Ⅳ - Ⅵ
【万事屋ソール】
「……墓守たちは、知っていたの?」
ロスを部屋に寝かせ、ロビーへ戻ってきたニトを横目に優は墓守へ問いかけた。質問を受けた墓守は表情を変えず、耳を揺らす。
答えようとしない墓守に眉を潜めた優は、今度はニトへと視線を向ける。彼女と目が合うとビクリとニトの肩が跳ねた。
「ろ……ロスが龍だってことは……知ってた……」
「あなたたちは……記憶をなくす前のロスを知っているの?」
優の質問に、今度は墓守がはいと返事をする。
「私とロス様はもう、100年以上の付き合いになりますからねぇ」
「……龍、か」
懐かしそうに目を細める墓守に、腕を組みながら黙って聞いていたシャルムが口を開く。その呟きを聞いた墓守が今度は彼へと視線を向けた。
「でも、龍族って200年も前に滅んだはずじゃ……」
「そう言い伝えられていますね。確かに、“龍の国”は滅びました。ですが、龍族が滅んだ訳ではないと思いますよ。現にロス様は龍族ですが生きておられます」
そう……龍の国は滅んだ。すべての世界の頂点に立つ存在の龍が住む国。その龍族が一夜にして全滅した事件は、3つの世界に広く言い伝えられていて知らない者はいないほどだ。
時は200年前に遡る。




