39.白い招き猫
雑貨屋の店長へクエストの報告を終わらせたケイは、さっきのことを考えていた。
さっきのこととは、街に着いた先に報告があったのだ。何処からか聞こえてくるアナウンスが二回も流れて驚いた。
その内容とはーーーー
「ーーーーあいつもやるじゃないか」
「あのハゲがねぇ……」
「うおっ!?」
後ろから急に声を掛けられて、驚いて振り向くとそこにはリンダの姿があった。
「ったく、驚かせるなよ」
「ミュッ!」
「あははっ、ごめんごめん」
リンダは手を立てて謝り、さっきの話の続きを話し始めた。
「『青草の草原』の中ボスを倒したのが、ハゲのパーティだとはねぇ」
「明日に挑むと言っていたが、早かったな」
「それよりも、もう一つのアナウンスを聞いたよね?」
「あぁ……」
もう一つのアナウンス、それは…………
「シキが単独で『初心の草原』の中ボスに勝ったよねぇ」
そう、『初心の草原』の中ボスを倒した人が現れたのだ。その人物は、ついさっき、一番目に中ボスを打倒したパーティのリーダーである。
「俺が単独討伐しようと思ったが、取られたな」
「ふふっ、負けたくなかったからじゃないかな?シキも最強を目指している1人だもの」
「まぁ、そうだな。最強を目指す奴らは多いだろうしな」
主人公は、ゲームをやっている人の全員がそうであり、ケイはその中の1人でしかない。だから、中ボスの単独討伐を先取りされても仕方がないのだ。
「さて、これからはどうしようか……。『青草の草原』の中ボスを狙うか?」
「ミュ?」
フォックを見てみるが、首を傾けるだけだった。ケイは、そうだよなと呟きながら、これから何をしようかと考える。と、そこにーーーー
「もしかして、予定がないのかしら?だったら、私と一緒にクエストをやらない?」
「クエスト?」
リンダはクエストを見つけており、一緒にやらないかと誘ってきた。リンダと組むのは初めてだなーと思いながら了承した。
まだクエストの内容を聞いていないが、リンダから誘いは収集、討伐関係だろうと当たりを付けていた。ケイは生産のスキルを持ってないのはリンダも知っているのだから。
「今回のクエストで欲しい報酬があるのよ。〈白い招き猫〉が欲しいの!!」
「〈白い招き猫〉?どんな効果があるの?」
「〈白い招き猫〉は店を持っている人にしか使えないけど、持っていれば、店の売り上げが2%増えるの!!」
「へぇ、店を持っている奴らが欲しがりそうだな。えっと、その2%は何処からか出るの?まさか、客からじゃないよな?」
「違うわよ。システムの関係で何処からかわからないけど、増えているのよ!!」
β時代では、〈白い招き猫〉は客が支払った金額の2%が増えることから、客の財布から勝手に2%を支払われているのでは?といったような騒動もあったのだ。だが、検証によって、あっさりと違うとわかったのだ。増えた2%は客の財布から出ているのではなく、システムの関係によって増えているだけなのだ。
リンダから話を聞いていたケイは店を持っていないので、ふーんとその凄さを実感してなかった。欲しがりそうな人がいそうだと言ったが、ケイにしたらどうでもいいのだ。だが、次の言葉でケイは興味を持った。
「今回のクエストは討伐をしたら、報酬として貰えるけど、討伐対象が面倒な相手なんだよねぇ。まさか、竜が最初のステージで…………「竜!?」」
ケイの言葉でリンダの言葉を断ち切られる。断ち切った本人は竜と聞いて、やる気満々になっていた。
竜と聞けば、最強種のイメージが浮かぶだろう。竜に乗るケイの姿を思い浮かべて、テイムをしたいと考えていた。
「行こう!!」
「ち、ちょっとテンションに着いていけないけど…………あ、もしかしてテイムしようと思っているの?」
「そりゃ、竜をテイムして空を飛びたいじゃないか!!」
テンションが高くなったケイに驚いたリンダだったが、その理由を聞いて納得はした。だが、リンダは苦笑いをしていた。
「あー、ゴメン。夢を壊してしまうけど……………………今回の竜は翼はないよ?」
「は?」
固まるケイ。
リンダは続けて、今回の竜はどんなものか教えてもらった。名前は地竜リグザードで、翼を持たなくて身体が硬い竜だという。四足で歩いて炎を吐いて土魔法を使ってくる。そう説明したが…………
「どう聞いても、トカゲ類じゃねぇか!?運営はそのモンスターを竜と認めたのか!!俺は断して、竜と認めないぃぃぃぃぃ!!」
ケイは竜だと認めないと騒ぐのだった。肩にいたフォックはケイの姿に驚いて、地面に降りるほどだった。
このようなことがあったが、一緒にクエストをやると言ったのでこれから地竜…………いや、トカゲを倒しに行くのだった。




