がる窓からは月が覗き、部屋の片隅に置いてあるベッドを照らしている。


「さて…」


僕はため息を吐きながらもベッドに腰を掛ける。いつもなら音楽でもかけ、ライトノベルをにやけながら読んでいる時間だ。でも今の僕はそういう気持ちになれない、月明かりだけが部屋を照らし窓から入る冷たい空気が張り詰めている。それもそうだ


「ニューゲーム…か…」


そう、依然として消えないこの文字は僕の目線の右下で青白く光っている。


「………押して…みるか?いやいやダメだ、押しちゃあだめだろ!…でも……」


押せばまた、あの頭痛がやってくるかもしれない、あの思い出すだけで頭が痛くなるような頭痛が。そういう可能性が否定しきれない以上、このパネルともボタンともいえる何かに触れる事は断じて賢い選択とは言えないだろう。ただそういう事が分かっていたとしても、押さない方が良かったとしても人間の好奇心というものは拭えない。たとえこの先に映画や、アニメや、漫画や、小説であるような展開が待っていたとしても押さない方がいいのだろう、見る分にはカッコよかったとしても、面白かったとしても、押さない方がいいのだろう。でも、僕は押す。押したいからだ。


「よし」


そう言って僕はそのパネルに触れた。すると、パネルはキラキラと輝き、部屋を照らしながら星屑の様に消滅した。


「……!」


しばらくすると何か楽しそうな音楽が鳴り響き、青白い光と共に目線の先の右上に二つ、左下に一つのパネルが現れた。


「何だこれ、job、Level、ECG?」


順に、ジョブ、レベル、ECGと表記されている。


「ジョブは…仕事、レベルはそのまんま…後はECGって何だ?」


パネルは視線に合わせて表示されるらしくジョブの欄に目を向けるとウィンドウが開いた。


「ノージョブ…こっちはレベル0…ゲームみたいだな」


jobのウィンドウにはノージョブと表記されLevelのウィンドウにはレベル0、その横には100,000,000と表示されている。そして最後にECGと表記されたウィンドウを開いた。


「これは………心電図か!」


electrocardiogramの略称であるECGは心電図を意味し、そのウィンドウには心臓の活動を示す心電図が表示されていた。


「これは、僕のだと考えるのが普通……だよな、でも何でこんなものが…というより何なんだコレ」


ジョブとレベル、この言葉を目にした時、多くの人はゲームを思い浮かべるだろう、だが僕がその言葉を目にしているのはゲーム画面ではなく現実だ。それに三つのパネル以外にはパネルは無く、これらを説明するような表記も一切ない。


「はぁ…煙に襲われて、頭痛がおきて、パネル押したらまたパネルでって説明無さすぎなんですけど!」


三日前からの意味のわからない出来事にそろそろ頭がパンクしそうだ。

説明らしき何かがないというのはまだいい、だがそれならそれで個人で何かを把握出来るようにしてほしかった。英語が読めなくても全ての文字が英語で書かれたスマホゲームを勘でプレイできるみたいに、もっと簡単に言うのならチュートリアルを飛ばしてしまっても後からやって行くうちに操作方法が分かっていく様に。


「ゲームの中の世界!とかそういう展開でも無さそうだし、異世界召喚…とかいう展開でもないよなぁ…」


少しはライトノベルっぽい展開を期待したもののコレだけじゃあ意味がわからないし拍子抜けだ。そう思いながら僕はベッドに横になる。窓を開けたまま毛布をかぶる事が、何故だか心地いい


「………?」


目を瞑り睡眠にに入ろうとした時、今まで部屋を照らしていた月明かりが部屋を照らしていない事に気付いた。僕はゆっくりと上体を起こし窓をみる。


「………夢の中の人かい?」


僕は目の前の光景を問うた。


「いいえ、違う現実…リアルよ」


僕の目線の先、夜風によってカーテンがなびき、窓の向こうのベランダの柵には月を背後に黒髪の女性が立っていた。


「こんばんは、新人さん」


オリガミはため息を吐いた後、笑みをつくりこう言った。


「イベントが起きるの遅すぎなんじゃないの?」


こうして、蜜葉オリガミの物語は幕を開ける。


挿絵(By みてみん)


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