よし、テントを買おう2
と、いうわけであのテントをポチッっと……。
インターネットって便利だよね。この30年であっという間に普及した。
「おもしろい時代に生まれたと思うよ」
小さいころ、父さんはワープロで仕事していた。いつの間にか学校にはパソコン室ができたけど、ほぼほぼ立ち入り禁止の部屋だったしモニターはブラウン管テレビ並みに分厚かった。
「なのにいま、パソコンで当たり前に仕事して。ゲームは電源入れたら即オンライン」
ネットの海が広く、深くなるのを見ながら大人になった。
『何かっこつけてんのさ』
「んふふふん」
……でも、時々、いつかこの海でおぼれるんじゃないかって思う。
『…でもいいこともあるでしょ。ナビがあるから車で遠くへ行けるんだし』
「ケイ、いいこというね」
それでも紙の地図を助手席に乗せて走るけどね。
でも、ネットで広い世界にみて、いきたい、って思って、わくわくしながら車で走る。それができるこの時代が好きだ。
海におぼれそう?そんなの力を抜いて浮いてしまえばいい。海面に浮かんで空を見て、潮水を飲まないように呼吸をして、そんで勇気が出たらまた潜ればいい。きっと自分なりの泳ぎ方を見つけられる。
『で、テントは買えたの?』
「…」
『いつ届くの?』
「…ケイ君…あの、実はね、あのテント結構高くて…」
予算がね、うん。
『…じゃあ買わないの』
「うーん、しかもアニメの影響で品薄みたいなんだよねぇ」
プレミアついちゃって、正札で買うのも難しいや。
『ふーん、じゃあどうするのさ』
「うーん、…どうするかなぁ」
とりあえず、メーカー定価以上の価格で買うのはなし。負けた気がするからね。
『他のテントにしたら』
うーん。…それも負けた気がする。
「それに」
『それに?』
「あのテントがいいって、思ったの」