第二十話 前ぶれ。
記憶が回復したオリガミが昔の事について語ってるかんじです。
対峙している二人は同時にその場からスタートする。だがそこに刀と剣による衝突はない。考えた事は無いだろうか、漫画や小説にある刀と剣をぶつけ合う衝突の意味を。相手の剣を交わすことが出来ずに刀でその斬撃を防ぐことはあるだろう。だが真剣による殺し合いにおいて相手とただ剣と刀による押し合いを繰り広げる事に何の意味もないのだ。これはただの殺し合い、人を殺すためだけに剣を振るう。女は動き出したと同時に僕の腹部めがけて突きを繰り出す、だがそれを僕は交わし刀で首もとへと刀をふるう。
だが、女はかがみ、僕がふるった刀は女の元いた首の位置を通り過ぎる。すると女は僕の足を払った。
「やるな!」
「そうでしょ?♡」
僕は刀を持っていない左手を軸に一回転し体制を立て直すと、女はもう次の行動に入っていた。
「ちょっとは会話とか挟んでくれないの?」
「挟んだらペースを持ち直すじゃない」
女は右足で蹴りを繰り出すと僕はそれを左手で受け止め彼女の左足をはらおうとする、だが彼女は後ろに一回転して僕の手から強制的に足を外し左下から右へと剣を振り抜こうとする。
「強いね…でも」
僕は交わせた筈のその剣を相対するように反対側から刀を振り抜いた。
「それ位じゃあ僕は倒せない」
するとバキャっと音を立てながら彼女の剣は粉砕した。
「あらら、剣が駄目だったか」
「これで戦えないだろう?もう退いておくれ」
「うーーん…………いや!」
彼女がそう言った途端、彼女の体を薄い桃色が包んだ。スキルだ!
「諦めが悪い!」
彼女がスキル発動の為に自分の体の桃色を確認すると左手を体と並行になるように並べながら右手を後ろへと伸ばした。
「諦めたらダメだって何かの漫画で読んだよ?♡」
「あぁ、僕も多分読んだよその漫画。でもそれって確か試合であって殺し合いじゃないよ!」
僕はスキルを発動させない為に剣を振るったが遅かった。彼女の右手には眩い光が収束し一つの武器が出現した。彼女は僕にソレを向けると僕は目を見開いた。
「珍しいでしょ?私のスキル♡」
「それは予想外だ!」
彼女は僕にそれを乱射した。僕はすんでの所でソレの攻撃を後方にバク転する事によって逃れたが僕が不利な状況は変わらなかった。
「コレも避けるんだ。やるじゃん」
「流石に度肝を抜かれたよ」
僕が驚いたもの。ソレは銃だった。この世界の一発一発を火薬を詰めなければ撃てない銃ではなく、現代の世界に存在する銃。
「グロックって……リアルだな」
「えぇ、対人戦なら小型な銃でも相手が刀なら使えるもの」
「それは怖い」
「こんな銃はどう?」
そう言って彼女の手には光が収束し新たな銃が生まれる。
「あぁ……一番想像してた中で悪いのが来た」
基本的な銃にある弾倉は存在しないかわりに彼女はベルトに繋がったパッと見るだけで二百は超えるであろう弾丸を持っていた。そう機関銃……マシンガンだ。
「スキルを使わないのね」
「生憎、使えないんだよ」
「あらそう、でも使わないとアナタ」
「くっ!」
「死ぬわよ」
まずい。そう判断し僕は直ぐさま2.5次元世界から現実に帰還するためにオレンジ色のエフェクトを発しながら現実世界へと帰還した。だが少し遅かった瞬時に初弾が着弾する場所からは避けたものの二発が僕の太ももと脇腹を貫通していた。
「逃げられちゃったか……まぁいいや」
そう言って女はその場からは消えた。
「う!つつ!まずいな…はぁ…」
僕の脇腹と太ももからは赤い血がぼたぼたと垂れ流れ僕の部屋の床やカーペットを汚していく。
「はぁ…はぁ…最悪だ。また大掃除しなくっちゃ…」
僕は足を引きずりながらもタンスに刀を収納すると太ももの付け根をタオルできつく縛る。脇腹に関しては止血方法を知らなかった為に何も出来なかったが今はこれで充分だった。
「ヤキリンにお世話になろうかな」
僕は夜霧さんに電話をして用件を言うと電話が繋がったまま夜霧さんは僕の部屋へと現れた。そして現状を目撃し、あわてて僕に駆け寄る。
「行くなら行くと言ってからにしてくれ!」
「ごめん…」
僕は拗ねた風にそう言うと夜霧さんは直ぐさま再生をかけその上にガーゼをのせ包帯を巻いた。
「まったく……後は安静だ。それで何があったの?」
「黒ずくめと戦った」
「それは分かるが勝てなかったのか?」
「近接なら互角かな。でもスキルを使われれば別だよ。今僕はスキルを使えないからね」
僕は夜霧さんにベッドへ寝かせてもらうと話を続ける。
「もしかして女だった?」
「うん、そうだった」
「はぁ……オリガミ。その女はは有名だよ。リーダーではないけれどね」
「あれでもリーダーじゃないのか……」
この時の僕は心底不運を恨んだ。銃を生成するスキルかは分からないけどあんなスキルを僕は初めて知った。剣撃系のスキルが大抵のこの世界で銃なんて裏技じみている。
「リーダーはただただ強かったよ。その女はスキルが珍しいだけでオリガミも冷静に戦えば勝てたはずだよ」
「まさか銃を使うスキルがあるとはね…」
「それに速報だけど連中、他にも厄介なのがいるらしい」
「いやな速報だよまったく……」
「そうだね」
「もしかしたら……スキルを使わないといけないかもね……」
「……それだけは……使わない事を願うよ」
場には少ししんみりした雰囲気が流れた。開けている窓からの風でカーテンが揺れる音だけが部屋を支配する。その雰囲気を変えるように夜霧はきりだす。
「ま、傷は三日もあれば治るだろう」
「分かった。回復次第合流して作戦を練ろう」
「了解した。それじゃあ私は寝るよ。オリガミも今日は寝るんだね」
夜霧は僕のベッドの淵から立ち上がるとそれじゃあと言って帰っていった。僕の部屋には時間が経ち乾いた血の匂いが充満していた。
「しまった…ヤキリンに掃除して貰えばよかったかな…」
僕はそう言いつつも眠りについた。幸い明日は休みだゆっくりするとしよう。
翌朝、窓から入る光によって目を覚ます。スマホを見ればお昼らしい。
「さてと…どうしようかな…」
僕は窓から入る風を浴びながらゆっくりと考える。入る風は心地よく、夏の暑い気温にまじりちょうどいい感じだ、血の匂いがしなければもっといいのだろうけど。
「………何だろういい感じの映画の最後とかはこんな雰囲気なんだろうか。カーテンが風に揺られながら部屋の電気はつけていなくても、窓から入る日差しだけで部屋が明るいこの感じ。そして窓から見えるただただ青い空……そうだなぁ…最後の主人公の言葉とかは無くて、その街の風景だけが流れて青空に終ってでて終わるとか」
正直、自分でも怖いくらいに独り言だった。何を言っているんだろうか。
「それにしても……どうするかなぁ」
昨日戦った女のスキル。銃を生成できるスキルかは不明だが、あの身のこなしからしてレベルは低くないだろう。そんな人に拳銃の一丁でも持たせればそれだけで恐怖だ。それなのに機関銃まで出してくるとは。僕はベッドに横たわり、目を瞑りながら考える。
「殺すしか………ないのか」
悪質なハーププレイヤーに対しての手段として捕まえるという事はない。そうすれば必然的に殺害しかなくなってしまうのはこの世界では珍しくない。
「問題はヤキリンが言ってたリーダーだよなぁ…銃は対応策を考えるとしてもヤキリンが手に負えないか……想像以上にヤバそうだなぁ今回」
「起きたかいオリガミ君」
「夜霧さん…」
僕は夜霧さんの家の裏で僕は目を覚ました。朝来たはずなのにもう夕方だ。それ程に僕と夜霧さんは稽古していた。今は記憶の回復によって数分倒れていただけのようだ。
「今日はもう終わりかな?」
「い、いえ!まだ行けます!」
夜霧さんはいいねぇと笑うと僕に刀を放る。僕はそれを受け取りまた夜霧さんに向け構える。夜霧さんにはまだまだ敵わないだろうけど、ある程度の攻撃の感じは掴めてきた。
「さぁ来なよ、オリガミ君」
「…はい!」
オリガミの記憶が回復していくと共に、紫姫陽は大人数の黒ずくめとの死闘を繰り広げていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「随分と疲れてきましたね」
剣を地面に突き刺し身体を支える紫姫陽に対して、まだ二十人程度の黒ずくめは一度も動いていなかった。紫姫陽の背後にはそれ以外の黒ずくめが動かずに無造作に横たわっている。
「今回は助けに来てくれないようですねぇ?」
「はぁ…はぁ…何がよ」
「彼ですよ…彼」
「!!…まさかとは思ったけどね。あの時の…黒ずくめか」
「ご名答」
男はパチパチと手をたたき陽気な声でそう言うと紫姫陽は地面から剣を抜く。体の至る所にはかすり傷やアザができていた。
「それなら尚更、アンタ達には聞かなきゃならない事があるわ…」
「聞ければ…いいですね」
「聞くわよ……必ず」
「スキルもろくに使えない貴方に何が出来ると?」
紫姫陽の職業による特殊スキルはこの時全くと言って良い程に起動していなかった。それもそうだ紫姫陽の職業である攻勢守護者は周りに自分が味方と認識した存在がいなければ効力を発揮しないからだ。
「今日はひくわ…」
「むむ?逃げるのですか?」
「逃げる?……そうね今はそれで良いわ。でも…今はよ」
紫姫陽はそう言って戦線を離脱した。
「……今回は前みたいに行かないわよ!…オリガミ君には…手を出させないんだから!」
紫姫陽はそう言いながら傷に消毒だけすると、もう一度ワープしてどこかへと姿を消した。
記憶消失まで後、十三日。




