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はじめての

おさらいしよう。

アタッカーとは、アタック、つまり攻撃的行為を主に担う兵のことである。

通常の兵は皆、剣や魔術などの攻撃手段を持っているが、アタッカーと呼ばれる兵たちの攻撃力はずば抜けている。防御魔法や回復、陽動魔法などは他の兵に任せて、とにかく相手へ与えるダメージを大きくすることに重きを置いている。戦場の花形だ。治癒魔法を主とするリスト家の人間で、アタッカーになった者は誰も居ない。


淡い水色の髪と瞳、という、完全にリスト家を体言する容姿のリヴは、居心地の悪さを感じながらも講義の場である練習場に来ていた。

同じ講義を受ける学生たちのうち、育ちの悪そうな、つまり不良っぽい男たちが修練場の端で大きな笑い声を上げていた。アタッカーを専攻している同級生。つまり、リヴの進路を変える決定的なあの日に出会った、あのお下品な男達だ。


その中に、ケル・ロアを見つけた。筋肉質で大きな体の彼は、不良たちの中心人物のようで、彼が何かおどけた様子でしゃべると、周りの者がワハハと下品な笑い声をあげて彼を小突いている。

リヴは、子供っぽくて嫌な感じだと思い彼らに冷たい視線を送ると、はた、とそのケル本人と目があった。驚いてぷいっと視線を逸らすと、周りにいた男たちがニヤリと意地悪に笑ってケルに何か言う。どうせ、リスト家のヒーラー?いやいやあれが偽リスト、とか何とか言ってるんでしょう、とリヴは半ば諦めたようにふんっと息をついた。


先日から始まった一年生の後期。リヴは専攻を治癒魔術師から、攻撃的術師に変更した。

今日は初の実技演習の講義。担当はケイン教授ではない。アタッカー専門のケルたちや、アタッカーとまではいかないが、攻撃魔法を主に使おうという他の学生達も居る。そこまで攻撃に特化していない講義である。


練習場に教授が入ってきた。講義が始まるのである。学生達は番号順に整列し、教授から今日の注意事項と指示を受けた。


「では最後に纏めですが、この講義では二人一組でペアを組み、連携することに重きを置きます。では、ペアを組んでください。」


途端にわいわいと学生達がざわめきだす。皆、気の合う者同士でペアを組み、教授のところへかけて行き名簿に記入している。リヴには寂しいことに、アタッカーの親しい者などいない。偽リストとして一線を引かれているので、積極的にこちらから「私と組みませんか?」と行くこともしない方が良いだろう。適当に人数であぶれた誰かと組もうと周りを見回す。


右を見て、左を見て、そして後ろを振り向くと、大きな影がそこにあった。身長差でリヴの視界には相手の胸しか見えなかった。

「おいお前。俺と組もうぜ。」

(……この声は。)

嫌な予感がして、ねっとりとした嫌味ったらしい視線で上を見上げると、予想通り、大柄で赤毛の人物がそこに居た。


「…どういうつもり?」

「はぁ? 何だよ、ブスのお前と組んでくれる奴なんて誰もいねえだろうから、俺が組んでやるって言ってんだよ。」

「………失礼な人。結構ですわ。」

ふいっとリヴはそっぽを向く。この人を負かそうと思って専攻を変えたのだ。一緒に組むなんてもってのほかだ。


と、ケルがリヴに話しかけている様子を見ていた他の女子学生が、くすくすと笑った。

「ちょっとケル。その子偽リストでヒーラーじゃないわよ!」

とたんにどっと周りの学生たちが笑う。

「…っ!」

こういう下品なものたちに何度も傷つけられてきたリヴは、カチンときた。しかし、言い返す言葉も見つからない。偽リストでヒーラーじゃない。それは本当のことだからだ。本当のことだから、こうやって専攻を変えたのだから。


そのとき、リヴの目の前の男があきれたように、大きな声をあげた。

「はぁ? お前バカか? アタッカーの講義にヒーラーが来るわけねーだろ! しかもアタッカー同士で組んで連携しろって言われてるのに、何で俺がヒーラーを選ぶと思うんだよ。」

笑っていた女子学生が、言い返されたことに忌々しそうに唇をかんだ。


リヴは目を丸くして言葉を失う。何なのだこのケル・ロアという男は。意地悪で嫌な奴だと思ったのに、急に味方してくるなんて、調子が狂ってしまう。

ケルは何事もなかったかのように、リヴに視線を戻した。

「おーい、リヴ・リン。お前氷魔法が得意なんだろ? 俺は土魔法、植物系と体術が得意だ。俺と組もうぜ。」

絶句してケル・ロアの顔を見る。からかいに来たのだと思ったのに、本気でペアに誘いに来てくれたのか。信じられない。だって自分は偽リストだ。

どうやら睨んでるように見えたらしく、ケル・ロアが唇を尖らせて、勝手に語りだす。


「いやさ、俺もバフォーエン家の養子だから偽バフォーエンなんだよね。そういわれるの嫌だから、家名なしのケル・ロアで通してるんだよ。お前もそうしろよ、リヴ・リン。」

「リヴ・リン?」

勝手に家名を外して呼ばれて、リヴは悪い気がしなかった。

家名の関係ないリヴ、という一人の人間になった初めての瞬間、なのかもしれない。色々な気持ちがごちゃまぜになって黙ったままのリヴに、ケル・ロアはぷいっと顔を背けて、ぶっきらぼうに

「おい、リヴ・リン! 俺と組むのか組まないのか、どっちだよ!」

と大声で叫んだ。

「はぁ! や、ちょっと何なの!?」

「この俺様が誘ってやってるんだ、いいから組めよ!」

ケルの大声に、取り巻きの周りの男たちがドッと笑ったので、リヴは真っ赤になって狼狽して、早くやめてとばかりに叫んだ。

「わかった、わかったから! 組みますからやめてちょうだい!」

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