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ハヤトが逝く  作者: 砂流
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ランクアップの後にくるもの

手ごわい魔物が初登場。少しシリアス入ります。コミカルな部分が少ないのですが、しばしご辛抱を。

冒険者デビューから1週間。


主に俺のレベル上げのために組んだパーティは快進撃を続けていた。


エルモが魔物を探索、俺とレオンが動きを封じる物理攻撃、トパが一気にとどめをさす。ギルドでも連携のとれたパーティとしてそこそこ評価されていたし、何より、俺の魔力が飛躍的に伸びた。既に魔力量が3ケタに達し、同時に絶対防御がレベル3、コピペはレベル2にあがっている。もっとも、エルモは探索が終われば相変わらずプカプカと中空で舟をこいでるし、トパはトパで俺とレオンの攻撃がもどかしいのか、すぐにでも雷の魔法サンダーチェインというらしいを発動させようとする。魔物よりも、後衛を気にしなければならない点、『前衛殺し』の二つ名はだてじゃないとつくづく思う。


レオンとは1週間の約束だったが、かなり実入りがよかったせいか引き続きパーティにとどまってくれることになった。エルモは、元々固定パーティとしての参加希望だったので問題はない。で、トパだが、6日目に俺が貸した金の弁済が終わったにも関わらず、パーティに残ると言う。まぁ、彼女の火力でずいぶん楽にレベ上げをさせてもらっているから、新たなメンバーを探すよりは嬉しい誤算っちゃ嬉しいんだが。


で、この1週間で気付いたこと。どうやら、コピペのスキルを使って出したものは「消費(?)」期限があるらしい。この世界にきて初日に出した機関銃が5日目に、調味料は2日目に跡形もなく消えていた。元々この世界にはないはずの物…世界の意志が異物を排除しているのだろうか。


そしてだ、コピペスキルが一つあがることで、何と、それまで調味料程度しかペーストできなかったのが、念願のコンビニおにぎりをペーストすることに成功したのだ。そのほかにも、コーヒー、キャンディ、スナック菓子といったものまでペースト可能となっていた。だが、コンビニ弁当は、まだペーストできない。次のレベルアップに期待だ。


……………


いつものように、こつこつとゴキゴリーを討伐していると、突然、サイレンの音が聞こえてきた。冒険者のリスクを少しでも減らすため、ギルドのある町とその郊外には警報を中継する魔具が半径約20kmに幾つか設置されている。サイレンの後に警告音があり、警告音の鳴り方で、強力な魔物の出現、冒険者徴集、避難勧告、自然災害発生などの意味を持たせているのだが、今回の警告音…ピー・ピ・ピ・ピーは、強力な魔物の出現を指していた。


『緊急依頼、緊急依頼。シグナ北方35kmにグランダン出現。討伐可能な冒険者は至急向かえ。同方面にいる非戦闘員は直ちに町内に避難せよ。繰り返す、緊急依頼、緊急依頼…』


「グランダンって、どんな魔物だ?」


「魔物ランクB、氷結魔法を攻撃手段としてるであります。それほど大きくはないのですが、魔法攻撃が効かないため、Bランクに格付けされてるであります。」


「そっか、じゃ、エルモには苦手な魔物だな。」


「いや、やつの外皮はかなりの硬度がある。槍の俺でもなかなか厄介だぞ。」


「たいしたことないわよ。ローキックで態勢崩して、延髄に回し蹴りでも入れれば、いけるんじゃない?」


「で、どうする?もう今日の依頼数はこなしてるし、俺としては興味があるから行ってみたいんだが…。」


エルモはあまり乗り気でなかったが、レオンは俺の経験を積ませる意味で、トパは純粋にストレス発散のためだろう、行こうということになった。こういった依頼の場合、報酬は出ない。依頼というよりも、冒険者としての義務のようなもの。自分たちの町は自分たちで守る…自衛隊の理念に通じるものがあるな。


直接、現場へと向かうルートがないため、ひとまず町に戻り、ギルドで討伐証明の魂石を引き渡し、北門から現場へ向かうことにしたのだが、ギルドに戻ると既に4組のパーティが討伐に向かったと言う。うち、1組は数少ないAランカーが率いるパーティ、他の3組もB、Cランクの冒険者が中心のパーティだそうだ。まだ情報は入ってきてないが、俺たちが到着する頃には討伐されてしまっているかも知れない、と受付の職員が安心した顔で言った。


ならば急ぐこともないか。依頼達成の手続きをのんびりと待っていた。


「おめでとうございます、ハヤト様、今回の討伐で冒険者ランクがDにランクアップしました。」


おー、あと一つでみんなに追いつく!けど、Cまでは大変らしいし、俺がCになる頃には誰かBランクになってそうだな。


「ハヤト様、スキルレベルも上がってるでありますよぉ。美味しいもの、ますます出せるでありますね。」


エルモがキラキラ、眼を輝かせているが、俺としては食い物よりも出せる武器に期待したいんだが。あ、もちろん、食糧も大事だよ。コピペレベル3…だが、コンビニ弁当、出でず。おそらく…たぶん…きっと、次のレベルだろう。さて、報酬と魂石の金を分配するか。


「ほ、報告、報告。ギル長にとりついでくれ!緊急依頼の魔物の件だ!」


息を切らして、一人の冒険者が駆け込んできた。


「どうした、何を慌てておる。」奥から、いかにも昔は前衛で活躍したことを思わせるような体躯の男が出てきた。シグナのギルド長、スピカだった。


「グ、グランダン、イエローです!」


「なに!イエローだと!」


「イエローって何だ?」小声でエルモに尋ねてみた。


「基本的に一般的なグランダンの皮膚の色はグレーであります。ところが、長く生き延びていると少しずつ皮膚の色が変わっていくでありますよ。グレーからグリーン、レッド、イエロー、シルバーの順に色が変わるであります。この色の変わり方は基本的にどんな魔物も共通であります。そして上位の色ほど、冒険者のレベルと同じように強いことを表し、今、湧いてるグランダンは上から2つ目の色でありますから、かなり強力な魔物であります。」


「それって、かなりやばい?」


「そうでありますね、通常のグランダンであれば、Cランクの前衛3、後衛2のパーティが二つもいれば倒せるでありますが、イエローとなると、パーティにAランクのスキル持ちは必須でありましょう。火力になりうるのもBランク以上、Cではせいぜい回復職が役に立つ程度であります。」


「だが、ゾフィがおるであろう。やつでも止められんのか?」


「はっ、ゾフィ様も何とか弓で押さえようとはしているのですが、スタンスを確保する前に前衛が突破されておりますので、思うように威力のある矢を射てず、後退しながらの攻撃となっております。それに、既に何人かグランダンの氷結の餌食になっており、戦力は削られております。」


「むむ、前衛の火力が足りぬか。今、彼らはどのあたりにおるんだ?」


「5kmほど後退させられましたので、ここから約30kmまで接近されております。」


「…間にあうか。至急、ラムドに応援要請だ!Aランクの前衛希望と伝えろ!それから、今いるCランク以上の冒険者は城壁に待機させよ。最悪の場合、応援が来るまで数で押すしかない。」



「行ってくる!」


「行ってくるって勝算あるの?並みのグランダンなら私でも力押しで何とかなるかも知れないけど、イエローなんて無理よ?」


「俺も同感だ。ここは応援を待つべきだと思う。」


「なぁ、機関銃とマグナムは知ってるよな。あれと、さっき言ってたゾフィって人の弓、どっちが威力あるかわかるか?」


「うーん、Aランカーの弓かぁ、マグナムなら威力は同じくらいじゃないかしら。機関銃よりは弓の方が威力が高いと思うけど、たくさん撃てるって点では機関銃が勝るわ。」


「だろ?Aランカーの弓に勝てるとは俺だって思わないさ。そのランクになるまで培った技量もあるだろうし、慢心してるわけじゃないんだ。けど、単純な火力で弓に近い力を出せるなら、前衛の足止め代わりにはなれるんじゃないかって思うわけよ。」


「それもそうね。私たちに足止めは無理だけど、ハヤトの武器ならいけるかもね。」


「というわけで、行ってくるぜ。」


「まぁ、待ちなって。お前、30km先までどうやって行くつもりだ?歩いて行くのか?」


「うっ、確かに遠いな…。」


「そこはトパの加速魔法に乗せてもらうべきだろ?それに、グランダンの弱点・攻撃法はエルモの知識が必要だぜ。あと、お前が銃を発砲してる時の周辺警護…俺もその程度なら役に立つぜ?俺たちパーティだぞ。ソロはダメってわけじゃないが、ここはお願いしますの一言、あってもいいんじゃねぇか?」


「ぐっ、そうだな。トパ、エルモ、一緒に来てくれるか?」


「もちろんであります、ハヤト様を一人で戦場に行かせられないでありますよぉ。」


「んー、まぁなんだ。頼りにしてもらってもいいぞ?」


「リオン、ありがとうな。それじゃ、行こうか。」



地上5mの中空を、トパが掛けた加速魔法により『ある日森の中』のメンバーが駆け抜ける。1時間もたたず、現場が見えてきた。


「……エルモ……最初、グランダンのこと聞いた時、あまり大きくはないって言ってなかったっけ?」


50mほど先に黄色い外皮のグランダンがいる。大きさはアフリカ象を2頭並べたくらいだろうか。


「思ったより、少しだけ大きかったでありますね。」


「少しだけか?」


「はい、少しだけ…だって、黄色いんだもんっ」


「いや、色は関係ないと思うぞ?」


どうも、エルモがイメージしていたグランダンとは明らかに大きさが違うようだ。幾らトパが強いからって、このサイズ相手にローキックや延髄切りは仕掛けられないだろう。要するに想像以上の規格外のサイズの魔物だったってことだ。


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