公園
この公園は元からあまり人がいる場所じゃないみたいだった。声が、全く聞こえない。
ブランコに腰かけて、ぶらぶらと揺れてみる。
静寂が耳に痛かった。
彼女――世界の姿はない。逃げてきたのだからあたりまえだけど。
空を見上げると、雲ひとつない快晴だった。
雨でも降ればいい。そう思った瞬間、空は雲に覆われて、ポツリと水滴が落ちてくる。
「……由香」
呟くと、熱いものが頬を伝って落ちていった。
「君は、やり直したいの?」
いつのまにか、世界は僕の隣のブランコに座っていた。
ゆっくりと彼女を見た僕は、雨に打たれる彼女を見て、寒そうだな。とだけ感じた。
「やり直せるよ。君が望むなら、私はそれに応えるから」
彼女――セカイは笑った。初めて会ったときみたいに、不安を押し殺して、赤くなってしまった眼を細めながら。
「ごめん」
言葉は意外と簡単に出た。
忘れていた。彼女にだって喜びや悲しみ、罪悪感があったこと。
世界が滅びたのは彼女のせいなんかじゃない。由香が存在しなくなったのも。
僕は、ブランコから立ち上がって、セカイをそっと抱きしめる。震えているのは寒さのせいだけじゃないだろう。それでも、雨がやむように僕は願った。
空はふたたび雲ひとつない快晴に変わり、それと同時にセカイの震えがおさまった。
「旅をしよう。世界を元に戻そう」
セカイがうなずくのを胸で感じる。
そのとき、世界は僕の腕の中にたしかにあった。




