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幕間3 勇者の事情

今日の2話目です。

 遊亀勇斗は憂鬱だった。

 志望校の関東の難関私立大は軒並み不合格、国立は後期も落ちた。受かったのは地元の私立だけ。親はそれでいいと言ってくるが、田舎の私立大などに何の価値がある。(暴言)

 浪人は仕方ないとしても、予備校は都会で通いたい。そう言ったらアホかと一顧だにされなかった。これだから田舎は嫌なんだ。


 荒れた気持ちを持て余した勇斗は、今日も今日とてショッピングモールのゲーセンに足を運んでいた。

 シューティング系のゲームで憂さを晴らしている時にそれは起こった。

 足元の床に白く光る魔法陣的なものが浮かび、それがゆっくりと回転を始めたかと思うと、そこから浮かび上がった光が勇斗を包み込んだ。

 気づいた時には勇斗は真っ白な空間にいた。そして女神だと名乗ったキラキラと派手な装飾品をいっぱいつけた褐色美女から「異世界に勇者として召喚されるから、そこで魔族と戦って欲しい。それに必要な能力も知識も与えるから」と告げられ、再び光に包まれたと思ったら、今度はどこかの宮殿のような場所で大勢の人に囲まれていた。

 そしてその中から壮年の男が進み出て、勇斗の承諾も無しに突然一方的に召喚したことを謝罪してきた。


 勇斗は大いに不満だった。

 違うだろと言いたかった。

 ここは王女なり聖女なりが出てくるシーンのはずなのだ。


 勇斗は異世界ファンタジーの作品にはまっていた。小説、漫画、アニメ。何でもよかった。特に主人公が最強で無敵で無自覚にヒロインたちの好感度を上げるストーリーが大好物だ。


 ともかく、勇者として召喚された勇斗はあらゆることに秀でていた。何より素で魔法が使えた。この世界では人間は魔道具無しでは魔法が使えないというのに、勇斗はあの褐色美人から与えられた能力と知識によって様々な魔法が使える上に、その威力も誰もが驚愕するほどだった。

 武術もすぐに上達した。それぞれの達人だという者に習ったが、その日のうちに彼らを凌駕してしまった。

 さすがは勇者だと勇斗は称えられた。


 だが勇斗は不満だった。

 それは召喚されたこの国が共和制だったからだ。共和国には王女もお姫様も存在しない。

 知識が豊富で聡明な議会有力者の令嬢、剣の達人の子孫だという黒髪ポニーテールの女剣士、魔道具の開発と扱いに長けたメガネっ子、神の奇跡を具現化できると噂されるワガママボディの巫女をハーレムメンバーにできたが、肝心のアレがいない。そう、お姫様だ。王女様だ。

 幸い敵対する魔族は王国だ。そして王女がいる。これは是非とも攻略しなければならない。


 勇斗は破竹の勢いで魔族軍を打ち破った。もちろんハーレム要員を帯同していたが、彼女たちはただのお飾りではない。各々に秀でた分野があった。まぁ本質は勇斗のハーレムの一員であることに変わりはなかったが。


 ついに勇斗は魔族の王、魔王を倒した。ついでに息子も一蹴した。残念ながら第一王女は自殺してしまったが、20歳を過ぎたオバサンだったので勇斗に未練はなかった。目当ては15歳の第2王女だ。やはりお姫様は年下に限る。(個人の感想です)


 共和国首脳陣は第2王女を処刑しようと躍起になっていた。離宮にいるとの情報を得て捕獲部隊を差し向けたがあと一歩のところで取り逃がしてしまったとのことだった。

 そこで勇斗は魔族に協力させるようにアドバイスした。魔族ならではの情報網があるだろうし、何より同じ魔族なら王女も警戒しないだろうというのが勇斗の目算だった。

 なかなかにガバな計画だったが、これも女神(管理者)の恩恵なのだろう、うまく行く時は行くものなのだ。

 だがせっかくの恩恵も前線の兵が無能では結果が出ない。王女を目の前にしながら拘束に失敗したとのうのうと報告に戻ってきた。まぁ王女の存在と隠れ場所がわかったのは最低限の朗報だろう。


「道案内は一人いればいい」


 無能な魔族を焼いたのは、役立たずは四の五の言わずにさっさと殺してしまった方がいいと思ったからだ。下手に追放とかして、後でざまぁなんてされてはかなわない。まぁ、もう一人の魔族も適当なところで始末する予定だが。


 共和国は軍を派遣すると言っているが必要無い。王女を処刑するとほざいている奴らに任せるわけにはいかない。王女は勇斗の大事なハーレム要員なのだから。首脳陣が何と言おうが勇者の仲間になってしまえば手は出せないだろう。


 さぁお姫様。今から勇者自らが迎えに行くのだ。身をきれいにして待っているがいい!


次回から最終章になります。

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