29.スキル検証
再び森の中へ入っていき、フレイムフォックスを探して行く。ただ探すだけではなく、やれることはやっておく。
「フォック、スノーは感知に集中しろ。俺だけでモンスターと戦う」
なんと、モンスターと戦うのはケイだけで、フォックとスノーにはフレイムフォックスを感知したら教えるように言ってある。
「さて、昨日の続きだな」
これからやることは、昨日手に入れた【爆泡】の使い方を検証するのだ。どんな使い方が出来るか、昨日に色々やってきており、今日は『暴獣の森』のモンスター相手に検証して、HPを半分以上残して生き残れるのか確かめるのだ。
「まずワンドッグか」
目の前にはレベル15のワンドッグが2体。その1体が鋭そうな牙を見せて、噛み付いてこようとする。
まず、この前のバトルでも見せた『撃つ』という動作で人差し指から直径10センチ程の泡が撃ち出される。
「ばぐっ!?」
泡のスピードはアメンボーが出した泡と同じぐらいで結構早い方だ。鼻に当たったワンドッグは鼻から衝撃を受けて後ろに倒れた。ダメージは小さな泡だったから少ないが、衝撃は無視出来ない程に強い。顔を振って起き上がる前に、別の個体が来た。
「次は『留める』。さらに、『包む』!!」
拳を握って、その拳を包むようにボクサーのグローブみたいのが出来た。直径30センチで、【爆泡】で限界まで大きくした場合の大きさである。その泡を包みこんだ拳をーーーー
「グボァ!?」
ワンドッグの横顔にぶち込み、衝撃の爆発がワンドッグに襲う。その爆発は先程より大きくて強かったので、10メートル程飛ばされていた。だが、ケイの生身である拳が届く前に衝撃で吹き飛ばされたため、拳が当たったダメージはなく、殴る勢い+衝撃の威力だけしか与えられない。それでも、体力バーの三分の一は減らせているから充分強いとも言える。
「まだまだ!!」
今度は一つ一つと泡を『繋げる』。丸い形は変わらないが、長い団子のような形で10個が繋がっており、手のひらから出たような形である。
それを鞭のように振り回すが、泡は一つ一つが10センチ程なので、最高は一メートルまでしか繋げられない。
触れた瞬間に衝撃の爆発が起きて、ワンドッグは体力を減らして行く。
「纏めて消えろ!」
短くなった泡の鞭と数発を2体共にばらけるように撃ち出した。そして、2体のワンドッグは倒れた。
この【爆泡】はさっきのような様々な使い方が出来て、便利である。一発でMPが5も必要になるから考えて使わなければならない。
ケイが行っていた動作によって、攻撃や防御にも使える。攻撃は言わずともわかるだろう。撃ったり、包んで殴れば、近付かれても相手が泡に触れたら、衝撃が相手を離してくれる。衝撃が自分に干渉しないから使える攻撃方法である。
次に防御だが、泡には武器の耐久力を大幅に減らす効果もあるので、武器で泡を攻撃したいとは思わないだろう。さらに、この泡は身体の何処からでも出せて、身体にくっついたままなら自由に動かせる。つまり、身体に留めたまま、攻撃される場所に移動させれば、泡に攻撃して弾いて貰えるわけだ。だが、全ての攻撃を弾けるかは試してみないとわからない。例えば、凄い勢いで繰り出される刺突は泡に触れても、衝撃が爆発する前に身体へ到達してしまうかもしれない。
後、身体から離れてしまえば、操作は無理になる。
と、ここまでが検証でわかったことである。もしかしたら、他に使い方があるかもしれないが、今はこれでも充分に戦える。
「この戦法で行くとなると、MPが、沢山必要になるな……」
「ミュッ!」
「キシャッ!」
フォックとスノーが自分達がいるから大丈夫!と言うように鳴いていた。攻撃は任せれば、ケイは防御に徹して指示を出すだけでいい。
「そうだな。お前達に攻撃を任せて、こっちに向かった敵だけに対処すればいい……フォック?」
「ミュミュ!」
フォックがケイとは別の方向に顔を向けていた。そこは木が密集していて、すぐにわからなかったが、木の裏からフォックと同じ姿をしたモンスターが現れた。
「来た!スノー、逃がすな!!」
「シャー!!」
スノーが直ぐにフレイムフォックスの後ろへ回り込んで、逃げ道を塞いだ。
そこにケイが【爆泡】を撃ち出す。敵のフレイムフォックスはフォックと同じ姿をしているが、ケイは遠慮をしない。
もし、敵が擬人化した女性の姿で、とても可愛いモンスターだったら、他の男なら躊躇をする所だが、ケイは顔へドロップキックをぶち込める。
だから、今もフォックと同じ姿をしたフレイムフォックスでも容赦はしない。敵のフレイムフォックスは【鬼火】を発動してくるが、フォックの【鬼火】によって相殺する。
「ミュ!?」
敵が隙だらけだったので、スノーが後ろから忍び寄り、噛み付いた。アナコンダの映画のように飲み込めそうな気がしたが、飲み込むことはなかった。
生きている物は飲み込めないように設定されているのかもしれない。だが、ケイはそのことに安心した。もし、人間が飲み込まれたら体力が無くなるまで蛇の中にいるなんて、トラウマになりそうだ。
噛みつかれたフレイムフォックスは毒状態になったようで、体力の減りが早かった。そして、フレイムフォックスは噛みつかれたまま、抜け出せずに光の粒となって消えた。
「ドロップ品はどうだ……?…………よし、あった」
アイテムボックスの中には〈狐の尾〉が入っていた。これで、フォックを進化させることが出来る。
「ええと、進化させるための進化素材はアイテムボックスの中に入れたままにして、進化のボタンを押せばいいんだったな?」
確認しながら、手順を進めていく。〈炎石〉2個と〈狐の尾〉はアイテムボックスの中に入っているのを確認してから、進化のボタンを押す。
ピカッとフォックが光、形が変わっていきーーーー
「ミュ?」
そこには、大きさがあまり変わらず、尻尾は二尾になっており、額には赤い石がはめられていたフォックの姿があった。
種族を確認したら、フレイムフォックスからルビィカーバンクルになっていた。
(あれ、カーバンクルと言えば、リスの姿で宝石が付いた伝説の奴じゃなかったっけ……?)
そう、カーバンクルは伝説な存在とされているが、序盤から出てくるような存在ではない。なら、伝説のカーバンクルとは別のモノか?と思ったが、考えても思いつかないので、気にするの止めた。
「まぁ、いいか。身体に異変はないよな?」
「ミュッ!」
ないと言うように、ケイの足元を走り回っている。問題はなさそうで、なによりだ。
進化したフォックの力を試すべく、森の奥へ進んでいく…………




