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3 .フランツの過去と強い酒

前世の話、過去の話が出てきます


※ フランツ視点

 どうも、主人公のフランツです。やさぐれておりますが、ヤケ酒をしようと思う。

 

 そんな俺と一緒に酒場に来てくれたのはトルーデ。


 トルーデがあまりに美しすぎて、そのままだと給仕の人が男女問わず挙動不審になってしまうので

 街に出る時はカツラと眼鏡で変装。


 今、トルーデは金髪を隠し、茶色のボブヘアに銀縁メガネの騎士だ。


 それでもダダ漏れる美しさ。案内の子が、ポーーーっとなってる。

 ああ、うん、これはしょうがない。(慣れてる)


 ある種酷薄な印象を与える銀縁のメガネが、逆に彼女の魅力をUPしちゃってるような気がしないでもないがまあいいか…。

 

■■■■■


 トルーデの外見に惹かれる人は多い。


 だがここまでスパダリ(?)だと、告白しても玉砕する未来図しか思い描けないらしく

 

 今は、告白されたりすることはヒジョーに少ないのだそうな。


 トルーデは美しいが、むろん外見だけの人間ではない。その見識、技能、才覚、人格、そのどれもが素晴らしい。


 俺はトルーデを、人間として友として尊敬している。


 あ、スパダリとか言ってる俺は異世界からの転生者です。幼い頃に頭を打って、前世を思い出した。


 前世 俺は日本に生まれデパートで販売の仕事に就いていた。毎日毎日売り上げと睨めっこし、売り場作りに苦心していただけの勤め人。管理職でもないヒラ。(まだ勤務して数年だったからね)

 

 前世でも平凡だった俺の日々の楽しみは漫画と小説、ドラマに映画。


 俺がどんなふうに死んだかって?帰宅時に、信号待ちで心停止したっぽい。あの強烈な痛みだけは、二度と味わいたくない。


 ま、どんな死に方をするかなんて、自分じゃ選べないけどよ。


◆◆◆◆◆


 こっちの世界で生まれ落ちた家は、庶民の家。

 

 父親は、とある商人の屋敷で働いていた。


 清掃、買い出し、馬の世話も担当だし、なんなら御者もやる。人手が足りなくて頼まれれば護衛の真似事も…。

(なんでもやらせすぎな雇い主だな!)


 母親は、近所の仕事をあちこち請け負って手間賃を得ていた。


 決して裕福ではなかったけれど、家族5人が暮らすには充分だった。

 

 父親は温厚、母親は気が強くてまっすぐ。弟も妹も可愛い。第一子の俺はもう働いていた。交際中の恋人もいた。


 だが、そんなささやかな幸せも、開戦までだった。


 俺が隣街へ買い出しに行っていた日、予想外に買い物に手間取り、帰路についたのが深夜になってしまった。


 その晩、俺の街に敵国の魔法戦闘機が襲来した。その数、30機は下らなかったという。(軍調べ)


 奇襲だ。軍事施設でなく、都市部を狙ってなされた攻撃。


 魔法戦闘機は、夜の闇のように真っ黒で、音がしない。勿論魔法で操作。


 前世のステルス戦闘機や、無人攻撃ドローンの恐ろしさを思わせるシロモノだ。


 街に入る峠から、街が真っ赤に燃えているのが見えた。


 俺の転生先の家族は、その空襲の時に 全員死んだ。


 家族の中で、俺だけが生き残った。


 街の住民も多数死んだ。生き残ったのは、半数にも満たなかった。


■■■■■


 酒場街のとある店。トルーデが別料金を払ってくれると言い、個室で呑む。クダを巻く俺。


 ダンッ 強い酒のグラスをテーブルに打ちつけて、突っ伏す。


「ああああ誰か俺を褒めてくれよおおお あのいけすかない男を殴らなかった俺をよ…」


 別にイレーネの前でカッコつけたかったわけじゃない。


 殴っても、イレーネが俺の元に戻ってくるわけじゃない。あの赤子が、存在しなかった前に戻るわけじゃない。


 …いいや、やっぱり単にカッコつけか。


 ショックだった。大体俺は、俺は、アレ?


 あれれ?思考がループする。さっきからぐるぐる考えている。


 強い酒を煽って、酔っ払っているからか?だな!だな!おうさ、今夜の俺は酔っ払いだぜ。酔っ払って何が悪い!

 

 「まあ飲め」


 トルーデが、俺のグラスに原酒のままダバダバと酒を注ぐ。……これで何杯目だ?わからん…


 俺に注いだその手で、自分のグラスにも入れて水のようにそれを飲む彼女。彼女は俺よりか酒が強い。


「忘れられんかもしれんが飲んで忘れろ…ってあれ?矛盾してるか」


「ちげえねえ!あ-…イレーネ、なんで俺を待っててくれなかったんだよ-…」


 未練がましく妻の名前を呼ぶ俺を、トルーデが切なげに見つめていたことには、俺は気付かなかった。


 記憶が、ない。


 腹が、減った。


 俺、クッソダサい…

お店では、お通しというかアミューズのようなものは出たんですがロクに食べずに いきなり強い酒。そんな飲み方しちゃいけません。せめて水を一緒に飲みましょう。by爺じい


 読んでいただきありがとうございます!入れていただいたブクマ、ポイント、大変励みになります!



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