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61.双刀使いのシキ

はい、続きをどうぞ!!

 


 決闘場となるスタジアムに送られたケイとシキは周りの観客達に見守られながら相対する。賭決闘になっており、お互いが賭けるのは32400ゼニ。

 中途半端な金額になったのは、ケイがリンダに売った金とちょっとだけ残った所持金をそのまま全額を賭けたからだ。

 もし、ケイが勝てば、アルテミスへのツケを払えるのだから、ケイは全力で戦うつもりだ。金がないから『金龍の加護』は使えないが。


「現れろ、スノー!」

「おおっ、あれが二体目の従魔か」


 フォックが肩から降り、スノーを召喚した。完全に三対一の構図になっているが、シキは何も言わない。それどころか、これからの戦いが楽しみのように見える。


「卑怯とか言わないんだな?」

「何故だ? 従魔もお前の職業だから出来たこと。それらを含めれば、お前の実力に違いない。だから、全てを捩じ伏せて自分が強いと証明させる!!」

「やっぱり、戦闘人だよ。お前は」


 そういうケイもこれからの戦いが楽しみだった。こういう決闘はケイも好きだ。前もガー坊と良くやったぐらいなのだ。

 ケイは毒棘の鞭、シキは愛用の双刀を構える。ケイは本気でやるといいつつ、蛇腹剣を使わないのは耐久力の心配もあるが、切り札としての意味もある。戦闘中に切り替えて、隙を作れたらいいなーと考えるケイであった。


 そう考えていた時、カウントが0になって、始まった。


「スノー! 捕まえろ!!」

「シャー!」


 まず、スノーが捕まえてからの勝ち筋を作る。いつもそれで勝ってきているのだから。

 流石、トッププレイヤーはあっさりと捕まってくれず、反対に斬られていた。スノーは既に【氷霧鎧】を発動していたので、ダメージはそれ程ではない。


「やっぱり硬いなーーっと!」

「ミュッ!?」


 シキの死角から突進していたフォックだったが、それもあっさりと避ける。そこでケイは気付いた。この動きは、β版もやっていただけで身に付かない経験、技術を持っていると。

 つまり、シキもケイと同様に別のゲームでも腕を磨き続けてきた百戦錬磨の達人だと。

 なら、単独で放つ攻撃ではシキに当てるの難しいと考えた上で、ケイは【爆泡】、フォックは【獄炎】、スノーは【氷穿】で一斉に放った。


「うはははっ! 考えさせる時間もくれないか!!」

「逃げ場はない!!」


 三方向から攻撃されているが、【爆泡】は直接に当てる軌道に乗せず、囲むようにしていた。ケイの狙いは、爆破による連鎖だ。




 ドバァァァァァン!!




 大きな爆発が起き、観戦していた人も、中には終わったのかと思う人がいたがーーーー




「甘いですよ!」

「なっ!?」


 シキは爆発の中から銀色に輝く盾を前方に押し出し、突き進んでいた。HPを見るが、そんなに減っていなかった。前方の爆発は銀色の盾で防いだとしても、まだ三方向からの爆発があった筈だ。もう1発を放ち、隙が出来ればと思ったが、シキは避ける事もせずに、【爆泡】を受けつつ前へ進んでいた。


「私に爆発は効きませんよ」

「くっ!」


 何故かわからないが、爆発ではあまりダメージを与えられない。


「なら、炎はどうだ!?」

「ミュッ!」


 フォックもシキの異様さを理解したようで、全力の【獄炎】で辺りを包みこもうとしていた。ケイも範囲攻撃が出来るようになっていたことに驚いたが、シキも驚いたようで銀色に輝く盾を前に構えて、少しだけ後退する。


「ぐっ!」

「炎が通った……? なら、炎属性に耐性があるわけでもないか?」


 爆発も厳密に、炎属性へ振り分けられる。だが、シキに【爆泡】当てた時よりも【獄炎】の方がダメージがデカかった。つまり、【獄炎】になくて、【爆泡】にある特性はーーーー


「まさか、衝撃を軽減させる何かを持っているな!?」

「いきなり見破れるとはね。流石、トッププレイヤーに上り詰めた者だ!」


 シキはそう言いつつも、脚を止めることもなく真っ直ぐにケイがいる場所へ向かっていく。だが、その間にはフォックとスノーが待ち構えている。


「シャァァァ!!」

「っ、重いな。まともに喰らったらヤバそうだな」


 勢いを乗せた尻尾だったが、シキは正面から受けずに二刀で受け流していた。ほんの少しだったが、バランスを崩したとこにフォックが足元に向けて、【獄炎】を放った。今回はスノーが側にいるから範囲に対する攻撃ではなく、火玉になっていた。

 シキ程のレベルになれば、範囲攻撃ではなければちょっとの隙を見せたぐらいでは、完全に捉えは出来ない。足元に放たれていたので、ジャンプしてスノーの上に乗って躱していた。


「シャァァァ!!」

「そんなに怒るなよ。暫くは痺れていろ」


 ここでシキが初めてスキルを見せる。【パラリチャント】、刀に麻痺の効果を乗せるスキルであり、斬られたら30%の確率で麻痺にする。


「シ、シャァァァーー!?」

「次」


 スノーは麻痺状態になり、10秒は動きが鈍くなった。そんなスノーを放って、ケイがいる場所を探す。

 シキは初めからケイだけを標的にしていた。モンスターテイマーと戦う時は、従魔を全て倒さずともモンスターテイマーである本人を倒せば、従魔も消えるのだから、モンスターテイマーを狙うのは常識である。


「フォック!」

「ミュッ!」

「ん……?」


 名前を呼んだだけで、フォックは全ての意味を読み取り、すぐ下がっていた。従魔が下がり、モンスターテイマー本人が前に出るというおかしな状況になっていた。


「もしかして、ガチで戦うつもりなのか? なら、舐めないでくれるかな」

「舐めてねぇよ。スノーの動きを止めただけでも充分、警戒に値する実力だ」

「ならーーーー」


 君が前に出る? と言葉が出る前に、シキが攻撃を受けていた。完全なる死角となった上からーーーー




「なっ!? な、何が?」


 攻撃を受けた箇所、肩を見ると氷の氷柱があった。この攻撃が出来る者といえばーーーー




 スノーしかいない。だが、今のスノーは麻痺を喰らって、10秒は鈍くなって…………スキルも使えなくなるのだ。


「前以て、上に撃ち出していたんだよ」

「そんな命令は……」

「お前こそ、俺の従魔を舐めるなよ」


 いつ、【氷穿】をシキに気付かれないように撃ったのか? それは、シキの視界が塞がれた時しかない。

 では、視界が塞がれていたのはどんな時なのかーーーー


 その瞬間はいつだったのか、シキはすぐに気付いた。


「まさか、あの爆発の後にーー」

「あぁ、スノーは先を見据えて、上に向けて撃っていたんだよ。まさか、ドピシャンに当たるとは思わなかったがな」

「くっ、運もあるみたいだね……」

「そうだな。もう、終わりだな」


 シキのHPは既に2割を切っていた。あのままなら、ケイ達が勝つだろう。観戦をしていた人達もその結果を予測出来ていた。






 ーーーーだが、まだ終わらなかった。






「流石だよ、本当にな…………『聖母の加護』、発動!!」

「なっ!?」


 シキが加護を発動した。まさか、一番の場面ではない時なのに発動することに驚愕するケイ。これは、ただの賭決闘であり、大きな大会でも重要なイベントでもない。




 なのに、周りへ知られるリスクを取り、今ここでシキの加護が発動されたのだったーーーー







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