第一話 嬬離悦吐の憂鬱
香坂音色は男子達の中でジュリエットと呼ばれる。学校一の美女だ。しかし特定の彼氏を作らない。それは・・・??
青い空、白い雲、蝉の声、隣の教室からは授業をしている声が聞こえる。今日は夏日和だ。
そして今、私は女子トイレにいる。通っている高校のトイレ。
「はぁ・・・うっ・・・おえぇぇぇぇ」
トイレ中に嗚咽が響いた。私は今、食後のゲロをしている。(汚くてごめんなさい)
そう、私は拒食症である。
拒食症といっても何も食べられない訳ではない。中学生の時に胃潰瘍になってから、吐き癖がついてしまったのだ。今では一流ゲロリストである。
吐くとスッキリする。昼食後は特にかかせない。
私は手を洗うと茶色よりも金色に近い髪をなおして自分の教室に戻った。
ガラッ 私が扉を開けると何人かの生徒がこっちを見る。
「いちいち見てんじゃねぇよ・・・」
私が呟くとみんな一斉に顔を黒板に戻す。怖いなら見んなっつの。
一番仲の良い隣の席の高田優子はクスクスと笑っている。
いや、お前はちょっとは心配しろよ。まぁ優子らしいけど。
私は黙って席に着いた。
「音色ぉ・・・いきなりキレてんじゃねぇよ」
優子は相変わらず笑っている。この笑い上戸。音色というのは私の名前。フルネ−ムは香坂音色。親が音楽家だから単純に決めたそうだ。
「うっせ!!笑いすぎだよバ−カ」
私も優子につられて笑いながら言った。
「なぁに笑ってんの??音色ちゃん♪」
後ろから聞き心地の良い低めの声がした。私から笑顔が消える。
声の主は越智聖人だ。通称:ロミオ(露美悪←私の中ではこんな感じ)。私はコイツが嫌いだ。越智は何もしないでも頭が良くて背は高くて運動神経抜群でバスケ部のホ−プ(幽霊部員のくせに)で、おまけにとびきり美形だ。女の子全員に優しくて、ヤンキ−のくせに暴力的じゃない。話術も巧みで体からは何故か薔薇の香りがする(らしい)家は代々医者の家系で大金持ち。モテるのに特定の彼女を作らない。
パ−フェクトな人間に誰もが夢中だ。私からしたら、ただの軟派で軽薄でチャラいボンボン。
席替えで運悪く越智の前の席になった時は目の前が真っ暗だった。そして今も最悪。
「慣れ慣れしく呼んでんじゃねぇよ。」
私が言うと越智は形の良い唇の端を上げてニッと笑う。
「んな冷たいコト言うなってぇ!!僕達お友達でしょ??」
微笑みを浮かべて私を見つめる。これは通称キラ−スマイルと呼ばれている。んなもん効くかっつの。
「キモイんだよ。話しかけてくんな。」
私は、それだけ言って前を向いた。本当に不愉快。私が密かに憧れている尾崎龍斗と越智が親友なのが一番不愉快。信じらんない。尾崎くんは悪戯っ子みたいなキラキラした目に笑顔が可愛い。高校の入学式で一目惚れしたのだ。
私は尾崎くんの笑顔を思い浮かべた。思わず頬が緩む。
ふと隣の席の優子を見ると、ニヤニヤしながらコッチを見ていた。
「見てんなよバカ」
私が消しゴムのカスを投げると優子のおでこに命中した。
その光景に私は必死で声を抑えて笑う。
「てめぇ笑ってんじゃねぇぞコラ」
優子は消しゴムを丸々一個投げてきた。
10分後、私達はペンケ−スの中の物を全て投げ終えてしまった。
優子と一緒にいると、どうしてこうバカなことばかりしてしまうのか。
私は優子と笑い合いながら、でもこんなの尾崎くんに見せられないなぁと痛感するのだった。
はぁい!!花想と書いてカノンです。コンニチワ。コメディの連載もさせて頂いております。・・・が、恋愛小説というのを書きたくて・・・書いてしまいました。はい。こんなんでスイマセン。読んでいただいて感謝です。こんなアタシに感想またはご意見をよろしくお願いいたします。そして、これからもどうぞ読んでやってください。