表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/85

三人との雑談

「知っていたらで良いのだけれど。」

貰ったばかりのクッキーと紅茶を口にしていたリヴが、少し真剣な目で三人を見つめた。ちなみにバートンは例のロールケーキ、リードとウェスパーは紅茶だけを口にしている。

「何?」

すぐ反応したリードに、うん、と返事をして、少し言葉を詰まらせた後、リヴが顔を上げる。

「私を助けてくれたのって、どなたでしたの? ケイン教授? ケルには何だか悪くて聞けなくって。」

「ああ、だよねー。ケルさん、結構へこんでたみたいだし。」

「うんうん。さすがリヴちん。判ってるなー。」

話の筋が違う方に向きかけたのを、ウェスパーが正す。

「俺も気になってケイン教授に聞いたんだけどさ。」

リヴは身を乗り出してウェスパーを見た。

「公式には教授陣ってことになってるらしいんだけど、実際のところは軍人部隊らしいんだよ。」

「軍人? 公式には、って?」

リヴの頭の上に、ハテナマークが大量に飛び出た。

「うーん何かね、任務であの辺りを丁度通りかかった軍人の部隊があって、強い魔力を感じたから寄り道して、クイーンをぶっ倒してくれたんだって。で、任務途中の寄り道だから内密にして欲しい、って。」

「へえ…? そうだったの…。」

そんな偶然があるのだろうか、とも思ったが、あの状況から生きて帰還できたことが何よりの証拠である。

リヴは偶然に感謝しながら、おぼろげな記憶の中に確かに存在する、女の子の声や治癒魔法の暖かさを思い出していた。

(これから私が飛び込もうとしている帝国軍という世界に、あの子がいるのね。)

治癒魔法の名門である家に育ったリヴには判る。

あの声からして、彼女はリヴとそう歳は変わらないだろう。そして、姉や父よりも強い治癒の力を持っていて、軍の中ですでに活躍しているのだ。リヴたちが逃げるしかなかったクイーンを、ものともしない部隊の一員として。

「軍人、か。」

ぽつりと呟いたリヴを、リードが心配そうに見る。

「リヴちん? 大丈夫?」

「あ、うん。ごめんなさい。」

顔をあげてニコリとリヴが笑った。

「なんか、実感しちゃった。帝国大出身の軍人ってエリートってイメージだったけれど、それだけじゃダメなのよ。クイーンアントに苦戦してるようじゃ、アタッカーとして使い物にならないわ。」

私もまだまだね!と息巻くリヴには、ウェスパーの、いやいやあの任務は軍人の中でもかなりの上級者向けらしくて、という言葉は届かない。

バートンとリードが、あちゃーと頭をかかえた。

「あーあ、真面目リヴちん発動、だな。」

「ウェスパーのバカ。俺、知らねー。」

「お、おまえら!」

リヴがこういう思考回路に陥った時に取る行動を、三人はよく知っている。ケルを突き放して、自分磨きに没頭してしまうのだ。不機嫌になったケルの相手はいつも自分達三人で、へとへとになるまで訓練に付き合わされたりと、とにかくたちが悪い。

「はぁーっ…。ケルさんの照れ屋が何とかなればなぁ。」

「うんうん、無理やりキスとかしちゃえば、ぐぐっと距離縮まると思うんだけど。」

ウェスパーとバートンのため息まじりの呟きに、ベッドの上のリヴが盛大に咳き込んだので、三人が目を丸くしてそれを見た。

「へ、変なこと言わないでちょうだい!二人とも嫌いよ!」

真っ赤な顔で怒ったリヴに、慌てて謝る二人の後ろで、リードがこっそり笑いながら意味深に呟いた。

「なーんだ。ケルさん、ちゃっかりやってんじゃん。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ