65.ストーカー
はい、短いですが、続きをどうぞ。
謎のターゲットメールが来た後、街を出てフィールドに向かっても、まだ視線の気配は消えなかった。
ターゲットメールのこともあり、気味が悪くなったのですぐログアウトした。
今日はもうログインせずに、仕事を片付けようとするケイであった。
翌日、ケイは食事をしようと外に出たが…………
(まさか、こっちでも視線を感じるとはな……)
ゲームの中であったような視線が現実でも感じていた。しかし、ここはゲームの中と違うので、誰がこっちを見ているのかバレバレだった。おそらく、ゲームの中では姿を隠すスキルを使っていたため、見つからなかったが、今は電柱に隠れている女性が怪しすぎた。
「……君、なんで着いてくるのかな?」
「!?」
なんで、ばれたの!? と言いたそうな表情をする女性。さっきは遠目だったから誰なのかすぐわからなかったが、その女性は会ったことがある人だった。
昨日、自転車のチェーンをはめ直してあげた女性、チカであった。
「バレちゃった……」
「アレでバレないと思ったのか……、なんで、着いてくるの?」
「お礼をまだしてなかったから……」
「うん? ああ、自転車のことか。いいって言ったんだが……」
「いえ! お礼をさせて下さい!!」
だったら、隠れていないで話しかければいいんじゃないかと思ったが、おそらく恥ずかしかったからだろう。そう納得する圭吾だったがーーーー
「そのために、去っていった後も貴方のことを調べるために影から見ていました!」
「ストーカーだよね!? それは!!」
「朝早く起きて、すぐ会えたのはラッキーでした!」
まさかのストーカー宣言。偶然、圭吾を見つけたとかではなく、朝早くから家前に張り込んでいたという。
ほわんとした雰囲気でとんでもないことを自白したチカに恐怖を覚えたが、今は好奇心の方が勝った。
「ち、ちょっと聞くが、なんでストーカーを? お礼はいいと言ったんだが……」
「貴方は、私の運命人なんです。エンジェル様の言う通り、昨日に会えて嬉しかったのですよ。この繋がりを失いたくなくて、跡を追っていました! まず、お礼をさせて下さい!!」
「え、エンジェル様……?」
「はい。エンジェル様は占いでお言葉を頂ける存在であり、私の道を照らして頂いたんですよ!!」
圭吾はわかった。この女は眼が逝っちゃっていると。狂気を孕んでおり、圭吾のことを運命人だと信じているようだった。
さっさと、ここから逃げ出したい圭吾だったが、家がバレているから逃げても無駄だとわかる。なら、取れる手は限られてくる。
(警察に行くのが一番だが、まだ高校生に見えるし、そこまでの被害を受けてないから難しいよな。ならばーーーー)
逃げないで向き合う。それがチカに対する方針だ。話し合って、冷静になって貰うことにする。
「はぁっ、だからと言ってもストーカーはいかんよ」
「仕方がないと思いませんか? いつでも一緒にいたいと気持ちが抑えられないんです」
「君は高校生だよな? 俺はもう25歳になるから、歳の差があると思うんだが?」
「大丈夫です! もう結婚出来る歳なので!!」
もう嫌だ、こいつは妄信過ぎんだろ! と言いたい気分だったが、グッと堪える。自分は今までモテたことがない男性であるが、急に可愛くて人気がありそうな女子高生から理由もなく告白されても嬉しくはない。エンジェル様というコックリさんみたいな存在が言ったから、それを信じて行動する女子高生はちょっと怖すぎたのもあるが。だが、ここから逃げたって、改善はしない。
「仕方がない、長くなりそうだから、カフェでも行くぞ」
「はい! これからのことを話し合うんですね! 子供は何人欲しいですか!?」
「先走り過ぎんだろ!? お前の認識を改める話をするんだよ!!」
「えー」
全く、こいつは…………と呆れていた時、1つの推理が思いつく。昨日のターゲットメールのことだ。アレはチカと出会ってから起こったことだ。
まさかと思いつつ、恐る恐ると尋ねてみる。
「……君はもしかして、『ドリーム・フリー・ワールド』をやったりしてないとか?」
「わかっちゃいましたか! はい、やっていますよ!!」
「………………キャラ名は『サクラ』?」
「そこまでバレていたんですか! 名推理みたいで凄いですね!!」
ゲームまでも干渉されているとは思わなかった。しかも、こいつも自分と同じ中ボスを単独討伐したプレイヤーだと言う。行動はヤバイぐらいに凄いが、ほののんとしていそうな女子高生があのカイチを単独討伐したとは思えなかった。
気になる箇所もあるが、とにかく今はストーカーを止めて貰うように説得する必要がある。
「なんという厄日だよ……」
ただ食事をしに来ただけなのに、昨日に助けた女子高生からストーカーをされ、説得が必要になるとは思わなかった。だが、放置すればお互いがヤバくなるのは見えているから放っておけない。溜息を吐きつつ、チカを連れてカフェを探すのだった…………




