4.テイム
本日二話目。
『暴獣の森』に向かったケイだったが…………
ケイは木の上に登っていた。
(危ねえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!木の上に登れて良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
木の下には一体の犬みたいなモンスターがいる。頭の上にはーーーー
ワンドッグ レベル16 (C)
さっき見た大きな牛より小さいのに、迫力が凄かった。降りたら確実に自分の体力は一撃で消えてしまう。降りなくても、威嚇の咆哮だけで体力が減りそうだなと思った。実際は減っていないが。
「これだけ離れていたのに、気付くとはな……、もしかして、匂いで感知したか?」
ワンドッグを見た時はまだ距離は30メートル程あったのに、すぐに気付かれて追われるハメになったのだ。ケイはまだレベル1で、【ステップ】を使っても少しずつ距離が近づかれているので、咄嗟に木の上に逃げたのだ。
無我夢中で木の上に登れるのか?という疑問が浮かぶ前に行動をしていたら、登れたことにホッとしたのだ。ワンドッグは木の上に登れないので、木の上に逃げたのは正解だったようである。
(Cランクだが、試しに木の上から【テイム】を使って見るか?)
まだ【テイム】を使ったことがないから、試しに使って見ることに。
「【テイム】発動!!」
無詠唱は無理なので、声に出して使う必要がある。使ったらMPが減ったので確実に発動されたのだが、まだワンドッグは吠えているので、失敗したようだ。
「次は一分後か……」
次の【テイム】を発動させるには、一分間待つ必要がある。
そして、そろそろ一分間経ちそうだったが、その前にワンドッグが諦めて木から離れてしまった。
「諦めるの早いな~、まぁ、このままだったら、降りられなかったから助かったと思うべきか」
周りを警戒して、モンスターがいないのを確認したらーーー、よいしょと言いながら木の上から降りた。
が、頭から衝撃を受けたのを感じた。
「……えっ?」
一気に体力が0になったのが見えた。
「ええぇぇぇぇぇっ!?」
意識が消えるように目の前が暗くなって行く。完全に暗くなる前に、衝撃が来た上を咄嗟に見たら…………
フライモンキー レベル15 (C)
さっきまでケイが上がっていた木の上よりも高い場所に、蝙蝠の羽みたいなモノが生えた猿の姿が見えた。さらに手には果実を何個か持っていた。
つまり、ケイは果実を頭に投げられて、一気に体力を奪われたようだ。
ケイは周りを警戒していたが、自分の上を警戒するの忘れていた。感知系のスキルを持っていないケイにはフライモンキーの存在に気付かなかったのだ。
(果実を投げられただけで体力が0になるとか、強すぎるだろ……)
ーーーーーーーーーーーーーーー
目を覚ましたケイは神殿にいた。棺桶の中に入っていて、身体が少し怠かった。
死帰りをしたら、ペナルティで一時間はHPとMP以外のステータスが半分まで落ち、所持金が半分になってしまう。アイテムは無くなっていないのか確認したが、何も無くなっていなかった。
そのことにホッとし、棺桶の中から起き上がる。
「一時間か……、お金は600ゼニは残っていたのに、300ゼニになっていやがる……」
初めからあったお金は1000ゼニで、回復薬を買い、コーヒーを飲んだので400ゼニは使っていた。
武器や防具は初期装備として、壊れない、無くさない仕様になっているので耐久性の心配は必要ない。奪われたり、落としたりしても5秒すればアイテムボックスの中に戻る。ただ、他の装備はそんな仕様はないので、気をつけなければならない。
さらに、ガイルの加護のようなデメリットがある場合は、初期装備では発動しないので、買う必要がある人もいるが。
「むぅ、一時間は街の中をのんびりしてから行くか?…………いや、アイテムはなくなる心配がないなら、お金を全部使ってから、死帰り覚悟で挑んだ方が時間を無駄にしなくて済むか」
死帰りのペナルティは元のステータスが一時のステータス半減と所持金の半減になる。ペナルティを受けた状態で、所持金も0のままで死帰りをしたとしても、ペナルティを受けても変わらないのだ。
そう決めたケイは残った所持金を全て回復薬に変えた。
(待っていろよ!!)
絶対に強いモンスターをテイムしてやる!と意気込みながら北へ進んでいく。そしてーーーー
ケイはまた木の上に逃げていた。
「またワンドッグかよ!!」
下にいるのは、
ワンドッグ レベル14 (C)
ワンドッグ レベル16 (C)
ワンドッグ レベル13 (C)
一体だけではなく、三体もいた。相変わらず、ワンドッグは木の上に登れなくて吠えているだけだった。
ケイはその間、ずっと【テイム】を強いワンドッグに使っているが、全く成功しない。
ケイの【テイム】はMP5も使うので、MP35では七回しか使えないのだが…………
(使ってからわかったんだが、MPは10秒に1は回復するみたいだな。一分間で6は回復しているから【テイム】は使い放題じゃないか!!)
【テイム】は一分間のタイムラグがあるので、待っている間に6は回復出来るから、【テイム】しかMPが減る要素がないケイには無限に使えるのと等しかった。だが、ワンドッグが諦めるまで15分間、つまり15回も使っていたのだが、成果は全くなかった。
(むむっ……、成功率が低すぎるんだろ……。まさか、0%とかあり得ないから、1%以下とかじゃないよな……?)
何か確率を上げる要素があるのかわからない。ケイが思い付いたことは全てβテスタの人が試したことなのだ。
例えば、モンスターの体力を限界まで削る。餌を与える。モンスターに触れるまでの距離に近づいてから発動する。パーティがいる状態、いない状態。など、色々試していたが、唯一、一回だけ成功した時は全ての要素をやった後で、一人だけだった時だった。それだけやってツノウサギをテイムに成功したのだ。
(あれだけやって、ツノウサギが一体とか、鬼畜過ぎるだろ?もしかしたら他のやり方があるかもしれないが……)
今は別のを思い付かないので、安全な場所から【テイム】を使うことしか出来ない。
(上も確認しておかないとな)
ケイは降りる前に上も確認しておく。フライモンキーや飛べる鳥系のモンスターがいたら、降りている間に狙われてしまうからだ。果実を投げられただけで一撃とは、ここではケイのステータスなどは意味をなしていないだろう。
(よし、降りるか)
今度こそ、安全を確認したケイは降りて行く。次のモンスターを探そうと足を踏み出したらーーーー
グサッ!
「は?」
足から鈍い痛みを感じ、見てみるとーーーー
ドリモグ レベル17 (C)
鼻がドリルになっているモグラに貫かれた足があった…………
体力はもちろん、0になる。
「マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
また意識が暗くなって行く。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「……はぁ、どうすりゃいいんだよ」
トボトボと南に向かっていくケイ。見えない敵を警戒するには、【感知】、【鑑定】などの察知系や解析系のスキルが必要になる。
新たなスキルを手に入れるには、スキル屋に行って、〈スキル原石〉を渡して交換する必要がある。〈スキル原石〉自体を手に入れるのは難しくはないが、【鑑定】のスキルは〈スキル原石〉を五個で交換する必要があり、今のケイは初めから持っていた一個しかない。
〈スキル原石〉はモンスターを倒したら、たまに出る時があり、宝箱に隠されている時もある。ケイはまだ実力がないので、モンスターを刈りまくるには時間がかかりすぎる。宝箱なんて、なかなか見つからないので当てには出来ない。
なら、ケイがやれることは一つしかない。
(二回死んだだけで、諦めねぇ……)
今まで通りに死帰りを覚悟して進むだけ。ようやく『暴獣の森』に着いたケイはドリモグにやられるのは運が悪かったと決め、地面を歩いていく。
「あれは…………」
しばらく歩くと、一体のモンスターを見つけた。目を凝らしてよく見てみると…………
フレイムフォックス レベル4 (HC)
ようやくHCのモンスターに出会えた。レベルが低いが、ランクはCランクより高いからステータスではワンドッグと同等か、それ以上だと考える。
「少し弱らせてから【テイム】してみるか」
狙いを決めたケイは周りに他のモンスターがいないことを確認してから、フレイムフォックスに挑むのだった…………
今日、さらに一話を書き上げたら、また夜に出します。まだ終わっていませんが……