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ハヤトが逝く  作者: 砂流
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シグナの町に到着しました

2013.6.23 表記等修正

見慣れた白い天井…はなかった。もしかしたらと期待したのだが、やはりテントの中だった。


昨夜はリオンと俺で不寝番をこなした。さすがにこの人数での警護となると厳しいものがある。最初は俺が番をしていたのだが、日付が変わる前にリオンが起きてきたので、そのまま番を変わった。それでも5時間くらいは眠れただろうか。


既にマルトさんとエメラちゃんで朝食の準備が始まっており、リオンは…どうやら木陰で仮眠中のようだ。


「おはよう」


「あ、ハヤトさん、おはようございます。」


「おはようございます、眠れましたか?」


朝食は、こねた小麦粉(?)を平たく焼いたものに、薄い塩味のスープ…朝は1杯のコーヒーから始まる隼人にとっては「何だかなぁ」と少々不満。だが、ここで生きていく以上はこれに慣れるしかない。いつかコーヒー豆をみつけるまでは…。


リオンを起こし朝食を済ませると、さっそく出発だ。ここから先は危険はほとんどないということで、俺はリオンの横に座り、この世界の「常識」をあれやこれやと教わった。ラノベ読者であれば、どういう常識か…きっとわかるであろう。故に(ry あと、リオンからは、ハチグリを倒した時の武器(機関銃)について聞かれたが、あちらの世界の武器と言うと納得してくれた。馬を操縦しているため、じっくりとは見れないが機関銃、小銃にはかなり興味を持ったようでチラチラと眺めていた。


途中、一度休憩をはさみ、昼食後はマルトさんの横でリオンからは聞けなかった「常識」の補充をしながらゆっくりを馬車を走らせる。隼人の時計で午後3時過ぎ、ようやく目的の町にたどりついた。この世界では大きくもなく、小さくもなくごくごくありふれた町だそうだ。マルトさん親子はこの町に店を構えているそうで、馬車は門を抜けると店へと直行した。ちなみに、門は、3m程度の石垣が延々と連なる(おそらくはこの町を囲んでいる)1か所にあり、門番らしき者はいるが平時はよほど不審な人物でない限りチェックを受けることはないらしい。ただし、町によっては身分を証明するものがなければ入れないところもあるとのこと。


「ハヤトさん、ご苦労様でした。おかげで、何とか商売にも支障なく助かりました。こちらがお礼です、受け取って下さい。」


「ありがとうございます、こちらに来て一文無しなんで、こちらこそ助かります。」


「それから、報酬についてはギルドでリオンさんが受け取るはずですから、そこで分配してもらって下さいね。この町に滞在されるようでしたら、いつでも遊びにきて下さい。エメラもずいぶんとなついてるみたいですし。」


「はい、当分何をするとかってこともないのでこの町にいると思います。とりあえずは金を稼がなきゃなので、冒険者でも始めてみようと思ってます。ところで、一つだけ聞いていいですか?」


「はい、何でしょう?」


「あの山を抜けるのに、随分と飛ばしてましたよね?いつもあんな感じなんですか?」


「いや、言いにくいことなんですが、今回仕入れた商品は領主様からの注文でして、普段なら余裕を持って護衛を雇い、あの山でも警戒を深めこそすれ、あんなに飛ばすことはありませんでした。けれど、今回は、領主様からいきなり納期を区切られ、十分な護衛の依頼もできないままの旅でしたので、あんな形になってしまいました。亡くなった冒険者の方には申し訳なく思っております。」


「まぁ、俺たちの世界でも下請は大手にずいぶん泣かされてるって話はあるけど、ここも大変だね。」


「そうですね、領主様の注文は絶対ですから…。ハヤトさんも、くれぐれも領主様の怒りに触れることはなさりませんよう、お気をつけ下さい。」


「そう言われると、いじりたくなるんだよなぁ、俺って。」


マルトさんは顔を青くして、注意してくれたが、まぁ、そんな偉い人なら俺と関わることもないだろうと軽く聞き流した。


「おい、そろそろ行こうぜ。」


リオンにせかされて、俺たちはギルドへと向かった。楽しみだ!魔力無限、属性何でもOKのチートは異世界小説の常識。受付の猫耳姉さんがフリーズしぃの、ギルド長が奥の応接間に来ぃの、ホールの冒険者たちが唖然としぃの…いやぁ、それを生でやれるのだからワクワクしないわけがない。


……………


「では、これがハヤト様のギルドカードとなります。ご確認ください。」


まず言おう。受付にエルフのお姉ちゃんも猫耳娘もいない!ごく普通のくたびれたリーマンっぽいあんちゃんと、会社ではおそらくお局様とでも呼ばれていそうなおばちゃんがいるだけ。


そして語ろう、俺のステータスについて。


魔力量=中の下、属性=水、スキル=癒し、絶対防御、3次元コピペ、レベル=3…何ということ…駆け出し冒険者そのまんま。当然ランクも一番下のFからのスタート…俺の無双が…俺の無双が…


うなだれ、ぶつぶつつぶやいていた俺の元へ、依頼達成の報酬を受け取ったリオンがやってきて、俺のカードを見て「まぁ、最初はそんなものだよ。ハヤトがどういうイメージを持ってたのか知らないが…」と慰めの言葉をかけてくれる。ちなみに、リオンのランクはC、一人前と認められるのがDだそうだから、そこそこの力はあるらしい。


「いやぁ、俺ってもっと強ぇ~って思ってたもんでな。考えてみれば魔法もまだ使えないし、しゃーないか。」


「いやいや、お前が倒したハチグリ、あれってCランクのパーティ8人かソロならAランク推奨の魔物だぜ?それを倒しちまうんだから、すぐにランクはあがるさ。あと、絶対防御と3次元コピペ…これは聞いたことがないぞ?もしかしたらユニークスキルかも知れん。」


「あ、それは受付のあんちゃんも不思議がってたよ。絶対防御ってのは何となくわかるんだが、コピペって何だってな。」


「で、何なんだ?」


「コピー&ペーストの略っつってもわかんねえやな。例えば、こっからここまでの文字を選ぶだろ?そして右クリックしてコピーを選択、適当な場所にペーストすると、選択した文字がそこに複写されるってわけだ。3次元ってことは、立体的なものにも対応できるってことなんだろうな。」


「………よくわからん、いやまったくわからん」


「だからだな、リオンのその槍と同じものがこのスキルを使えば、何もないところから出てくるって感じ?」


「おー、そいつはすげー、見てみたいぞ。だが、ここでは何だ、俺の宿に一緒に来るか?こんなところで報酬を分けるのも何だし。」


「あぁ、宿とか全然わかんないからリオンについていくよ。」


ユニークスキルと聞いて、無双不能のショックから少しばかり立ち直り、リオンの常宿へと向かうことにした。

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