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ハヤトが逝く  作者: 砂流
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運命の出会い?

2013.6.23 表記、登場人物名等修正

『ホテル スカイライン』………


どこがホテルやねんっ!とつっこみたくなるくらい、そう、さしずめ一昔、いやもっと前の古い大学の男子寮と言っても若い諸兄には通じないだろうが、そこをなんとかイメージしてもらいたい。部屋は、4畳半一間の、耐震構造?何それ?といわんばかりの古いアパートの部屋といったところだろうか。ともかく、ホテルとは名ばかりのドヤがリオンの常宿だった。


「そうか、そいつは残念だったな。だが、ポリンたちも冒険者やってる以上は覚悟はあったろう。お前が生き延びて、彼らの死を報告できただけでも、ちょっとはマシだ。ソロでやってたり、パーティ全滅なんてことになったら、生き死にさへわかんねぇもんな。あまり気に病まず、がんばれや。」


「ありがとうな。ところで、こいつがハヤト。俺の恩人だ。部屋はあるよな?」


「あー、続き部屋にしとくか?」


「ハヤト、こいつがここの主人、テンドンさんだ。お前もここ、泊まるだろ?」


「うーん、正直、この世界の部屋のグレードがわからないが、まぁいいか。よろしく頼む。」


「グレードって、どこの貴族様だよ。冒険者としちゃ平均的な宿だぜ。心配するな、ノミやシラミはおらん。清潔さと良心的な値段がうちの売り物だ。ひいきに頼むぜ。で、飯はどうする?」


「とりあえず今日の夕食と明日の朝食は頼みます。明日からはどうなるかわかりませんので。」


「了解、飯は夕食500ドン、朝食300ドンだ。あと、宿泊費が1泊3000ドンな。」


ドン…ベトナムあたりの通貨がそれじゃなかったかな?レートとしては日本と同じようなもんか…。


まだ報酬の分配はしてなかったので、マルトさんからもらった謝礼金を見ると…金貨が2枚…とりあえず1枚をテンドンさんに渡す。


「おい、金貨って、釣りはねぇぞ?」


護衛の途中でリオンから教わった知識では、金貨1枚が10万ドンだった。朝食と夕食込みで1か月は連泊できる金額だ。


「あー、いいっすよ。しばらくこの町にいるから、それで泊まれるだけ泊めてもらいますから。足りなくなったらまた言って下さい。」


「面倒だな。まぁ、明日でも両替してこいや。今日はこいつはしまっとけ。トンズラしたら、リオンから貰うさ、ガハハ」


「いや、両替しなくても今回の依頼の報酬、分配するから大丈夫さ。後で持ってこさせるよ。」


「ほんじゃ、404と409の続き部屋のキーな。」


ん?404と409が続き部屋?ってか、ここ外から見た限り2階だよな?どういう部屋番号の付け方なんだよ。わけがわからないまま、リオンについて2階へあがると一番端の部屋が409、その一つ手前が404号室だった。日本じゃ4とか9とかって避けられるんだが、まいっか。というわけで、ひとまず俺は404号室に落ち着いた。


弾丸ベルトを外し、機関銃と小銃を置くとようやく一息つけた気がする。町に入って、ずいぶんと好機の目にさらされたな。元の世界でも、こんなかっこうで町を歩いてたら絶対人目を引くだろうけど。


「おーい、ハヤト、入るぞ?」


いや、入るぞって言う前に入ってきてるし。てか、この世界、ノックの習慣ないのか?トイレの個室はどうするんだ?


「今回の依頼は、元々は4人で往復4日、一日当たり一人5000ドン、それに緊急手当てが3000ドン。てことはだ…リオンがコインを4等分して数えている。


「一人当たり23000ドンだな?」


「!!お前、計算できるのか?」


「あー?これくらい俺の世界じゃ、小学生…学校あるのか?…10歳になるまでに習ってることだぞ。そう難しいことじゃないだろ?」


「そ、そうか。俺たちはギルドで俺がいくらもらえるか言われなきゃわかんねぇ。それか、今みたいにもらってから実際に分けていく程度だ。すげえな、お前。」


「いやぁ、それほどでもあるかもしんないな、ハハハ。で、俺は1日半てことは7500ドンくらいはもらえるんだろ?」


「それでいいか?俺が23000ってのはもらいすぎの気もするが、明日ギルドに行った時に、俺とお前で分けて残った金はギルドから死んじまったやつらの家族に渡るようにしといてもらうつもりだ。」


「リオンって、顔に似合わず律儀なんだな。」


「顔に似合わずって何だよ。よっぽど悪人面に見えるか?だが、パーティ組む以上は、そいつは常識だぜ。あ、これはまだ教えてなかったな。臨時であれ、固定であれ、同じパーティ仲間となった以上は死亡報告や分け前の分配は義務みたいなもんさ。中には、死人に口なしでちょろまかす奴もいるけど、そういうやつはせいぜいCランク止まりだな。」


「そういうもんか。じゃ、俺もこの報酬の端数2500ドンはそっちに回すよ。そいつらの家族に渡してもらってくれ。」


「助かるぜ。俺も幾らかは出すつもりだったんだが、懐事情がな…。」


「いいってことよ。じゃ、宿賃払ってくる。あと、飯は何時だ?それまで、町を散歩してくるわ。」


「飯は、鐘が6回鳴ってからだな。あんまり遅いとなくなってるかもしんねえぞ。あんまり遠くへ行くなよ。つっても、迷子になってもここの名前を出せば、たいてい教えてもらえるがな。」


「OK、じゃ、また後で。」


部屋を出ると、フロントというか番台というか、ともかくテンドンさんのいた場所へ降りていった。ん?テンドンさんがいない?変わりに、若…くはない女性がいた。


「こんちわ。テンドンさんに宿賃払いにきたんだけど。」


「あ、リオンくんのお友達ね。私、テンピン。テンドンは私の夫よ。よろしくね。今、テンドンは夕食の準備してるわ。で、宿賃の説明は聞いたかしら?」


「はい、とりあえず1泊と夕食、それに明日の朝食でお願いします。」


「ちょっとまってね、えっと宿賃が3000と夕食と朝食で500と300、だから3800ドンね。いいかしら?」


「はい、じゃ4000ドンで。」


「はい、200ドンのお釣りよ。夕食は鐘6つから始まるからね。」


「それまでちょっと散歩してきます。鍵は渡しておいた方がいいのかな?」


「預かっておくわ。持って出てもらってもいいんだけど、なくしたら5000ドンかかるからね。いってらっしゃい。」


熟女と少女の中間くらい、微妙なお年のテンピンさんの笑顔に送り出されて、宿の外に出た。まだ日は高い。日本で言えば夏の午後4時くらいの感覚。ギルドは町の中心部の方角らしいので、来た方向とは反対の方向へ歩いてみることにした。


少し歩いてみたが、ギルドから宿へと向かう道と同じように、あちこちにマーケットがある。日用品、食糧、武具、衣類…1kmも歩けば、生活に必要な道具一式は揃いそうだし、食糧も豊富だ。屋台もけっこう出ていたのだが、夕食までそう時間はないようなので、夜食に持って帰れそうなものだけ、ちょこちょこと購入した。金貨はさすがに使いづらく、手持ちは1200ドン。たいしたものは買えそうもない。


小一時間、ぶらぶらと歩き、少しばかりの買い物をして、宿に戻ろうとした時、通りの先から怒号と哀願する声が聞こえてきた。


「どうか、どうか、あと3日、いえ、1日でもお待ち頂けないでしょうか?」


「ならんな、払えんものは体で払ってもらうってのは当然じゃ。引っ立てい!」


連れ去られようとしているのは…ん?あの耳は…エルフ!おー、これって助けにいって惚れられるって典型的なパターンじゃん!まさか、これほどコテコテの展開って、吉本新喜劇もビックリだぜ。


もちろん、俺は行動に出たさ。エルフの娘の手をつかんでいる男の手をつかみ…ややこしいな…馬の上の男をにらむ。


「ちょっと、おっさん、街中でそいつはかっこ悪いぜ?とりあえず、その娘、解放しようか?」


「なんだ、てめぇ、でしゃばってんじゃねぇぞ!」


うんうん、これもお約束。まっさきにヒデブ~って消えてしまうキャラだね。


「で、さっきから払う払わんって言ってたけど、何なんだ?ことによっちゃ俺が肩代わりするぜ?」


「そうかいそうかい。そいつはな、領主様への税金を払わずに商売しとるわけよ。お前が払ってくれるんなら、それはそれでかまわんが。というより、払ってくれよ、そうすりゃ俺もこんな無茶はせずにすむし、領主様も腹をたてずにすむ。どうだ?」


「ふーん、思ったよりお前さん、悪いやつじゃなさそうだな。で、税金っていくらなんだ?」


「えーとだな、2月から6月までの5カ月分、15000ドン、それに延滞利息が4650ドン、あわせて19,650ドンだな。」


ん?良心的なんじゃね?


「まぁ、払えないでもない。で、お譲さん、何でそんなになるまで払えなかったのかな?」


こういう場合はやっぱりあれだよな、親父さんかおふくろさんが倒れて入院。その医療費を払うと手元に金は残らないって…そんなとこだろ?


「うっ、あのね、メジロキャップのバカが、どじっちゃったの…」


「メジロキャップ?」


「あれ、鉄板だよね?キルリーさんもそう思うでしょ?あそこで、オグライアンにさされるって何なのよ!」


「いや、儂はドッグレースはやんないから。てか、やっぱり売上、つぎ込んだんかいっ!」


「だって、あんな鉄板につぎ込まなくてどこにつぎ込むってのよ。ナツサンバンの万犬券で一発勝負とでも言うの?」


「だから、つぎ込む金は払うものは払ってからだろうが、ったく…。」


何ですか?いわゆるギャンブルで首が回らなくなったってことですか?このエルフっ娘は?


「うーん、あなたの言うことはわからなくもない。けど、2万弱程度の借金を体で払えってのもねぇ。」


「あぁー?エルフってのはパワーと魔力が売り物だぜ?肉体労働で払うってのが一番手っ取り早いだろうが。2万程度なら、そうだな、1週間も城壁の修復にでも出せば払えると思うぞ?」


……体でって、普通、ほれ、あのネオンの世界、お風呂に身を沈めるとか、妾になれとか、そういった方面でそ?ってか、そういう方面の職業あるのかな?


「嫌よ、あんな汗くさい仕事!せっかく30年こつこつ麻雀や競犬で貯めた金で持った私のお店なのよ。今年はたまたまついてなかっただけ。ツキさへ戻れば、そんな端下金、すぐに払えるんだからね。」


「キルリーさんて言いましたっけ、ごめんなさい。この話、スルーでいいですか。俺が悪かったっす。」


「おい、ここまででしゃばっておいてそれはねぇだろ?頼むよ、人助けと思って払ってやってくれよ。こいつを連れてってもいいんだが、後が面倒だし、こいつが真面目に働くってありえんだろ?そうすりゃしわ寄せは俺にくるし、今日だって残業なんだぜ。」


なんかすがるような涙目で訴えてるし。


「そうよ、ここまで聞いて、助けてやんなきゃ男がすたるってもんよ?ほら、言うじゃない?困った時はご愁傷様とかって。」


いや、言いませんから!それ、困ってる人をさらに追い込む言葉に変わってますから!だが、こう両方から懇願されると断り辛い…そうだ!さっきエルフってパワーと魔法が売り物だって言ってたよな。


「それじゃさ、こうしないか?明日から俺と一緒に依頼をこなすこと。その報酬から返せるだけ返していくってことでどうよ?無理なことは頼まないよ。俺も今日から冒険者始めたばかりだから、むしろ手伝ってもらえると有難いんだが。」


「……」


きっと嫌なんだろうな。けど、ここで断れば、どっちみち強制労働だ。それよりは、きっと俺の提案の方がまだマシ?なんか、ない頭で考えてるぞ?こいつ。


「わかった、それでいいわ。でも、あなたの従者じゃないからね、あくまでパートナーよ?私これでも冒険者のランクはCよ。初心者のあなたにはもったいないパートナーなんだからね。そこはわかってもらわないと困るわよ?いいこと?」


「OK、交渉成立だ。じゃ、2万ドンね。お釣りと領収書よろしく。」


「お、お前、このエルフとパーティ組むのか?チャレンジャーだな?勇者なのか?」


いや、聞かなかったことにしておこう。てか、さすが役人だな。集金の帰りなんだろうか?金貨で支払ってもきちっと釣り銭持ってるんだ。両替する手間が省けたぜ。


「領収書は、借金の返済が終わるまで俺が預かっておくよ。あ、遅くなったけど俺、ハヤト。よろしくな。」


「トパよ。そこのバーのママやってるわ。いつでも飲みにいらっしゃい。まぁ、明日からいろいろと指導してあげるからよろしくね。」


こうして、明日朝の鐘9つの時間にギルドで待ち合わせる約束をして、帰路についたハヤトだった。なんか疲れた。

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