好きな人
この世界は愛であふれていて、美しい。周りを見たら、愛らしい人。愛らしいもの。そんな世界で、私は愛を知り、恋をした。
「今日から学校、めんどくさ。クラスも変わっちゃうし。奈々と変わっちゃったら、どうしよう。」
新学期で、休み開けの学校が、一番きつい。つい、奈々に愚痴る。奈々も苦笑して頷いてくれた。
「もう。沙羅ちゃんったら。みんなそうだよ。わたしも、沙羅ちゃんとクラス変わっちゃったらさみしいもん。」
笑いかけてくれた奈々の笑顔が、かわいくて、愛らしくてとびつく。
「わ。沙羅ちゃん~?怒こっちゃうぞ」
そんな怒り顔もかわいくてわらった。
「ごめんごめん。あまりにもかわいくて愛らしかったから。」
奈々から離れて、片目をつぶり、謝る。
「もう。全然思ってないでしょ。あーあ。髪、形崩れちゃった。どうしてくれようか。」
奈々はわざとらしく髪をいじりながらこちらをちらちら見る。
「はい。私が綺麗に戻します。」
びしっと姿勢を正して、奈々の前に立つ。奈々もそれに便乗して、姿勢を正し。頷く。
「うむ。くるしゅうない。」
ブッ。つい吹き出してしまった。奈々に、ぜんぜん、合ってない。気付けば奈々も一緒になって笑っていた。ふと見上げた空は綺麗で、美しかった。
もうやだ。さっき美しいと思った空は、何だったのだろう。今の私には、能天気そうにのんびりしてる腹立つ奴にしか見えないんだけど。
「大丈夫?なんか、大丈夫そうには見えないんだけど。」
机でうつぶせになっていると、誰かが声をかけてきた。まあ、誰でもいい。とにかく今は、話を聞いてほしい。
「全然大丈夫じゃないもの。新学期そうそう、遅刻しそうになっちゃうし、奈々とは、あ、親友ね。とクラスが離れちゃうし・・・」
そこまで言ってから気付いた。この人、誰?
「それは・・・大変だったね」
ていうか、優し!知らない女子の愚痴、聞いてくれるだけじゃなくて。相槌もうってくれて。
「・・・優しいですね。」
気付いたら、口にしていた。
「ははは。ありがと。・・・ん?なんで急に敬語?あ、僕のこと、知らなかったからかな。転校してきたんだよ。てわけで、今日からよろしくね。隣の席だし。」
そういった男の子は、少しかっこよく見えた。・・・いや、実際に顔立ちは綺麗だけどね?でも、そういうことじゃなくて。まあいいや。とにかく、その男の子のおかげで、元気が戻ってきた
「うん。よろしく。そんで、話、聞いてくれてありがと!」
「っ!べつに、そんなお礼言われることはしてないよ。」
なんだか、少しそっけなくなった気がする。ん~?不思議に思ってじっと見つめる。少し耳が赤くなっている。ははーん。さては、照れたんだな。かわいいじゃんか。にやにやしながら見つめてたら、少し怪訝な目で見られたので、元に戻す。
「あ、名前言うの忘れてた。私は沙羅。だから、沙羅って呼んでね。」
「沙羅。ね。オッケー。いい名前。僕は悠。悠って呼んでよ?」
少しおどける彼はさっきよりもかっこよくて、ドキッとした。そして、どこか、懐かしいような・・・
「それ、もう命令じゃん」
私がくすりと笑うと、悠も笑ってくれて、私の心に残った。
「おおーい。ラブコメ展開はおおいに結構だが、今はやめてくれ。」
いつの間にか先生が来ていて、みんなも揃っていた。さっきの先生の言葉に、みんな笑っている。・・・これもある意味、私の心に残った。
「奈々~。もう、朝から嫌なんだけど。みんなに笑われたし。」
昼休みになってすぐ、奈々のクラスにいって、奈々に抱き着く。
「沙羅ちゃん。なにやったの?」
なんだか本気で心配されてる模様。確かに私がそういったんだけど、こうもマジ顔だと、どんだけ私の信頼度がないかをわからされる・・・
「隣の席の男子と話してたら、いつの間にか先生が来ていて、からかわれた。」
言ったとたんに、奈々にガシッと肩を捕まれて、向き直る。いつに無く真剣な顔。
「ど、どうしたの。奈々?」
ニマッと奈々がわらった。
「ようやく沙羅ちゃんにも春が来たのね。いっつも男子と喧嘩ばっかだから、心配してたんだよ?喧嘩してない時はだいたい、ろくでもない人に告白されてる時だし。沙羅ちゃん、かわいいから。」
「か、かわいいってそんなあ。奈々のほうがかわいいってばあ。・・・ん?私にも春が来たって言ったよね。私と悠はそんなんじゃないよ?」
すぐに否定するが、奈々はそんなのお構いなしに続ける。
「えーー!沙羅ちゃん、もう呼び捨てなの?さっすが、沙羅ちゃん。」
「だ、だから違うってば。いや、呼び捨てなのはそうなんだけど、」
ていうか、奈々ってこんなだっけ。なんか、性格変わってない・・・?
「あ、ごめんね。つい、」
「い、いや、いいんだけど・・・」
うん。まあいっか。奈々なのには変わらないんだし。
「で、沙羅ちゃんはその男子のこと、好きになっちゃったの?」
「違うよ!なんでそうなったの?私が好きなのは昔っからずっと悠だけで・・・悠?」
はあ。と奈々がため息をつくのが聞こえた。
「気付くの、遅いよ。その悠だよ。先に言っとくけど、私は、沙羅ちゃんには内緒にしといてって悠に言われたから、先に知ってただけだからね。」
そうか。悠が、帰ってきてたのか。すっかり背ものびて、声も変わってたから、気付かなかった。でも、確かに悠だ。優しくて、かっこよくて。ああ。悠だからかっこよく見えたのか。
悠は、奈々と私とのさんにんで、良く遊んでいた。だけど、5年前、親の都合で、遠くへ転校しちゃったのだ。まだ小さかったから、スマホなんて持ってなかったし、手紙という発送もなかったから、ずっと連絡が途絶えていた。それなのに、また会えるなんて、まるで、
「「運命みたい・・・」だよね。」
奈々と私の声が重なった。奈々は得意そうに笑っている。
「ね、沙羅ちゃん。もう、後悔したくないでしょ?言ってきな。沙羅ちゃんなら、大丈夫。」
優しい奈々の声に、私は頷く。
「うん。もう、前みたいに、後悔したくない。いつでも、言えるわけじゃないんだ。言ってくる。」
急いで、悠のところへ走る。悠だから、教室にいるはず!全速力で向かう。息が切れた。でも、そのおかげで、いた。よかった。今は一人だ。
「悠、あの、悠だったんだね。」
そういうと、悠が柔らかく微笑んだ気がした。
「あのさ、悠、ずっと前から、」
そこでいったん区切って、悠の耳に顔を近づける。
「好き」
すごく小さな声になっちゃたけど、聞こえただろう。ほら。悠の耳、真っ赤だし。なんだか気恥ずかしくなってきて、悠から少し距離を取る。すると、悠は少し赤い顔のまま、私の腕をぐいっとひっぱって、私がやったみたいに、そっと囁く。
「そんなの、僕だってそうだよ。ずっと前から。」
照れたような顔を見て、いたずら心が芽生える。にひっと笑う。
「ゆーう?はっきり言ってくれないと、わからないなあ。」
それを聞いた悠は大きく息を吸って立ち上がった。
「沙羅。ずっと前から沙羅のことが好きだ。だから僕と、付き合ってください。」
悠にしては大きな声で、はっきりといった。私も立って、すぐに大きく頷いた。
「うんっ」
「おおい。二人とも。やっぱりラブコメ展開になったのか。それもおおいに結構だが、授業準備、しっかりしとけよ」
またいつの間にか先生が来ていて、クラスメイトも集まっていた。そうするとやっぱり、みんな笑っている。
・・・フラグ回収、はやくね?
いろいろあって、月日は過ぎていくものだ。もうすぐ、悠と付き合って一年が過ぎる。一年も一緒にいると、やっぱりけんかだってするし、嫌になるときもある。でもやっぱ、悠が好きだなあ。って思う。一緒にいて、幸せだなあ。って感じる。そんなこの世界はやっぱり愛であふれていて、幸せがいっぱいだ。
急展開ですみませんっ。
それでも面白いと感じてくださったかたは、評価してくださるとうれしいです!