05.情報屋ノイモ
別小説【受け身で習得するチートスキル~冒険者パーティーを追放されたが、ドM向けな魔法を悪役令嬢から授かったので英雄になれるみたいです〜ですがショタワンコにされました、ぴえん】と繋がる物語。
鉄の闇ギルド【アールモール】を滅ぼしたユガレイとグアルは、3時間後には目的地であるナノキリ村に到着した。
「ゼェゼェ、【影移動】使いすぎた」
影法師のグアル。
影から影へ移動する【影移動】で瞬時に相手の背後に回り込んだり瞬時に移動したりする。
移動距離には制限があるので長距離の場合は何度も使う。
もともと魔力量の少ないグアルは連続で使うのは厳しい。
「お疲れさん」
白銀のスナイパーの2つ名を持つユガレイ。
スナイパーという異名だが身体能力は高く接近戦でも高い戦闘力を誇る。
さらに瞬間移動する【影移動】に己の足だけでついてきた。
「お前さん、何が、おんぶだ。
ピンピンじゃねぇか」
アールモールを単身で滅ぼしておんぶを要求したユガレイは、特に問題なさそうなので額にシワを寄せながら聞いてきた。
「体力には自信があるのです!」
「威張らんでいい!」
ユガレイの発言にすかさずツッコミを入れるグアル。
これはよく日常における2人のお決まりの漫才だ。
「さてさて、ノイモはどこにいるのかな?」
目的である情報屋ノイモの合流するためどこにいるか辺りを見渡すユガレイ。
「表向きは酒場を出したらしい。
こんな田舎で派手な店だと目立つから地味な感じの酒場だろう。
村人に聞き込みしながら探ってみるか」
情報では酒場のオーナーをやっているノイモ。
村人に聞きながら捜索することにした。
そして日が沈む頃。
ようやくその店を見つけた。
ドン!
しかし、田舎には全く馴染むことのない紫とピンクの派手な色合いで夜には辺りを照らす隠れる気が全くないBARであった。
「目立つな! すげぇ目立つな! ド田舎にBARってなんだよ!」
あまりの派手なBARに思わずツッコミを入れるグアル。
日が沈んだ今は特に辺りを照らす紫のライトが光っているため遠くからでもわかるほど目立っている。
「やーい間違えたー」
子供のようにチャチャを入れるユガレイ。
「あぁ、間違えたよ。お前らが馬鹿だってこと念頭に置くべきだった」
額にシワを寄せながら皮肉を言うグアル。
「それじゃぁ行ってみましょい」
特に気にしない、というか気づかないユガレイは、早速BARの中に入っていった。
カランカラン
「いらっしゃい、お客さんたち見知らぬ顔だね」
中には色黒のイケメンが1人だけいた。
「あぁ、初めてきたこちらのおすすめを頼むよ」
グアルは小さく折り畳んだ紙を差し出した。
「かしこまりやした、それでは他のお客さんがいないうちにこちらの階段で地下に移動してください」
店員はグリムリペアの関係者だと気づいてすぐにオーナーのいる地下に案内した。
「ありがとう」
「サンキュー」
お礼を言うグアルとユガレイは地下に続く階段を降りていった。
目の前に扉があり扉の小窓から怪しい男が覗き込んでいた。
「合言葉は?」
男はドスの効いた声で合言葉を聞いてきた。
するとユガレイは合言葉に対して答えた。
「シュークリーム」
ユガレイの合言葉にさらにドスの効いた声で答えた。
「ショートケーキ」
するとユガレイは合言葉に対して答えた。
「チョコケーキ」
すると男は目を血走らせながらドスの効いた声で答えた。
「入って良いぞ」
「はーい」
扉が開いて入ろうとするユガレイ。
「いや、ちょっと待てぃ!」
合言葉のやり取りに対してすかさずツッコミをするグアル。
「どうしたんだよー相棒ー」
なんだなんだと言わんばかりに聞いてくるユガレイ。
「合言葉おかしいだろ! 何勝手にうちの合言葉変えてんだよ!」
どうやら本来の合言葉は違うようだ。
何故か全部スイーツになっていることに対して問いただすグアル。
「だって……美味しそうじゃない!
「いや、そういう問題じゃない!」
少し間を置いて返答するユガレイにツッコむグアル。
「なんか俺がどうしても合言葉覚えられないから、うちの合言葉全部これか、いつもの合言葉の2つ用意することにしたらしいよー」
どうやらユガレイの物覚えの悪さからユガレイ専用の合言葉とメンバー共有の合言葉を作ったようだ。
そして、グアルは知らなかった様子。
「まじかよ」
もともとコンビを組んで仕事をしているのでユガレイの物覚えの悪さは知っているが、まさか組織全体で配慮することになっているとは思わなかったと、呆れるグアル。
「というわけで入りましょう!」
自分の物覚えの悪さを全く悪びれることなく進もうとするユガレイ。
「はいはい」
これはもう諦めようと思いながら先へ進むグアルであった。
地下の扉の奥へ進むとさらにBARがあった。
そこには、紫の長い髪で太り気味の厚いメイクをした男のような濃ゆいキャラがいた。
「あーっら! いらっしゃーい!
ユガレイちゅあーん、グアルちゅうわーん」
彼(?)はグリムリペアNO.9。
情報屋ノイモ・シーミー。
今回合流して情報を共有する相手である。
「お、おう」
濃ゆい歓迎に引くグアル。
「ママー遊びに来たぞー」
ユガレイはノイモのことをママと呼んでいる。
「いいわよーいつでもいらっしゃい。
今からグアルちゃんとオ・ト・ナの、
会話をするからシュークリームを食べて待っててね」
まるで子供をあやすようにユガレイを扱うノイモ。
どのみち長い話は覚えられないのがユガレイなのである意味適切な配慮だ。
「やったー! いやっほー!!」
そんなこと気にもせず大好物のシュークリームに飛びつくように冷蔵庫に向かうユガレイ。
「ユガレイちゃんいい子になったわねー。
最初会った時オカマって言われたから傷ついたわ」
初見はやはりオカマにしか見えないからユガレイはノイモのことオカマと呼んだらしい。
「まぁ、マイマイ族はオカマってわけじゃないからな」
最初はノイモの種族がマイマイ族であることをユガレイに説明したグアルであった。
「そうなのよーあたしたち一族は
雌・雄・同・体!!
なんだから、神に与えられし特別な存在で、1人で子供を産み落とすことができる超合理的な一族!
もっとも性格が女より男よりに別れるんだけどね
ちなみに、アタシは女よ」
マイマイ族は単独で種族を増やすことができるので特に男も女もないそうだ。
ただし、容姿や性格は男よりや女よりがあるらしい。
「(スルー)1つ言わせてくれ」
ノイモが女であるかどうかはスルーするグアル。
「いいわよー愛の告白かしら?」
さらに冗談をかますノイモだがツッコミきれないのでさらにスルーするグアル。
「こんなド田舎にバーとかなんだよ!
しかもデケー!
なんであんなの立てたんだよ!」
暗殺ギルドというのに派手で目立つBARを構えていることに問いただすグアル。
「それわね」
ノイモは真剣な表情でかなり間を置いて答えた。
「あたしの趣味よ」
「自重しろ! うちは暗殺ギルドだぞ!」
全く合理性のない返答にすかさずツッコミを入れるグアル。
「それより、情報聞きたいんでしょ。
早い話、もうある程度掴んでいるのよね」
東洋の死神の情報はある程度掴んでいるようだった。
「さすがだな、お前の盗聴は1級品だからな」
ノイモの特技は盗聴、特撮である。
その高い技術はグアルもお墨付き。
「今あなたたちに渡す、ベイビーちゃん産むからちょっと待っててね」
するとノイモは凄い汗を出しながら目を血走らせて力み始めた。
「ぬおおおおおおおおお!!
おんどりゃああああああああぁぁぁ!!
つおおおおあああああああ!!!!!」
さっきまでオネェ口調だったノイモがドスの効いた声で店内を響かせる。
「あ、う、ま、れ、る」
ポコッ!
ノイモの胸元からカタツムリが現れた。
これがノイモのベイビーちゃんであり、出産の瞬間である。
「ベイビーちゃん47号誕生!
さぁ、見てごらん、あれがパパよ」
47人目の子供誕生ということでベイビーちゃん47号と名付けるノイモ。
そして、グアルに対して指をさしてパパと言った。
「パパー?」
するとパパと呼び始めたベイビーちゃん47号。
「やめろ」
すぐに拒否るグアル。
「パパー! シュークリーム奢ってー!」
何故か話に入ってくるユガレイ。
さらに今食べているシュークリームを奢るように要求してきた。
「シュークリーム頬張りながら何言ってんだ!
自分で払え」
当然の正論で返すグアル。
あっちもこっちもツッコミ過ぎて少々疲れてきた顔つきになってきた。
「あーらーお代が払えないのかしら。
それじゃあ別の方法で払ってもらおうかしら
か、ら、だ、で」
さらに悪ノリするノイモは身体で払うように要求してきた。
「そうだ! そうだー! カラダデハラエー!」
ユガレイも悪ノリするが、身体で払うの意味はよくわかっていないようだった。
「お前らグルだろ!」
まとめてツッコミを入れるグアル。
「さて、冗談はさておいて、今アタシが掴んでいる東洋の死神の情報を伝えるわね」
ユガレイの茶番を終えてやっと本題に入るノイモ。
「そうしてくれ」
ツッコミに疲れが出てきて頭を抱えるグアル。
グアルは、頼むからもうツッコミを入れさせないでくれ、という顔をしていた。
「言うわよ、東洋の死神わね」
ノイモは真剣な顔ですごんだ。
店内に緊張感が漂い。
唾を飲むグアル。
シュークリームを頬張るユガレイ。
異様な光景の中、ノイモはその重い口を開いた。
「……イケメンよ」
「いらねーよ! そんな情報!!!」
本日、最大のツッコミをするグアルであった。
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