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王都の薬売り  作者: 鮎河和生
5/18

4話

ひたすら説明の回になってしまいました…。

ギルドの中は、朝早いからか人が少なかった。

私は受付のカウンターに行く。


「あの、すみません。お店を王都で開きたいんですが…相談を受け付けていると聞いて」

「はい、受け付けています。会員証はございますか?」

「あ、はい、これです」


私はカミラの会員証を受付の女性に見せた。会員証には特殊な魔法がかかっていて複製は不可能になっている。偽証はできないようになっているらしい。

そしてこの会員証はギルドに入れば貰えるものだけど、ギルドに入るには薬剤師検定3級が必要なのだ。


「ありがとうございます。本日は相談の予約はありませんので、好きな時間にできますよ。いつにされますか?」

「出来れば早い方がいいのですが」

「ではあと30分お待ちください。相談員が来ましたらお呼びいたします」

「よろしくお願いします」


私はカウンターの右横にある待合室に入る。待合室には飲み物や軽食がおいていて、先ほど朝ごはんを食べたのにミュートさんはサンドイッチを食べていた。私はお茶を淹れて椅子に座る。


「やっぱり薬剤師ギルドはお金持ちなんだね」

「どうしてですか?」


ミュートさんは他のギルドに行ったことがあるらしい。私は初めてギルドに入ったから分からないけれど、他のギルドでは待合室に軽食まで用意されていることはないそうだ。


「飲み物はあるとこはあるけど」


王族が管理する薬剤師ギルドはそれなりに儲かっているんだろう。薬剤師ギルドの収入源は薬剤師達の会費だけでなく薬剤師達への薬草の販売などだ。売る薬の値段も厳密に決められている。ギルドが儲かるように操作するのは簡単だろう。


「カミラさんでしょうか?」


背の低いメガネをかけた女性が待合室を覗いている。


「はい!よろしくお願いします」


私はその女性の後をついていく。


「では、ここの相談室にどうぞ。すみません、お茶飲んでいいですか?ちょっと先ほどまで会議に参加していて喉が渇いちゃって」

「どうぞ」


私は待合室で飲んでいたものを手に持ってきていたので、それをテーブルに置いた。

ミュートさんは三つ目のサンドイッチと飲み物を手にしていた。

女性は飲み物を一口飲むと話し始める。


「私はルミナと申します。私は1級薬剤師の相談を担当しています。カミラさんは1級薬剤師なので、これから何か相談したい時には私の名前を出してくださいね。それで、王都でお店を開きたいとのことですが、もう店舗の方は決められたんでしょうか?」

「いえ、まだなんです。そこから相談したいのですが出来ますか?」

「はい、大丈夫ですよ。不動産屋と提携しておりまして、薬剤師ギルドでも所有していますので賃貸も可能です。最初は賃貸から始められる方もいますから」

「そうなんですね。出来れば買いたいんですが」

「分かりました。では不動産屋を紹介します。薬屋の店舗をよく知っていますので、良い所を紹介してくれますよ」


そうして名刺を一枚くれた。

名刺には”ロイド・レイマール”と書かれていた。この人が薬剤師ギルドの担当なのだろう。

私がじっと見ていると、ルミナは続けて話す。


「それから王都での販売はとても厳しく管理されます。地方の時はある程度緩くても許されていましたが、王都では厳密に薬の査定を行ってランク付けをします。そのランクは効果が高い順にS~Dに分けられます。ランクの結果はギルドに登録され、どなたでも見ることができます。大抵は王城の各部署が必要な時に見て、ギルド経由で登録者に依頼されます。そのような事は滅多にありませんが、依頼があるときはかなり大口になりますね。他は商人が旅に出るときに大量に購入する場合とかでしょうか」


さすが王都だ。そんな大口を依頼されるようになりたいとは思わないが、田舎にいるよりも需要がある。


「それとランクによって薬の値段も変わりますので気をつけてください。Aランクであれば150カイル~250カイル。Cランクであれば50カイル~150カイルと、その金額の間で値段付けをしてください。50カイルなのに効果が高ければ、そのお店にばかり人が来ます。なのでそういった偏りがないように、ある程度縛りを設けています」

「そのランクの査定は、更新とかされるんですか?」

「はい、半年に一度再査定ができます。新規の薬の登録は常時受け付けていますが、再査定は半年に一度と決められています。再査定するかどうかは、登録者本人の希望によります。半年後に再査定を希望しなかった場合、次の半年後まで待たなくてはいけませんのでご注意ください」

「分かりました。気をつけます」

「また登録していない薬の販売も行えません。見つかれば刑罰があります。その他の違反はこちらに明記していますので、確認してくださいね。違反を繰り返したり、死者が出るような重大な違反をしたりすると薬剤師の資格剥奪となります」


知らなくてウッカリ違反しないように気をつけないと。それにしてもかなり王都での商売は窮屈そうだ。

それだけ利益も出るのだろうが、ここに一生住むつもりなら慣れないといけない。


「薬の登録には一週間ほどかかりますので、開店前に登録されるように早めに提出ください。色々ありますが、開店前に必要な書類などはこちらの『開店ガイドブック』に。販売に伴う違反などは『薬剤師店ルールブック』に書かれていますので、読まれて確認されて下さい」


ルミナは二冊の冊子を渡してくれた。


「店舗が決まりましたら、仮契約で良いので契約してもらって店舗の住所を教えてください。まず店舗の登録をして、その店舗が店舗として使えるのが現地をギルド職員が確認に行きます。それは紹介する不動産屋さんで契約してもらえれば間違いありません。何が必要か分かってますので。確認の結果は数日ででます。薬の登録はその後です。薬の登録には、作成者の他に住所も登録されますので、まず店舗が必要なんです」


店舗は急いで決めた方が良さそうね。


「とりあえず、この2つをクリアしてもらえれば、あとは普通のお店と変わりません。何か質問はありますでしょうか?」

「いえ、今は思い浮かびません」

「そうですか。説明は以上ですので何かありましたらギルドまでお尋ねください」

「はい、ありがとうございました」

「あ、最後にこれ。不動産屋さんまでの地図です」


ルミナから地図を受け取ると、私はお礼を言ってギルドを出た。

大人しく話を聞いていたミュートさんも私の後をついてくる。


「ミュートさん、ここ分かりますか?私、地図見るの苦手で」


私は昔から方向音痴だ。それはカミラになっても変わらないらしい。

ミュートさんに地図を渡すと、不動産屋まで案内してくれた。

変な事さえ言わなければ、ホントいい人だと思う。

私は大人しくミュートさんの後をついていった。

※不動産屋さんの名前、変更しました。間違ってた~~!

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