二度の「・・・・・・・・・は?」
しょうもない話です。
どこへ行ってしまったんだ・・・・!
僕は顔を蒼白させ、心の中で叫んでいた。
何故こんなことになってしまったんだ・・・・!
ついさっきまで僕の隣にいたはずなのに!隣で語り笑い合っていたはずなのに!
どうして!
彼女は一体どこに行ってしまったんだ!
そもそもの始まりはまず僕が家に帰宅したところからである。僕は部活が終わるとすぐに鞄を持ち、靴箱まで駆け寄った。さすがにここは田舎の高校なので、靴箱が少なくそして空間が狭い。自分の出席番号の靴入れに駆け寄り、無造作に靴を引っ張り出す。一年愛用シューズなのでボロくなって、布がよれよれになっている。靴を履くのに少々手間はかかったが、無事に履くことができた。はやる気持ちを胸に走り出す。家までは徒歩で五分。走ればもっと早くに着くはずだ。そう思い僕はさらに足の動かすスピードを速める。今日は、早く家に着いてやるんだ!
僕の家には彼女が待っている。僕のことを待っていてくれている。そのことを彼女に言ったら、そんなことないんだから!とでも言わんばかりに体を別のところに向けて、顔を隠してしまうけれども。それでも彼女は待っていてくれる。僕の胸はときめいていた。
あぁ、早く帰りたい!
会話を交わしたい!
僕は彼女のことが好きだ。どうしようもないくらいに好きで、愛しているといっても過言ではないくらい。彼女の仕草、無表情ながらも可愛らしい顔、僕にしか見せないそっけない中にある温かい素の性格もすべてが好きなんだ。そんな彼女と早く会話が交わしたい。隣で笑い合っていたい。彼女とのひとときがいつも待ち遠しかった。
家に帰る。ただいまー、と適当にドアを開けて言い、鞄を放り投げて二階にある自分の部屋に急ぐ。あらあら、急いじゃって、そんなにも好きなのね、と母親はリビングから微笑ましいように言ったが僕はそんなのに構う余裕などなく、僕の部屋にいる彼女に一刻も早く会いたかった。
ガチャッ
勢いよくドアを開く。部屋に入った僕の視線の先にはやはり、彼女がいた。小さく座るようにして、待っていてくれた。それだけでも僕は嬉しい気持ちでいっぱいになる。彼女のところに笑顔で駆け寄る。そしてやっと僕の待ちに待った彼女との幸せな時間が始まった。
それから十分後。
僕は彼女との会話を一時的に止めて、トイレに行っていた。学校で彼女のことを考えるあまり、トイレに行くのを忘れていたのだ。トイレに行ってから、一息つく。さぁ彼女を長いこと待たせるわけにはいかない。早く帰らなきゃ。二階に続く階段を駆け上り、自室の扉を開く。
「ただい、ま・・・・・」
しかし僕が顔を向けたそこには、何もいなかった。
彼女がどこか消えていた。
先ほどまでいたところにはいなく、姿が消えた。
僕は顔面蒼白になる。そんな・・・!彼女は一体どこに・・・・!?
不安の気持ちが溢れだし、必死になって彼女を捜す。まだそんなに遠くにはいないはずだ!懸命に手を動かし、頭も回転させる。部屋中探し回ったが、彼女はどこにもいなかった。くそっ、一体どうしたら・・・!
僕は階段を駆け下り、一階のリビングにいる母親に声をかける。
「なぁ母さん、彼女はどこにいったか知らないか!?」
半ば怒鳴る口調。母親はちょっと面食らった顔をしたが、すぐに事情を察し、考えるのを手伝ってくれる。そして母親は手を顔に添えて、こう言った。
「ポチでしょ?ポチならこのリビングにいるかもしれないわ」
*
母親の言葉を信じ、俺は懸命になってゴミ箱の中やダンボールの中を調べた。ゴミ箱をひっくり返して中身を出してみる。しかしそこには僕の望んでいる姿はなかった。そんな!ここにいると思ったのに!僕は絶望の淵に立たされたような気分になる。
やはりトイレという短い時間だったとしても、目を離すべきではなかった!
彼女のそばから離れてはいけなかった!
ゲージから外に出してはならなかった!
僕の所為で彼女が・・・・!
悔やんでも悔やみきれない。彼女は狭くて人間が通らないところにでも入ってしまう。そんなことになってしまったら探すのが困難になる。ポチを見つけづらくなる。早く見つけ出さないと!
ポチがたとえ人間じゃなくったって、僕の愛は変わらない。好きなんだ。一緒にいたいんだ。僕が手を差し出すと、ひょいと手をそこに置く。僕が喋りかけると、彼女は口を開いて鳴く。動物だったとしても、意思疎通をすることはできるんだ!大事な大事な僕の女の子なんだ!ポチを侮辱するなんて、許さない!
部屋の隅々を回り、僕は見落としているところはないかと歩きながら確認をする。そして台所の端のところまでやって来たとき。
「あ・・・・・」
僕はそこで、愛しの彼女の姿を見つけることができた。彼女は端の方に、小さく丸まるようにして座っていた。そのいつもと変わらぬ姿を見て、僕の口からは安堵の息が洩れる。よかった、無事だったんだ。僕の緊張の糸が途切れ、その場に座り込む。
よかった。
ほんとうによかった。
僕はそこに座って僕を円らな瞳で見つめている彼女に手を伸ばした。彼女は僕をじっと見る。そして数秒後。それに彼女は応えてくれた。
僕の大切な大切な緑色をした小さいカエルのポチは、僕の手のひらにちょこんと乗った。
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