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ハヤトが逝く  作者: 砂流
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その頃、天上界では

2013.6.23 表記、登場人物名等修正

「ゼウス様、ゼウス様、ようやく件の人間を発見しましたわ。ったくおとなしくしてればいいものを、うろちょろうろちょろとこの男は!」


「落ち着け、アマテラスよ。で、その男、息災か?」


「ええ、何も問題はなさそうです。むしろ我々の導きなしに生きていられたのが不思議なほどに。」


「そもそも、お主が目を離したのが原因じゃろう。」


「目を離したっても、相手は超音速て飛び回ってるんですよぉ。」


「はて、偵察機って超音速じゃったかのう?知らんけど。」


「私も存じ上げませんが、とにかくめっちゃすばしっこくてつい…。」


「まあよかろう、で、どうするつもりじゃ?」


「本来であれば、別世界で絶世の美女たる私の化身が奴の前に現れて、能力を授け、世界の理を教えるのが筋…ってか、それやりたかったんですけどねぇ。やり直しって無理ですか?」


「今更かい!」


「こうなったら仕方ありませんわ。私の代わりに天使の一人も奴の監視兼サポートにつけようかと思っております。」


「そうじゃな、それが次善の策か。で、誰か適した天使材はおるかの?」


「エルモをここへ。」


控えていた天使長に命ずると、同じような容姿の天使に引きずられてエルモと呼ばれる天使が現れた。


「エルモよ、せっかくの有給休暇の申請だが、却下しておいた。お主に任務を与えるぞ。」


「ア…アマテラスさま~、ひどいでありますぅ。母が床に伏してるからすぐにでも飛んで帰りたいでありますよぅ。」


「ほう?お主の母君はネズミーランドなるところに住んでおるのかの?しかも、昨日、娘がご迷惑をハルマなる天使から饅頭が届いておるが、はて、このハルマとはだれかのう?」


「ゲゲッ、母上、何と余計なことを!てか、なぜネズミーランドを!」


「天使のやることなぞ、全てお見通しじゃ。で、この任務、受けてくれるな?」


「は、はい、よろこんでぇ~。で、どんな任務でありますか?」


「ある男の監視じゃ。世界の理を乱さぬか否かのな。今、26937番の秩序が乱れてきておる。そこでノイズとして2583番の世界から男を一人遣わした。だが、この男はそんな事情など知らぬ。いや、知らせるわけにはいかん。何か成し遂げねばなどと気負われても困るからの。おそらく20年もここで過ごせば、乱れた秩序も元にもどろう。それまで、奴が妙な動きをせぬか、そしてやつが世界になじむよう監視とサポートをお主にはして欲しいわけじゃよ。」


「20年でありますか?」


「不満か?確かお主は昨年、11584番世界で都市を一つ水没させよったな?その沙汰がまだだし、これから「おはなしあい」の場をもとうかの?」


「い、いえ、承知いたしましたっ。その任務、謹んで承るでありますっ!」


「では、これが奴のデータ一式じゃ。読んだら速やかにシュレッダーし、奴の元へ行くべし。恙なく任務を全うせよ。」



……………


そんなわけで、私はシグナの町のギルド本部で彼を待っている。アマテラス様が準備してくれたギルドカードはランクC。属性は風。種族は妖精族となっている。まぁ、私の可愛さで落とせない男はいないし、楽勝楽勝。あ、来た来た!


ハヤトの前で、エルモはさりげなくハンカチを落とした…ってどんだけ古いパターンだって突っ込みは受け付けない…。ハヤトは素通りした…


「素通り…ってこらぁ!そこの男、普通、レディがハンカチ落としたら拾うでしょうがっ!」


「ヘッ?あ、ゴミじゃなかったんだ。ほれ、落としたぞ?」


「あ、ありがとうございます。この御恩、一生忘れませぬ。つきましては、あなたのパーティに加えて頂き、甲斐甲斐しくお世話をさせて頂くということでよろしいでしょうか?」


「んーと、なぁリオン、このチビッコの言ってること翻訳してくれるとありがたいんだが?」


「いや、俺にもわからんよ。まぁ、何だ、ここはスルーってのがベストアンサーだと思う。」


「同感だ。それじゃな。」


「はい、またいずれ…って、待つであります!『袖すりあえば馬鹿にしないでよ』って格言もありましょうに、このご縁、もったいないと思わないでありますか!この私を仲間に加えることができるのでありますよ?」


「いや、俺駆け出しだし、仲間も足りてるから。それから、格言、聞いたことないから。ということで。」


「そっか、世界によって格言は変わるものだし…って、そこじゃないでありますっ。お願いです、あなたのパーティに加えてください!ほら、ランクだってCですよ?あなたのお役に立ちますから!」


「ほほう、それなりに戦力にはなりそうだけど、見たところ妖精族でしょ?うちのパーティには魔法を使えるエルフがいるから被るんじゃないかな?」


「あ、そこは大丈夫であります。もちろん、魔法も得意でありますが、一応、キューピットも目指してましたから、弓矢も得意でありますから、遠距離戦力として是非に!」


「どうする?リオン。」


「いいんじゃね。今回は、お前がパーティを組むわけだ。お前がいいと思えば加えてやればいいさ。」


「それじゃ、ギルドカードを合わせるか。えっと、君、名前は?」


「ありがとうございます。これが私のカードであります。よろしくお願いするであります。」


手渡されたカードの上に俺のカードを重ね、パーティと書かれたタグをタップするとパーティメンバーの承認が完了となる。今朝、リオンからそれを教えられ、さっそくパーティを作っておいた。パーティ名は最初、シャレで『紅蓮の記憶』と名付けてみたが、既に登録されています、と弾かれた。いるんだな、ここにも厨……いろいろ悩んだ末に『ある日森の中』とした。俺がこの世界に来てはじめてみた風景、そう、あのハチグリと出会った森にちなんでいる。


「エルモって言うのか。俺はハヤト、こいつはリオンだよろしくな。あと、さっきも言ったようにエルフが一人来る……よな?」


「誰に言ってるのかわかりませんが、リオンさん、ハヤトさん、よろしくお願いするであります。」


「それじゃ、そのエルフの娘さんが来るまで、依頼見てようぜ。」


リオンに促されて、依頼の貼られた掲示板に向かう3人であった。


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