5 .ここはどこ?
ヤケ酒を飲んで潰れたフランツ、その後です。
※ フランツ視点
チュン…チュン…鳥が鳴いてる…明るい…朝かな?うっ 頭が痛い。喉がものすごく渇いている…
み、水ぅ…水が飲みたい!
横になったまま手をバタバタ振って 水、水、と うめいていたら
「やっと起きたか」
トルーデが、俺の両手を引っ張ってベッドの上で半身を起こさせた。
勢いが良すぎてちょっとクラッとした。
グラスに入った冷水を渡される。
「水飲め。あれだけ飲んだら喉がカラッカラだろ」
「悪ぃな…」
ごくごく。プハー あー、水が美味い!
ええと、確か昨日は…
戦争が終わった
↓
故郷に帰ってきた
↓
自宅へ
↓
その男誰やねん
↓
俺、ショック受ける
↓
トルーデに遭遇
↓
ヤケ酒
↓
クダを巻く
↓
…
あー、途中から記憶がおぼろげだ。酔って、なんかごちゃごちゃと、グダグダと、未練がましいことを言ってた、よう、な‥??
教えてトルーデさん…
「フランツが『潰れた』から 我が家の馬車で、この別邸まで運ばせてもらったよ。
つい勧めすぎてしまったかもしれない。すまない…」
「い、いや、ヤケ酒に付き合ってくれって頼んだのは俺だから、謝られるようなことは、なにも…、この屋敷ってケストナー家の別邸なの、か?」
「そうだよ」
やっと認識出来てきた。俺が今いるところに。
絢爛華美ではないが、重厚な調度品、高い天井、広い部屋、でかいベッド、シルクのシーツ、ふかふかの掛け布団、枕。
外はいい天気。窓の外からは鳥の声。目の前の麗人からは薔薇のような芳しい香りがする。
うん、別世界かな???
襟がフリル状のブラウス、動きやすいトラウザーズ姿で、俺を見てにっこり笑むトルーデ。
お前、家でも男装なのかよ!!まあいいけど!!!うん、すごく似合ってる!そのトップス!!
なんか背後に薔薇が見えるかも!俺、まだ酒残ってんのかな……。
確か俺は、あの、小汚い格好で、(ブーツだけ安靴に替えて)あの飲み屋に行った筈だが
今の俺はいつの間にか貫頭衣のような寝巻きを着ていた。
身体もサッパリしている。俺から、せっけんの匂いすらする。
どうやら
俺はこの別邸の風呂場で丸洗いされたらしい。
ベロベロに酔っ払った汚い男を、洗わせてしまった…。
あああ すいません…俺、そこらの汚れた野良犬よりか洗いがいのある汚れ具合だったかも。
うん、俺、野良犬以下!迷惑かけすぎィィィィ!
そしてちょっと恥ずかしい!まあ男性の使用人の方達だとは思うんだけども!うん…。
両手で髪をガシガシやって、穴があったら入りたい気持ちになる俺。
「…大丈夫か?」
「ああ、うん、色々迷惑をかけたな ごめん ありがとう…」
「迷惑だなんて思わないさ 他ならぬ君だもの」
トルーデの、破壊力バツグンの微笑みキターーーー!白い歯が綺麗!
キラキラしたものが室内に充満してる気がする‥なんなんだろう、コレ、「魅了」の魔法かな?
それとも妖精が飛んでる?
いやいやいや、勘違いしてはいけない。
俺なんかに「魅了」の魔法をかけねえだろ。誰も。
HAHAHAHAHA 平凡を煮詰めて平凡にしたような俺、勘違いなんか致しません。
大体、元々美しいトルーデなんだからこれは単に美しさゆえの現象か…??
嗚呼、美しさは罪 ────…
魔法も魅了もヘッタクレもねえか。
うん、友達友達友達友達友達友達友達友達友達友達友達…
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