Ⅴ - Ⅱ
地を這うような低い声に、魔鳥の動きが止まった。
「私はお前達の親よりも遥かに長生きをしています。これがどういう意味か、いくら頭の悪いお前達でもわからない訳ではないでしょう?」
墓守の言葉を最後に辺りを静寂が包み込む。その静寂を破ったのは魔鳥達だった。
覚えてろよ! なんて台詞を吐きながら一斉に飛び上がり空へと消えていく。
残された墓守はもう一度深いため息をついた。
そして、倒れている少年へと視線を移す。その側にしゃがむと、「生きてますか?」と声をかけた。その声に少年はぴくりと反応し、顔を少し上げ墓守へと視線を向ける。
「だ、れ……」
「助けてやったのに礼も言えないんですか?……まぁいい。立てますか? もう日も暮れますから、さっさとご自分の家に……」
突然黙り込んだ墓守に、少年が怪訝そうに首を捻る。墓守の目は少年の目、髪を交互に見た後左の目元に留まった。
「……貴方の名前を伺っても宜しいですか?」
「名前……俺は、ロスタリア。ロスタリア・スィル・ファレノプシスだけど……」
ロスタリアと名乗った彼を見詰める墓守の目が驚きの色を浮かべた。そうして胸の前で手を合わせ、大きな耳をぴょこぴょこと揺らす。
「あぁ、あぁ……! なんということでしょうか! この日をどれほど待ち侘びたか! お会いしとうございましたよ、ロスタリア様」
「俺のことを知ってるの?」
興奮気味に話す墓守に、ロスタリアは不思議そうに首を傾げる。そんな彼の問いかけにもちろんですと返事をし、墓守は小さく咳払いしてその場に跪く。
「私共カーバンクル族はそれぞれ、龍族に仕えて参りました。そして私の一族は代々、ファレノプシス家……龍王様に仕えてきたのです。私は貴方様に仕える身で御座います、ロスタリア様」
「カーバンクル……じゃあ、あなたはもしかして……」
「はい。レグナド家の跡取り、そしてーーカーバンクル族最後の生き残りです」




