ギャルまじパネェっすわ!!
朝起きたら、母がギャルになっていた。
嫌な予感しかしない。
「ねぇまぢ起きて〜、ヤバっ我が娘ながら眠り深すぎーまぢうける」
体をガタガタ揺らされてそろそろ首が折れてあの世に逝ってしまいそうなのでさすがに起きようと体を起こす。
「え、ママ。何その格好。」
衝撃のあまり眠気はなくなったが、晴れやかな気分って訳でもない。
この目の前の光景が19年生きた私の目を鮮やかな色で刺してきた。
「えーまじなんなん、起きて一発目それ〜?まじウケるんだけど」
これは、笑うべきなのか?
「ははは、おはよう。」
乾いた笑いが口からこぼれる。
「オハヨー、今日入学式っしょ?遅刻まじウケる〜、てかこんなとこで寝て体大丈夫なのかよ、若いってまじパネェわ。」
ソファを指さしてケラケラ笑っているこの人物は母だ。
現実を直視できないがこれは私の母である。
白いTシャツに蛍光イエローの短パンを身に纏い、爪には10cmはあるジェルネイルを施しているこのまつ毛バサバサ生足女は私の母である。
「また、なんでそんな格好なの?私夢でも見てるんじゃないかってまだ疑ってるんだけど。」
ダイニングチェアに三角座りで腰掛けトーストを食べながらそう問いかけると
「まぢ気分っていうかー、そういう事もあるっしょ!」
ねぇよ。ねぇし。そのウインクをやめろ。
まぁこれも仕方ないことなのかもしれない。
私の大学入学を機に私の両親は離婚した。
私には方向性の違いだってバンドの解散理由みたいなことを聞かされていた。
美容代を渡しているんだから、清潔感のある服に綺麗なスタイルで、俺の隣にふさわしい女でいろと父はよく母に言っていた。
家事に似合わない綺麗な服を着て、その上にエプロンをつけた姿で、料理をして洗濯をして掃除をする。
そんな母の艶やかな肌の奥には、いつも陰があった。
父の元を離れてしたかったことが、ギャルになることなら私はそれでいいと思う。
母のここまで晴れやかで幸せそうな顔は今まで見たことがない。
「ママ、その姿とっても似合ってるよ。」
ギャルになった母の服装には母のスタイル維持の努力が詰まっていて私にはすごく綺麗に見えた。
「ありがと〜。え、盛れてるっしょ!てか、入学式やばくね?車で送ろか?」
この母を連れて大学に行くのは、さすがに御免なので
「ううん、大丈夫!入学式は、一人で行くから!
ここまで育ててくれてありがとう。私、大学生になります!」
そう言い残し、新品のスーツを身にまとった私は家を飛び出した。
あまりにも気分が良かったので
「ギャルまじパネェっすわ!!」
そう叫んでおいた。
ギャルまじパネェ……。幸あれですねぇ。




