12.女王蜂 前半
今日から一話になりますが、読み続けてくれると嬉しいです。
毒が厄介なポインズホーネットはアーク達の助けがあって、皆は欠けることもなく、倒せた。
ポインズホーネットの攻撃方法は、三つあって、一つ目は毒針を前にして突進してくる。二つ目は毒針を撃ち出してくる。これらは正面に立たず、回避に専念すれば避けるのは難しくはない。
最後の三つ目は、体力が少なくなってきた時に使ってきた。口から吐き出す毒霧で、射程は3、4メートルぐらいあった。
それも正面に立たず、遠距離攻撃で攻撃すれば吐き出すこともなかった。おそらく、近付いて来たら吐き出す技だったようで煙幕のような使い方をしてこなかった。
もし、射程が広くて部屋の全てに毒霧を撒き散らす方法で来ていたらヤバかったが、そこまではしなかったからホッとした。
「皆は毒にかかっていないね?薬は三つしか持って来てないし、ケイは…………ないか」
「すまないな」
アークがこっちを見て、聞いてきたがケイは首を振ることで持っていないと教えた。
「もし、向こうにいるボスが毒持ちだったら、ヤバイわね」
「百パー、持ってんだろ。ポインズホーネットがいたんだし、雑魚に使えてボスには使えないという甘い考えは捨てた方がいいぞ」
「……ダンの言うとおりだな。とりあえず、毒の攻撃には気を付けよう」
今は向こうにボスがいると思われる扉の前で休息を取っていた。さすがに無傷で勝てなかったから、しばらく休んでHPとMPを回復させている。
「うーん、あと二分かな?」
「まあ、それぐらいだろうな」
「ボスは殆どが大型だから、戦い方を考えないとな」
「そうだな、俺は守りに集中しとくか。安心して火魔法でも撃ちまくれ!」
「フォックのは火魔法じゃなくて、スキルなんだけどね。まぁ、確実にボスも虫のモンスターだから火が効果的だろうし」
結果、アークとケイは陽動役、ダンはタンクとして守りに集中し、その後ろでネビアとフォックが火で攻めることに。
ようやく回復したアークが立ち上がって、扉に触れる。
扉が開き、広い部屋のような場所に出た。その広い部屋の真ん中には大きな羽を持った蜂、身体もキラーホーネットなんかよりも比べにならないぐらい大きかった。
キラーホーネットが一メートルに対して、目の前にいる蜂は、軽く五メートルは超えていた。
『……よく来た。侵入者どもが』
話を無視して、動こうとしたが、身体が固まったように指も動くことが出来なかった。つまり、今はまだボス戦が始まっていないということ。
話が終わるまでは動けないパターンのようで、大人しく聞くことにした。
『我が息子達を殺した報いを…………受けよ!!』
羽が動き、大きな蜂は宙に浮き始めた。そしたら、身体が動けるようになり、敵の頭の上に名前とレベルなどが見えるようになった。
クイーンホーネット レベル10 (R)
ボスだけあって、ランクはRだった。レベルはポインズホーネットよりも低いが、ランクが高いので、HCがRに勝つには、レベルの差が大きくなければ、勝てない。
基礎能力が違うからだ。それにーーーー
「体力バーが二本か。大ボスより少ないから、おそらくこのボスは小ボスだな」
元βテスタであるアークがそう判断する。大ボスとなれば、体力バーは五本以上になるという。
「よし、行こう」
「ああ、その前…………【猛打の陣】!!」
支援技を使ってからアークと陽動に動く。クイーンホーネットは浮いているが、鞭は届かない距離ではない。
天井の高さは大体7、8メートルでクイーンホーネットの身体が大きいからそんなに高く飛べないようで、2、3メートルしか浮いてなかった。
『切り裂かれろ!』
クイーンホーネットが魔法を使ってきた。
「やはり、魔法を使ってくるか!言葉から考えると風が来るぞ!」
「ちっ!」
透明な刃みたいのが見え、アークは横へ【ステップ】で避け、ケイは滑るようにスライディングをして刃の下を通り抜ける。
この風魔法は【ウィンドゥスラッシュ】で、ネビアが使う火魔法の【ファイアボール】と同じレベル1なんだが、クイーンホーネットの放つ【ウィンドゥスラッシュ】は桁違いだった。
魔法にはレベルがあって、1〜10の強さで数が増える度に強くなり、便利になる。
そんなレベル1の【ウィンドゥスラッシュ】だったが、まともに受けたら真っ二つになりそうな迫力があった。実際は四肢以外は斬り落とされることはないが、もし手足に当たったら確実に捥がれるのが予想出来る。
「はぁっ!」
「【打蛇】!」
風魔法を避けた2人は武器で攻撃するが、硬い手足によって防がれてしまった。
ケイは脚に鞭を巻きつけて引っ張ろうとしたがーーーー
「やっぱり、力強い!」
反対にこっちが引っ張られて、足元からズルズルと音が鳴っている。クイーンホーネットが勢いよくこっちを引っ張ってきたので、ケイは咄嗟に武器を離した。
『むっ!?』
あっさりとケイが武器を離すとは思っていなかったのか、ケイが引っ張っていた力がなくなってクイーンホーネットは腹を前に見せる形になっていた。
そこを見逃すアークではなく、腹にクナイで攻撃していた。やはり、腹が弱点なのか、ダメージが通った。
「武器を手放して良かったのか!?」
「大丈夫だ」
そう答えて、手から離れてから五秒経ち…………
クイーンホーネットの脚から鞭が消えて、アイテムボックスの中に戻ってきた。アイテムボックスから出してアークに見せると…………
「はぁっ!?まさか、まだ初期装備を使っていたのかよ!?」
「実は、この初期装備は無敵じゃねぇ?」
初期装備は全て耐久力が無いので、破壊不可能のと同じで、さらに手放したり、無くしたりしても五秒すればアイテムボックスの中へ帰ってくる。
ただ、武器としての強さは最低である。
「まだお金は貯まってないから、買えないんだよな」
「そうか……」
「どいて!!」
後ろからネビアの声が聞こえ、魔法を放とうとしていた。これから使う魔法はレベル2で、【ファイアランス】だ。魔法のレベルを上げるには沢山使う必要があり、さらに術師本人の適性レベルを超えていなければ覚えない。
ネビアはレベル2である。
『小癪な!』
【ウィンドゥスラッシュ】で相殺しようとしたが、威力は【ファイアランス】が上だったようで、威力を削られてもクイーンホーネットに直撃した。
『くあぁぁぁっ!?』
一本目のバーが四分の一も減っていた。弱点だったといえ、【ファイアランス】には高い威力が秘められているようだ。
魔法を見て、ケイも欲しいなと思っていた。
「ミュ!」
ついでにフォックの【鬼火】も撃ち出されていたが、【ウィンドゥスラッシュ】によって相殺されていた。
「ミュ〜〜」
「落ち込むな。アークと一緒に隙を作り出すから、次のを準備しとけ!」
「ミュ……ミュッ!!」
ケイから激を貰い、攻撃が通じなくて少し落ち込んでいたフォックはやる気になる。
『貴様ら!!』
今度は尻尾当たりから針が沢山生えてきた。
「あれを撃ち出すのか!?」
「狙いは……ネビアだっ!」
2人はネビアを狙っているのがわかり、走り出す。鞭の威力は低いが、針はそれ程に強くはなくて、撃ち出される前に尻尾から針を削って行く。アークも腹よりも尻尾を狙って、ネビアから軌道を逸らそうとしていた。
『邪魔をするな!!』
大きな羽を起こし、魔法とは違う風で近くにいる敵を吹き飛ばそうとする。
「く、くぅっ!」
「うわぁぁぁっ!?」
ケイは咄嗟で脚に巻きつけていたので、吹き飛ばされずにすんだが、アークは捕まるものが無かったため、十メートルぐらいは吹き飛ばされていた。
「こっちに向きやがれ!!」
ネビアに向かわせないように、ムチを振るってダメージを蓄積させていく。
だが、威力が小さいからなのかこっちに向かず、ネビア達を狙っていた。
『突き刺されるがいい!!』
「させるか!」
ついに、小さくて大量の針がネビア達に向けて撃ち出される。だが、ネビア達の前にはダンが残っている。
「【ブロックガード】!!」
この技は、盾持ちである者の防御、DEFを十秒だけ20%もアップ出来るのだ。
全ての針をダンが盾でさばいて行く。少々はダンに刺さってしまったが、ダメージの方は【盾術】の技である【ブロックガード】のおかげでそんなにダメージを受けなかった。
もちろん、後ろには針一本も通さなかった。
『なんだと?』
「やっちゃまえ!!」
針を発射したばかりのクイーンホーネットは隙だらけだった。ケイとアークは防御が弱い部分である腹を攻撃し続ける。
クイーンホーネットは叫び声をあげ、大量のバーも一本目の半分まで減らせた。
残り、丸々一本と半分。ケイ達は全ての体力バーを削れるのかーーーー?