33 .王都の殺人事件 『帝国の青蛇』と転移魔法
フランツは、謎の男から転移魔法で別次元へと飛ばされた。
遡ること1ヶ月前、エプシュタインに頼まれて、フランツは軍犯罪捜査局の臨時捜査官の任に就いた。
フランツの勤務先に聞き込みに来たエプシュタインにスカウトされたのだ。
王都で起きた殺人事件を追う中、フランツは怪しい男から転移魔法をかけられて意識不明に陥った。
意識の無いフランツを、別邸の屋敷内の部屋に寝かせて看病を続けるトルーデ。身体は生きているが、意識を取り戻さないフランツ。
トルーデは、フランツを捜査官にスカウトしたエプシュタインに対して、怒りがおさまりません ────。
別邸の一室。ベッドに横たわるフランツ。生きてはいるが、そこに魂はない。
心配そうにフランツを見つめるトルーデ。フランツの頬をそっと撫で、ひたいの髪を指ですくう。
「フランツ………声を聞かせてくれよ…目を、開けてくれないか…っ…」
唇をギリギリと噛むトルーデ。拳を握り、サイドテーブルを何度も打ち付ける。ガッ ガッ
「お嬢様」執事のエトムントが心配そうに声をかける。
◆
【ケストナー家別館の応接間。トルーデが腕を組んで窓際に立って向こうを向いている。背中から怒りの炎がメラメラと立ちのぼっていた】
「申し訳なかった。本当になんと言って詫びればいいのか…」エプシュタインの灰色髪の頭が深く深く下げられる。
「 ────フランツの意識は…今どうなっているんです」
「…どうやら、帝国人の魔術師が強制転移魔法を使ったらしい」
「!…強制転移魔法ですって…でも術者であるその男は」
「そうなんだ 普通術者も一緒に『飛ば』ないといけない。だが帝国の転移魔法を極めた魔術師は、これと定めた対象を思うところに飛ばせるんだと」
「…そ…そんな…」
「代償に、魔力を相当消耗するらしいが……王国の術者だとそんな荒唐無稽な真似は出来ない。自分も一緒に飛ばないとな。でもウベルって奴には、対象だけを飛ばすことが出来た。しかも魔道士様によると飛ばされた所は【夢魔の次元】だ」
◆
王国の魔法と、帝国の魔法は、体系が異なっており、特に帝国独自の転移魔法は厄介だった。
今回の場合、意識を失っている間、対象者フランツの意識体は夢魔の次元に飛ばされた。
エプシュタイン率いる軍犯罪捜査局のチームが追っていた事件を調べていくと、捜査線上にひとりの帝国人が浮上してきた。
その男は『帝国の青蛇』と呼ばれるウベル。魔術師でもある。
調略の裏に、この『帝国の青蛇』の存在があると言われており、組織の長であると目されている。立場的に本国から動かない人物とされている。しかしここのところウベル本人が王国内に出現しているという。(軍調べ)
軍人であるゴダード・ジッヒラー殺しの事件を追う中で、エプシュタインらの捜査班は帝国がらみの違法薬物売人らを挙げた。
それがあの『女神の鐘』公園での捕り物であった。
そこでトルーデとフランツに再会したエプシュタインは、後日フランツの勤め先に出向き彼をスカウト。
「俺の捜査班を手伝ってくれないか?」
◆
トルーデ「大体、なんでフランツをスカウトしたんです?」
エプシュタイン「いやそれが…軍部の方から急に、捜査員を南部に出向させろって言われてガッサーッと持って行かれたのよ…」
トルーデ「…はあ?南部地区?そんなところになぜ」
エプシュタイン「おかしいだろ?裏が無いわけがない」
トルーデ「はぁ…(ため息)」
エプシュタイン「なんかヤバい虎の尾を踏んじまったのか、…裏事情の詳細ははまだ不明だが要するに軍部の差し金って訳────…まあホントのこと言うと、あの公園でヴェルテ…フランツは、例の3人を観察してた。お前さんと会話しながらもな」
トルーデは驚いた。あの時にまさか。単になにげなく周囲を見ているんだとばかり。
「その様子を見て、捜査官の仕事にも向いてるんじゃねえかなって思ったんだよ」
「…はぁ…そんな事情が…でも、許しませんからね」
「本当にすまん…」
エプシュタインは平謝りするしかなかった。
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