自主練習
窮屈な冬休みが終わり、大学に学生たちが戻ってくる。
リヴはキャンパスですれ違う知り合いの貴族令嬢たちと新年の挨拶を交わしつつ、大きな荷物を抱えて練習場へ向かう。
アタッカーとはいえ属性の違うケルと被るのは、混合の実技講義だけだった。一週間に一度しかないその講義が、リヴは少し楽しみだった。今日はその、ケルと一緒の講義の日だ。
前の時間は何も講義を取って居ないので、早めに練習場に入った。皆より遅れてアタッカー専攻になったリヴは、他の学生に比べて経験面が乏しいので、その分、沢山練習して補いたいのだ。
大きな荷物鞄の中から、新しいローブとブーツを取り出す。入学時に父から送られたヒーラー用のローブは裾が長くゆったりとしていて、前に出て戦うアタッカーには不向きと判断してやめた。軍のヒーラーとして活躍している一番上の姉が大学に入る際に、父が有名デザイナーに特注したというそれは、貴族令嬢にぴったりの、美しくて洗練されたデザインで。リヴもこのローブが好きだったのだけれど。
鏡に映った自分に、リヴは話しかけた。
「ヒーラーじゃないってウジウジしているわたくしとは、これでサヨナラですわ。」
新しいローブは、家族や父に何も相談せず、勝手に自分で選んだものだ。スカートの丈は動きやすいように短くし、激しく動き回っても下着が丸見えにならぬよう、スパッツを穿いている。防御力と機動性を考えて、ニーハイソックスと、あまり踵の高くなく動きやすいニーハイのブーツをあわせた。上着はぴったりとした七部丈のカットソーに、袖がふんわりとしていて、手首のところできゅっと絞った上着を羽織っている。色は白、黒、水色を基調とした。
流れる水のごとく、というリスト家特有の水色の巻き毛は、一部をきゅっと後頭部でまとめ、ハーフアップに。かなり活発な印象に変わるので家族が何か言うかもしれないが、髪が邪魔になって動きが遅れるなんて、アタッカーとして失格だから問題ない。
最後に、今までの半分の長さもない短い杖を取り出した。ヒーラー用にあつらえられた杖は、自分の身長以上もある長い豪華な杓上形だったが、片手で持って身軽に振り回せるバトンのようなものにした。ベルトの後ろにさっと刺して固定できるようにしたので、杖なしで魔術行使も出来るし、持ち運びにも便利だ。
出来上がりを更衣室の鏡で確認する。自分で言うのも何だが、結構さまになっている。
気分一新で外に出ると、まだ誰もいない練習場で、リヴは動きの練習を始めた。
リヴは杖を取り出して、動きを確認する。冬休み前に、ケルが必殺技と称して練習している技があったので、あの技にあわせての動きを色々考えてきた。
(こうきたら、こう。こっちの場合はこう、で…)
ぶつぶつと口の中で呟きながら、何もない空間に向かって杖を振るう。たまに練習場の端に置いた荷物に駆け寄って、休みの間に色々書いたノートを見て動きを確認する。
ノートを鞄の上に置くと、リヴは練習場の中央に戻った。そうして、再び練習を始める。