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Terror - テロル -  作者: 闇璃
2章
14/31

Ⅱ - Ⅶ

 






「……夢、か」

 目を覚ましたロスは、息を吐き目元を腕で覆った。そして腕を退け、窓の方へと視線を向ける。少しだけ開いた隙間から欠けた月が覗いている。まだ眠ってからそれほど時間は経っていないようだ。

「久々にベッドを使おうとしたらこの夢ですか……。参ってしまいますね」

 幼少の頃の夢を見たロス。自嘲気味に笑うと、身を起こした。ベッドから降り、水でも飲もうかとドアへ向かいドアノブへ手を掛ける。

「……機構の魔族様がこんな所へ何の用でしょうか」

 ふと、ドアの外から漏れてきた声にロスの動きが止まる。

 機構の奴が、なぜここに――。

 ソファーに置いてあったパーカーを身に纏い、マフラーを首に巻く。そして武器の剣を身に付けると、そっとドアを開けた。

 できるだけ音を立てないように、階段を降りていく。

 入り口には、黒いローブに身を包んだ人物が立っていた。その者と対峙するように優とシャルムが立っている。

「……ここに、ロスという少年はいないか」

 魔族が発した言葉に、ロスの動きが止まる。機構の狙いはどうやら彼らしい。

 でもなぜ。機構に目をつけられるようなことは――。

「……ロスに、何の用?」

 腕を組んで仁王立ちになっている優が魔族を睨みつける。一方の魔族は、被っていたフードを取ると目の前に立つ優を見た。鋭い紅の瞳がじっと彼女を見つめる。

 ロスは彼の姿を確認すると、驚きに目を丸めた。少し小走り気味に階段を降りる。

「兄さん!?」

 思わず大きな声を出してしまったロスは、しまったと口に手を当てた。優とシャルムは驚いたように振り返る。そしてもう一度ローブの男へ向き直ると優が口を開いた。

「え、ロスの……お兄さん!?」














「はい、紅茶。良かったら飲んで」

 椅子に座った男の前に優が紅茶を差し出す。小さく礼を述べると、男はカップへ口を付けた。

 ロスは向かいに座っている兄のことをじっと黙って見つめている。しかしその視線は見つめている、というよりも睨みつけていると言った方が正しいのかもしれない。

「で、あのー……できれば詳しく説明して欲しいんだけど……」

 一向に口をきこうとしない2人に、シャルムが苦笑混じりに言う。それにカップを置いた男が口を開いた。

「名はエレティック。第6部隊長。まぁ、訳あって今は機構に戻れない状態なんだが」

「ロスのお兄さんって……」

 簡単な自己紹介を終えたエレティックに、優は気になっていた事を問う。先程、ロスは彼のことを“兄さん”と呼んだ。兄弟という割にはあまり似ていない2人。共に目付きがお世辞にも良いとは言いがたいが。

「あぁ、俺とコイツは兄弟だ」

「血は繋がっていませんけどね」

 ぶっきらぼうに言うロスへ、エレティックが視線を向ける。目が合うとロスはふいとその視線を逸らした。

「大体、何なんですか今更。今まで人を放ったらかしておいて。どうせ機構にいられらなくなったのだって、兄さんの気まぐれでまた何かやらかしたんでしょう」

 ぶつぶつと不機嫌そうに呟くロスを、優とシャルムは物珍しそうに見つめる。普段クールな彼のこんな姿、見たことがない。これではまるで――。

「ロス、もしかして拗ねてるの?」

「……違います」

 まるで、構ってもらえなくて拗ねている子どもだ。

 







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