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四人

「リヴ、こっちだ。」

遠くから背の高いケルがおいでおいでをしているので、皆に二言三言かけてからそちらへ向かう。人混みを掻き分けてようやく到着し、リヴは背の高いケルの顔を見上げた。

二人で目標を定めて以来、ケルはリヴのことをきちんと名前で呼ぶようになった。けじめをつけたのだろうが、その変化にリヴは気持ちが引き締まったり、嬉しかったりと内心落ち着かなかったりする。

「ケル、同じ班ね。」

そう言って笑いかければ、だな、と言いながらニカリとケルも笑う。

「んで、面子見て気付いていると思うけど、どうやら俺たちは作為的なものがある班らしい。教授が話があるって。」

あっちだと言って研究室の建家を指差したケルに、リヴはじとりとした視線を投げた。

「まさかここまで来て、班分けの時に私のことをヒーラーと間違えました的失敗なんてこと……。」

ケルがクッと笑う。

「まじでそんなんだったら、お前、氷魔法ぶちかまして暴れてやれよ。氷漬けにされりゃ、さすがにリヴがアタッカーだと判るだろ。」

リヴはぶんっと勢いよくケルを見上げて、

「……いい考えですわ。姉さま仕込みの技の数々を披露するチャンスですわね!」

めずらしくケルの冷やかしに乗る。


いつもなら苦言を投げつけるところだが、さすがに任務の最中に大怪我を負ったりすれば命の危険すらある。ヒーラーの存在価値はよく解っているのだ。

ケルと同じ班というのは嬉しいが、全体を見通さなければ。安易な判断は禁物だとリヴは自分を戒める。

そんなリヴにニイッと歯を見せて微笑んだあと、ケルが行こうと促した。



「しかめ面も美しいよ、リヴ。」

突如左手を取られ、ビクリとしてそちらを見れば、黒髪長髪の美男子、エドワードがいた。

彼は腰を折り曲げ、リヴの左手に恭しく額を当てている。

「うわ、出たガッカリ王子!」

ケルがこめかみをひきつらせながら、ゆっくりした、かつ無駄のない動きで引き剥がしにかかる。

そんな様子を笑顔で見つめるレイアも隣にいる。

「レイアも、笑ってねぇでエドを止めろよ。」

チッと舌打ちしながら睨んだケルに、レイアは笑顔を返す。

「何で? 面白いのに。」

ケルが一瞬、固まった。

「…………あー、わかった、よーくわかりました。」

レイアが笑顔でうん、と返事をする。ケルは額に手を当てて、カーっと唸った。その二人のやりとりが面白くて、リヴは右手を口に当てクスクスと笑った。


「じゃあリヴ、ラウンジで待ってるから。」

バチンとウインクを決めたエドワードが、額の横に手を当てる、アイゼンバーグ式の敬礼をする。リヴは微笑んで、胸の前に拳を当てる自国の、つまり帝国式の敬礼を返した。

「チェ、帝国式かよ、振られたー。」

間延びした声で言いながら、エドワードが頭の後ろで手を組みつつ歩き出す。そのエドワードにレイアは続かず、リヴ達と共に彼の後ろ姿を見送っていた。


「レイア、行かなくてよろしいの?」

そんなレイアに声をかければ、レイアは、ああと爽やかに微笑む。

「教授に呼ばれたのはエド以外の俺たち三人。」

「そうなの?」

レイアとエドワードの良血二人組はいつもセットという気がしていたリヴは、不思議に思ってレイアを見つめる。エドワードの後姿を見送ったレイアが、リヴに視線を移した。

「行こうか。」

その微笑みが少し寂しそうに見えた気がして、リヴはパチパチと瞬きをする。

しかし次の瞬間には、いつもの落ち着いた貴族の青年の顔になっていて、リヴは少しだけレイアに不思議なものを感じながら、後に続いたのだった。

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