22.中ボス
本日二話目。
思ったより早く出来たので、載せます。
扉は隠されていなくて、堂々と置かれていたので、見つけるのは難しくなかった。最初のステージだからなのか、見つかりやすい場所にあったかもしれかい。
「中ボスの扉っぽいなぁ。勝ったら、さっきみたいにアナウンスが流れるのかな?」
まだ二日目で、二つの中ボスが倒されると、目立つのは間違いないだろう。それに、アナウンスでリーダーのシキと呼ばれるプレイヤーの名前が出たことから、もしアナウンスがあるとしたら、ケイの名前が流れるのだろうがーーーー
「アナウンスで名前が流れようが、関係ない。俺達で中ボスを倒すぞ!!」
「ミュッ!」
「キシャッ!」
扉を開ける前に、気合を入れるケイ達。さっきまで戦っていたのもあって、レベルも少しだけ上がり、ケイはレベル12、フォックはレベル18、スノーはレベル13になっている。勝てるかわからないが、やれるだけやろうと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーー
扉を開けた先は、水が広がるフィールドだった。扉から片足だけを出して、地に着くか確認したら、問題なく着いた。
大体三センチしかない浅さであり、泳がなければならないとかはないようだ。
「よし、大丈夫みたいだな」
確認出来たケイはフォックとスノーを連れて、先へ進んでいく。全員が通ったのを確認すると、入り口が消えて…………
「ミュッ!!」
「っ、上からか!?」
フォックの嗅覚で敵が上にいると、顔を上げていたので、ケイも敵が現れるとすぐに理解出来た。
ドバッ!とケイ達の前で水飛沫を立てて、敵の姿を確認出来た。中ボスの名前とレベルはーーーー
アメンボー レベル18 (R)
ケイが昨日に戦ったクイーンホーネットよりもレベルが高い。名前の通り、中ボスは三メートルの大きさがあるアメンボだった。フィールドの名に『虫』と言う言葉が付いていることから敵は虫関係だと予測出来たが、まさかアメンボだと思わなかった。
(あの蜂よりは強いのか?)
見た目はクイーンホーネットよりも弱そうだった。体力バーは三本もあるが、防御力が皆無そうな身体で脚も細い。それに、どうやって戦うのかも予測出来ない。
アメンボーが喋る流れはないようで、最初から動けた。早速、ケイは【猛打の陣】、スノーは【氷霧鎧】を発動した。
「早速、絡みついてやれ!」
「シャッ!」
一番手はスノーが行く。動きを止めてから体力を削って行くのが安全で確実だ。だったが…………
スノーがアメンボーに追いつかない。
アメンボーは、水の上を滑るように高速移動をしているのだ。スイスイーではなく、スバッ、スバッ!といった感じだった。
「早いな!?水はこのためか……」
アメンボと言う虫は、水の上を滑るように走るのだ。だから、このフィールドは浅くとも水が張られているのはそのためだ。
とにかく、AGIが低いスノーでは自分から行こうてしても、追いつかない。仕方がなく、作戦を変更してフォックと共にアメンボーに突っ込む。
「はぁっ!」
「ミュッ!」
ケイとフォックがアメンボーに攻撃をするが、高速移動で避けられてしまう。
(くっ、このスピードだとカウンターを狙うしかないか……?いや、こっちにそのスピードで来られたら避けられる自信がない)
攻撃が当たらないことから、他の作戦を考えるが、アメンボーが動いた。口?のような所から泡を吐き出して、飛ばした。
「むっ!?」
嫌な予感がして、出来るだけ泡から離れた。と、予感が当たったようで、地面に触れた泡が爆発して、周りに衝撃を撒き散らしていた。
(あれだけの威力がこんな短時間で発動出来るのかよ!?)
当たったら、間違いなくケイは瀕死まで追い込まれてしまうだろう。ただ、当たらなければ爆発しないから、身体に触れなければいいだけなのだ。
「オラッ!」
泡は衝撃が届かない場所から鞭でなぎ払って行く。鞭から衝撃を感じるが、ダメージはないからこのやり方で防いでいく。
「フォック、スノー!泡は俺に任せて、あのアメンボーを捕まえろ!!」
素早い敵に相対するなら、まず捕まえることだ。フォックが攻撃して行動範囲を狭ばせてから、スノーが長い身体を使って捕まえるのがいいだろう。
もし、スノーが氷の技を使って、足元にある水を凍らすことが出来たら、あの高速移動を封じることが出来るのだが、スノーの技は氷柱を作り出せるが、凍らせるといった効果はない。
凍らせる効果がないのは仕方が無いとして、まず捕まえるようにと指示を出す。
アメンボーは動きながら泡を吐き出すので、ケイは泡に集中しなければならない。フォックとスノーの支援をしたいが、泡が邪魔で先に行けないといった感じだ。
ようやくフォックが【鬼火】を使って、スノーの近くに行くように誘導させることに成功した。
スノーはアメンボーが近くに来たことで、泡を無視して真っ直ぐに突っ込み、身体を巻き付けた。
「締め付けて、噛みつけ!!」
「キシャッ!」
一回噛むと、一本目の体力バーが半分ほどに減っていた。アメンボーは回避タイプで防御はそれ程に高くはなかったようだ。
さらに噛もうとしたが、アメンボーの細い脚がスノーを蹴り付けて絡みつきから解放されてしまった。
「なっ、あの絡みつきから抜け出すとは!?」
離れた所にフォックが【鬼火】を当てたが、体力の減りは少なかった。つまり、アメンボーは火に強いか、MDFが高いかのどちらかだろう。
(アメンボーはあの長い脚が高速移動を可能にして、スノーから離れる程の脚力があるわけか……)
アメンボーの武器は、触れないと爆発しない泡なんかよりも、高速移動を可能にして脚力が高い細長い脚の方だろう。
「もう一回だ!!」
抜け出されたが、絡みついてからの攻撃が有効なのはわかったので、変えるつもりはない。スノーの防御が高いので、体力も九割も残っていたので泡を無視して強行に進めることも可能だ。フォックも【鬼火】&突進で高速移動の邪魔をしながらスノーの方に近付かせるように動き回っている。アメンボーも無抵抗ではなく、泡を吐いてくるがそれはケイの鞭が空中で爆発していく。鞭の耐久力がガンガンと減っているのを感じたケイは耐久力がない初期装備に変えた。
(なんか、最新武器よりも初期武器の方が役に立っているような……?)
威力が無くても、触れただけで爆発する泡相手には耐久力がない初期武器で防いでいくので、こっちに損はなかった。普通ならボス戦は初期武器で活躍するなんてあり得ないが、ケイの場合はダメージを自分で与えることに期待していないから、威力が低い初期武器でも戦えているのだ。
スノーの絡みつき&噛みつきで、一本目が真っ白になった。残念ながら、毒状態にはならなかった。ボスは状態異常に掛からない設定になっているかもしれない。そして、アメンボーはまた抜け出して、
「ウゥゥゥーーーー」
急にアメンボーが鳴き始めたかと思ったら、青い光が包まれ…………
「なっ!?」
高速移動に、桁外れの脚力でケイへ突進してきた。しかも、アメンボーの前方に大きな泡を構えている。
その突進が一番距離があるケイへ向かっているのは、ケイがこの中で一番弱いとわかっているからか。
距離があっても、こんなスピードに反応が遅れてしまったケイは避けられない。
近くにいたスノーがケイの盾になろうとするが…………
「キシャッ!?」
「ぐあっ!?」
スノーごとケイも突進を受けて、水切りをするように吹き飛ばされた。スノーの体力は残り二割に、ケイは一割まで減っていた。
スノーが前方に構えていた泡を受け持って、盾になっていたからケイはなんとか一割は残れたのだ。もし、ケイだけが受けた場合は、あっという間に体力は真っ白になっていただろう。
しかし、あのスノーが強化された状態で残り二割まで減らされるとは思わなかったのだ。あの突進はケイにとっては一撃必殺のような物だった。
「これが、中ボスかよ……、ヤベェな」
もし同じ攻撃をしてきたら、ケイは終わりだろう。ーーーーと思っていた先に、
「はぁっ!?連続かよ!?」
また青い光が包まれているのを見て、同じ攻撃が来るのがわかった。今はまださっきのダメージが脚に来ていて、すぐに動けそうはなかった。回復薬をスノーに投げて、自分にも使うが、次は耐えられる気がしなかった。
(これで終わりかよ…………何かないか?)
何か勝ち目があるか、考えるケイ。それをアメンボーが待ってくれるわけでもなく、もう準備を終わらせていた。ーーーーとそこで、まだ使っていない奴が残っていたことを思い出した。
アメンボーが凄いスピードで突っ込んできた。今度はフォックもスノーと一緒にケイを守ろうとするが、ケイだけ生き残っても勝てないのは理解している。もし、自分が避けられるなら、従魔達も避けてくれるだろうと希望を持ちながら…………
「【金龍の加護】発動!!」
今まで使わなかった加護を発動した。10000ゼニを払って、30秒だけ全ステータスが二倍になる効果を。
ケイの身体が光って、両腕、両脚に金の鱗が浮かび出た。これでステータスが二倍になって避けられる!と思っていた先ーーーー
「ーーーーえっ?」
ケイは目の前の状況に、頭が追いつかなかった。何故なら、突進してきたアメンボーが吹き飛ばされていたからだ。そしてーーーー
金の鎧みたいなのが付いたフォック、青い鱗から金の鱗に変わっていたスノーの姿があったのだから…………
ようやく、金龍の加護の全貌が!?
詳しくは次回にて。




