Ⅳ - Ⅴ
ニトの指差した先。そこに立つ、1人の少年。炎の光を受け、銀色の髪がキラキラと輝く。
見知った少年の姿を見て、信じれないといった体で言葉を失う優とアンヘル。対する墓守は驚かず、ニトもあまり驚いたようには見えない。
その場に立ち尽くしていた少年の体から、かくんと力が抜けた。その場に倒れ込む寸前、駆け寄ったニトの腕によって抱き抱えられる。
「そんな……どうして、ロスが……」
「優様、今はとにかくロス様をお部屋へ」
墓守の言葉に、優ははっと我に返る。ニトに、先程の屋敷へロスを運ぶよう言い渡すと一足先に屋敷へと戻っていった。
「アンヘル!」
ニト達について行こうとしたアンヘルは、突然名を呼ばれ足を止めた。声のした方を振り返り、見知った姿をその目に捉える。
アンヘルの元へ息を切らして走ってきたシャルム。膝に手をつき少し息を整えると顔を上げた。
「怪我人の治療を手伝ってほしいんだ」
「わ、わたしに? でもそんなこと……」
「頼む、君にしかできないことなんだ」
彼の言葉にアンヘルは不思議そうに首を捻る。一方シャルムはポケットに手を入れると、そこから腕輪を取り出し彼女へと差し出した。
小さな青い石で装飾が施された腕輪。アンヘルはそれを受け取り、シャルムへと視線をうつした。
「それね、俺が作った腕輪なんだ。魔力を増幅させる特殊な石を使っているから、付けていれば混血者でも能力が使えるようになるはずだよ」
「能力を……」
「アンヘル、君の能力は治癒の力だ。……だから、俺と来てくれないか?」
腕輪を見つめたアンヘルは、それを自身の腕にはめシャルムの手を掴む。そのまま手を引いて、彼の走ってきた方へと駆け出した。
「わたしにしかできないことなら、やりたい! わたしも誰かを助けたい!」
アンヘルの言葉に、シャルムは一瞬目を丸くする。だがすぐに笑みを浮かべると、彼女を抱き上げ走り出した。
「ありがとう、アンヘル!」




