28.アップデート
意気込んで、フレイムフォックス探しに『暴獣の森』へ入ったのはいいが…………
現実の世界では、夜中1時まで回った頃。ケイはまだ『暴獣の森』の中を歩き回っていた。
「いねぇ……、まさか夜は現れないモンスターなのか?フォックは昼に出会えたが…、やはりそうなのか?」
舌打ちをしたくなる結果だった。だが、『暴獣の森』を歩き回ったのは無駄ではない。様々なモンスターと戦って、レベルが上がったし、ドロップ品も沢山手に入った。
「もう疲れたし、宿に戻ってログアウトするか」
「ミュ~」
「まぁまぁ、フレイムフォックスに出会えないのは運が悪かっただけで、フォックは何も悪くないんだから」
フォックを宥めながら街へ戻っていく。そして、何も予想外のことは起こらずにログアウト出来た。
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朝六時からアップデートが始まり、ゲームはやれないので仕事を進めることにした。
今、受け持っている仕事は背景を描く仕事である。
(神秘的な森ねぇ、あの森じゃ参考にならないだろうな)
圭吾が思い浮かべたあの森とは『暴獣の森』であり、これから描く神秘的な森とはかけ離れていた。『暴獣の森』はなんと言うか、殺気立っている森ってイメージがある。
(神秘的な森と言えば、妖精がいる森ようなものかな……)
それだったら、他のゲームで見たような景色を思い浮かべて、紙にラフを書いていく。森だけではなく、湖や妖精も付けてだ。
「うん、イメージは大体掴めたかな。ドリーム・フール・ワールドでもそんな景色を見れるといいな」
そう独り言を呟きながらペンを進めていく。
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昼12時になり、アップデートが終わったのを確認してからゲームの世界にダイブした。次にすることは、すぐフォックを召喚してモフモフをするのだ。
「ちゃんと待っていたか~?」
「ミュ!」
フォックを撫でていると、お知らせのマークが浮いていることに気付いた。おそらく、アップデートした内容が書かれているのだろうと、タップして開いて見たらーーーー
「な、何だと……」
そこには、ケイが絶句する情報が書かれていたのだ。お知らせの内容は、今日から満腹度が付くようになった。それだけなら、他のゲームと変わらないだろう。
だが、ケイが絶句したのはそこではない。後に書かれてある注意書きの一文である。
※この満腹度は生き物であれば、全てに適用します。(テイムや召喚持ちの方は、もし従魔の満腹度が10%以下であれば、戦闘中に召喚は不可となりますので、ご注意をし下さい)
なんと、従魔にも適用されており、もし満腹度が10%以下だったら戦闘中に召喚出来ないのは痛い。だが、それ以上に痛いのがある。
「餌代がかかる……」
そう、自分だけではなくモンスターへのご飯も準備しなければならない。つまり、お金をさらに使う必要が増えてしまったのだ。運営はどうしても、自分を金欠にしたいのかと青筋が浮かびそうになる。
運営に怒っても仕方が無いので、これからどうするか考える。
(満腹度は何かを食べることによって、回復する……。つまり、回復薬も飲めば少しは回復するだろうな)
他にも街の中には八百屋や肉屋もあるからそれを生でも食べれば回復する。
さらに、料理をすれば大幅に上がるのも予測出来る。なら、ケイは【料理】のスキルを取るべきだろう。
別に【料理】が無くても、料理は出来るが、スキルがあるかないだけで満腹度の回復差が違うのだ。
「……はぁ、交換しに行くか」
早速、スキル屋へ向かった。ケイと同じ考えをしていたのか、店の中は何人かが、〈【料理】覚醒石〉を買う際、一緒に付いてくる〈料理道具セット〉を貰っているのが見えた。一万人全員が買いに来たわけでも無く、パーティを組んで入る人はパーティの中で1人か2人が持っていればいいだけなので、並ばずに交換出来た。ついでに〈料理道具セット〉を貰った。
〈【料理】覚醒石〉は〈スキル原石〉5個で交換だった。ケイはフォックとスノーがいるから察知系のスキルを持たなくても大丈夫だが、手持ちが3個に減ったのは痛い。痛すぎる……
(なんで、【料理】は5個は必要なんだよ……、鍛治や製薬は3個なのに)
おそらく、アップデートする前は【料理】も3個だったかもしれないが、運営側は皆が必要になるのはわかっていたので、値上をしたのだろう。しかし、他の人はよく〈スキル原石〉を5個も持っていたなーとも思っていた。
〈スキル原石〉はクエストを受けたりすれば、貰えることもあるので、ボスをわざわざ倒さなくても報酬が〈スキル原石〉になっているクエストを受ければいいのだ。ここに来ている人はそうやって〈スキル原石〉を増やしたのだろう。
「よう、ケイも【料理】のスキルを……おわっ!?」
「ちっ」
ガイルに出会って、すぐ八つ当たりのドロップキックを仕掛けたが避けられてしまった。
「何をするんだよ!?」
「ドロップキックをしたことは後悔をしてないし反省もしない。それどころか、まだ蹴り殺したい気分だ。だから、黙って受け止めやがれや」
「横暴!?ここは店の中だからやめとけ!!」
「ほぅ、外に出ればいくらでも受けてやると言う表明か?その覚悟良し!!」
「言ってねえよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
本格的に店の迷惑になりそうなので、ここまでにしておく。ふざけは終わりにして、話をすることに。周りの人にしたら、少年がヤクザにドロップキックをしているのと同じように見え、ハラハラとしていた。
「まぁ、それよりガイルは何でここにいるんだよ?さっさと残った中ボスを倒しに行けよ」
「まだ無理に決まってんだろ!?『初心の草原』なら兎も角、まだ倒されていないのは『青草の草原』と『暴獣の森』だろ?まだレベルが足りねぇよ」
ガイルの話によると、中ボスと戦うならフィールドの適性レベル+5は欲しいと言う。ケイは中ボスのレベルより低かったが、ケイが勝てたのは持ち手札のおかげに運が良かったのだろう。加護の能力と言うのは、切り札のような物であり、プレイヤー同士でのバトルではあまり使われない。他の人にどんな能力を持っているのかバレてしまえば、対策を取られるからだ。
使うなら閉鎖状態であるボス戦や必ず勝ちたいと思った戦闘などだろう。
とにかく、ガイルはレベル18になっているがパーティの仲間はまだレベル15になっていない人もいる。その人はログイン時間が短いのだから仕方が無いだろう。
「『青草の草原』にいる中ボスに挑むなら、明日辺りだろうな。お前は行かねぇのか?」
「まぁ、やることがあるから後回し。〈スキル原石〉は欲しいが、急ぐことでもないな」
「そうか、お前がさっさと中ボスを倒してくれたら俺達は大ボスだけに集中出来るしな。あぁ、大ボスと戦う時は一緒にやるか?大ボスはレイドで挑むことが出来るからな」
「確か、二チーム混合みたいな?」
「おう、その前に俺のパーティ仲間を紹介してやらねぇとな」
しばらく話をして、お互いに暇が出来たらガイルの仲間を紹介して貰い、大ボスと戦う前にお互いの戦い方の確認をすることに決まった。
店の前でガイルと別れて、目的のモンスターを探すために『暴獣の森』へ向かう。
「よし、今度こそ、見つけるぞっ!!」
「ミュ!!」
フォックの仲間を倒しに行くのに、フォックへやる気満々で鳴いていた。おそらく、従魔になったことで仲間意識というのがなくなっているかもしれない。
判断は出来ないが、とにかく倒して、フォックを進化させるのだ。




