33.用事
サヨのレベルを12まで上げて、フォックもレベル7になり、大分強くなったので街へ戻ることに。
「あ、ありがとうございます!!」
門まで着いたケイ達はサヨからお礼の言葉を貰っていた。
「構わない。対価のお返しをしただけだから」
「いえ!レベルが上がっただけではなく、素材も増えたので、調味料ぐらいは余裕で買えそうです!!」
「そっか、ではここでお別れだな」
「あ……は、はい……」
笑顔だったサヨはだんだんと暗くなって、また自分を貶めるような言葉をブツブツと呟いていた。
「…………どうせ、私は役に立たないし、だから捨てられても仕方が無い。うん、このままパーティを組みたいと思った私が愚かだっただけだよね……。いつか私のことなんて、忘れてしまうんだ。影よりも薄い存在だから、もう会えない、ずっと1人で生きていくんだ…………ブツブツ」
「いきなりネガティブモードに入るな。お前の力が必要になったらメールかチャットをするからな」
「……ブツブツ………………え?さっき、何と……?」
「だから、お前の力が必要になる時があるかもしれん。だから、次に会う時までに強くなれよ。そしたら、またいつかパーティを組もうぜ」
「あ、は、はい!!」
一度切りではなく、今度またパーティを組んでくれることにパァッと明るくなった。
サヨは笑顔でお辞儀をしてから、バイバイと手を振って別れた。
「よし、次は料理道具と調味料を買っておかないとな」
ケイは他に行く場所があったが、まず必需品を買いに行くことに。料理道具は雑貨屋にもあると知っているので、リンダのとこへ向かう。
(そういえば、クエストってNPCからしか貰えないのか?NPCはそれぞれが自我を持っていて、いつもクエストを受けている人を探しているとは思えないな……)
街の中を歩く時、すれ違うNPCがいるのだが、どれもプログラム通りに動く人形ではなく、人間のような動き、表情を持っているように感じられたから疑問が浮かんだのだ。
NPCから受けられるクエストは誰なのか決まっていなくて、その人が困っていた時にしか発注されないのでは?
「まぁ、考えても仕方がないか。……む、リンダは留守番か?」
リンダの店に着いたが、リンダは留守番みたいのようで、探しても姿は見えなかった。リンダがいないと素材の売却が出来ないので、先に料理道具は売っているか調べることに。
「ふむ、鍋が売っているか。えぇと…………1000ゼニか、安いか高いのかわからんが、買えるからこれでいいか」
1000ゼニを払うと鍋はアイテムボックスに移された。他に良いものがあるか調べたが、自動販売されている種類は少なくて、前に買った〈炎石〉は無かった。
今ではまだ希少な物はリンダがいる時しか買えないようで、すぐに買い物のウィンドゥを閉じて、リンダの店を後にした。次は調味料が売っている店へ向かう。場所は前もってサヨから聞き出しているので、迷うことなく着いた。
「なぁ、ここで調味料が置いてあると聞いたが……」
「いらっしゃいませっ!!はい、塩、味噌、コショウの三種類があります。どれにしますか?」
(醤油はないか……、もしかして、次の街に行かないとないとか?それか、他の店に置いてあるとか?)
そのことを店主に聞いてみたら、この街で売っているか調味料はさっき言った三種類だけで、醤油やマヨネーズなどの他の調味料が欲しいなら、他の街に行かなければならないようだ。
「その三種類を三袋ずつくれ」
「毎度ありっ!6000ゼニになります!」
これで、所持金はあと1500ゼニまでに減ってしまったが、調味料は絶対に必要なので、この消費は仕方がないと諦める。材料ならモンスターが落としたり、森で取れたりするので、わざわざ店で買わなくてもいいと思う。
それに、まだ売り払っていない素材もあるので、金欠になりそうでもないので、安心だ。
「よし、次はあそこだな」
「ミュッ!」
次にケイが向かった場所は、前に行ったことがあり、フォックも強く鳴き声を上げていた。
向かった場所とは…………
「さてと、リベンジさせて貰おうか」
着いた場所は訓練所。
ケイとフォックがリベンジしたい相手とは、一発ずつだけで退場させられた指導員のドムである。
どれだけあの指導員に近づいているか、試したくてここまで来たのだった…………




