学校
にぎやかな校内を、僕と神様は歩いていた。
「どうして人がいないのに、こんなにたくさんの声が聞こえてくるんだろう」
八時の校舎内。僕も、いつもはこの時間には学校に着いていて、友達とだべっていた気がする。
そんな声はうるさいほど聞こえてくるのに、人の姿は一つとして存在していなかった。
「学校はそういう場所だから」
……わかりそうでわからない理屈だ。
「もうすぐこの声も消えるよ」
「どうして?」
「八時半から九時半の学校はそういう場所だから。
それから十分ぐらいうるさい場所になって、また静かな場所になる」
……やっぱりよくわからなかった。
 
八時三十分を過ぎると、確かに彼女の言うとおり、声はほとんど聞こえなくなった。
れでも、教室の中に入ると、かすかだけどヒソヒソ声が聞こえてくる。
僕は窓際の一番後ろの席に座る。少し前まで、僕の居場所だった場所。
「カズくん」
かすかな声に横を向くと、由香がいた。
「由香……」
たった数日、そのはずなのに、涙が出るほど懐かしい。
由香は微笑みながら僕を見ていた。
「由香――」
「今日の放課後、校舎裏にきて」
次の瞬間、由香は消えた。最初からいなかったみたいに。
いや、本当に最初から存在していなかったんだ。
ここにあるのは、由香の残像だけ。
由香と会える場所。僕がこの学校をそういう場所だと思っていたから。
「そういうことだよ」
いつのまにか、神様が僕の後ろに立っていた。
「私は神様じゃない。本当の神様は君」
彼女は訳のわからないことを言う。
だって僕は、数日前まではこの学校の生徒だったのだから。神様となんて縁もゆかりもない。
「私――セカイが君を選んだから。もう一度作りなおすの。世界を君と私で」




