表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/85

失礼な奴

医務室に向かうと、すぐに常駐しているヒーラーが出てきて、ケルの手の包帯を解いた。その常駐ヒーラーはケルに、治癒魔術が使える人間が近くに居なかったのは不幸だったけれど、この初期手当てはベストだ、彼女が居て、貴方運がよかったわね、と言った。



「あの…」

「なに?」


ものの1分で治療が完了したので、ケイン教授が来るのを待つこともないということになり、二人は医務室から練習場へ戻る途中である。


「…ごめんなさい。」

「は?」


リヴに唐突に謝られたケルは、ぴたりと足を止めてリヴに視線をよこした。背の高い彼から見られると、自然に見下ろされる形になる。


「何で謝るんだよ。」

「だって…、私、本当に偽リストですもの。私が治癒魔術が使えたら、その場で治せたわ。だから、ごめんなさい。」

「……。」


リヴの言葉に、ケルは押し黙った。リヴとしては、ヒーラーの名家に生まれたのに力を持たず、目の前で怪我をした者がいるのに応急処置しか出来ないだなんて、恥でしかなかった。責められて当然のことだった。


しゅん、と下を向いていたリヴの頭が、ぱしっと何かに掴まれた。それがケルの大きな手だと気づいたのは、その大きな手がバスケットボールを握るかのように、リヴの頭をぐっと握って上向かされてからだった。

無理やり上を向かされたリヴの顔には、憎憎しげに自分を睨みつける男の顔。やはり、ヒーラーでないリヴなど怒りの対象になるのだろう。


「このブス!」

突如投げかけられた言葉に、リヴは混乱した。

「はっ?」

「つまんねーこと言いやがって。ほんとブスだな!」

「な、なによ! なによブスって!」


美人揃いのリスト家に生まれて、特別美人だとは思っていないけれど、ブスと言われるほど酷い顔だと思ったことは無い。そんなこと、今日始めてあったこの男に言われたくない。


「ブスだからブスって言ってんだよ! お前、何勘違いしてんだ? 自分が上手くいかないこと全部、ヒーラーじゃないとか偽リストとかのせいにしてるだろ!」

「なっ! ……!」


一瞬怒りが湧いたが、リヴはすぐ押し黙る。痛いところを突かれた。言われてみれば、そうなのかもしれない、という考えが頭によぎる。

ケルは続ける。


「ハッ! なっさけねぇな。 初めてあった不良の俺にこんなこと言われて、何も言い返せねえのかよ! 偽リストだ? お前のあだ名はブス! ブスで十分!」


ブス!と言い放つと同時に、ケルの手が乱暴にリヴの頭から離れた。リヴは後ろにつんのめりそうになりながら、何とか体制を立て直す。


「な、なによ!」


すでに歩いて向こうの方に行っているケルに向かって叫ぶと、ケルはニヤリと笑いながら振り向いた。


「悔しかったらアタッカー専攻して、俺を負かしてみろよ。ま、その気取った鼻っ柱へし折って、こてんぱんにのしてやるけどな! じゃあな、ブース!」


ハハハと笑いながら去っていく失礼な男の背中を睨みつけながら、リヴは怒りにぶるぶると震えた。



「なによ…なによアイツ! アイツ!! なんて失礼な奴なの!!」



しばらくその場で悪態をついていたリヴは、ぶんっと勢い良く振り向くと、どしんどしんと足音をたてながらどこかへ向かっていく。

すれ違った何人かの学生が、リヴのあまりの剣幕に驚いて振り向いたが、そんなことなど気にならなかった。あっという間にリヴ担当の治癒魔法の教授の部屋に着いたリヴは、紅茶のカップを片手に驚きに固まる教授の執務机に、どん!と勢い良く両手を突いた。



「教授! 専攻を変更いたしますわ! わたくし、わたくしアタッカーになります!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ