第五話 優子と嬬離悦吐
優子と嬬離悦吐の出会いとは…
「ぢゃあ明日ねー!!」
手をふりながら私は音色と別れた。
今日は4歳年の離れたお兄ちゃんが帰省する。
お兄ちゃんは昔から車やバイクが好きだった。
今では気の良い修理屋の兄ちゃんだが、昔は名の知れた暴走族の総長だったのだ。
小さい頃からお兄ちゃん子だった私は、よく族の集会にも連れて行ってもらっていた。
そこで私と音色は出会った。
中学2年の夏休み。
私はいつものようにお兄ちゃんについて集会に行っていた。
お兄ちゃんの周りの人達も私とは顔見知りになっていたので私はいつも通りお兄ちゃんと話をしていたのだ。
「今日はお前に会わせたい奴がいんだ」
誰だろう??彼女とはこの間別れたばっかりだし…訳がわからず黙っていると
「おーい!!音色!!」
お兄ちゃんが誰かを呼んだ。
私は呼ばれて来た女の子を見て呆然とした。
金色の髪に黒の特効服。
真っ白な肌にブルーのカラコンが異様によく似合う。
この町に不釣り合いな容姿をした女の子。
「コンバンワ」
音色と呼ばれる女の子は優しい日溜まりのような微笑みを浮かべて挨拶をした。
「あ…コンバンワ」
なんて綺麗な女の子なんだろう。
音色は私と同い年で最近この近くに引っ越してきたらしい。
「良い子だろ??刺繍屋で仲良くなったんだ!!」
お兄ちゃんは自慢気に言う。
どうやら同い年の友達がほとんどいない私を密かに心配していたらしい。これだから私はブラコンになるんだ。
「お前達友達いねぇ同士だから仲良くなれるだろ!!」
滅茶苦茶な理由に呆れながらも、なんだか波長があった私と音色はすぐに打ち解けたのだった。
「音色ー!!なんか呼んでるぜ」
突然音色が呼ばれた。
「ちょっと行ってくるわ」
音色はやっぱり極上の笑みを浮かべて呼ばれた方に走って行った。
私は一人になったので煙草を一本吸ってお兄ちゃんの元に戻る。
「なんだ優子。音色にふられたか!!」
お兄ちゃんは悪戯っ子のように笑った。
その瞬間だった。
「おい賢!!(←お兄ちゃんの名前)喧嘩してんぞ!!」
お兄ちゃんの仲良しの靖くんが走って来た。
私とお兄ちゃんは群がる見物人達をかきわけて輪の中心に入る。
そこにいたのは、お兄ちゃんの元カノの涼子ちゃんと音色だった。
「お前達何してんだ!!」
お兄ちゃんが怒鳴る。
お兄ちゃんは余計な喧嘩が嫌いだ。曲がったことは絶対に許さない。
「賢は黙っててよ!!全部あんたのせいなんだから!!」
涼子ちゃんは半年前からお兄ちゃんと付き合っていた。
私にとって綺麗で頼りになる姉貴的存在だった。
しかし涼子ちゃんはお兄ちゃんを好きすぎて変わってしまった。
自分以外の女と話すことを許さず、少しでも話しているのを見かけると集団リンチを繰り返した。
そして、お兄ちゃんは別れた。
涼子ちゃんは拒否していたらしいが、お兄ちゃんは昔の涼子ちゃんが好きだったけど今の涼子ちゃんは大嫌いだと言った。
ふられた後の涼子ちゃんは暴力団の男と付き合ってヤケになって薬にも手を出していた。
「私知ってんだから!!賢が私をふったのは、こいつのせいでしょ!!」
涼子ちゃんは血走った目で音色を睨んだ。
「ふざけんじゃねぇ!!お前が変わったからだっつったろ!!」
しかし涼子ちゃんは聞く耳を持たない。
「タイマンはりな!!」
涼子ちゃんはタイマンで負け知らずだ。
まだ引っ越してきたばかりの音色が勝てるわけがない。しかし音色は笑って言った。
「いーよ」
それは先程までとは違う冷たい微笑みだった。
「特別に素手ゴロでタイマンだからよ」
涼子ちゃんはかまえた。
「わかった」
音色は顔色1つ変えずに立ったままだ。
「てめぇぶっ殺してやるよ」
涼子ちゃんは音色に殴りかかった。
しかし音色は軽くかわすと涼子ちゃんの髪をつかむ。
そのまま前かがみになる涼子ちゃんに膝蹴りをくらわせた。
はい!!今回は女二人がどうして親友になったのかを書きました!!どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m