17話
お、お久しぶりです!
次はもっと早く投稿したいなぁ…。。。
次の日、やはり疲れていたのか少し遅くに起きる。
少し興奮していてなかなか寝付けなかったせいでもある。
液体に魔力を固定することは今のところ難しい。でも固体なら固定できる。ならば薬を固体にすればいいのじゃないか。そう思いついて、ならばどうやって固体にするかそれを考えていた。
回復薬は液体だが、液体である必要があるのは即効性を求められることがあるからだ。特に冒険者たちには必須だろう。
着替えて開店の準備をしながら、今日の試作について考える。お客さんは午前中に来ることが多いので、試作の作成は午後からになるだろう。さっそく1人お客さんが入ってきた。騎士団に見習いで入団していて時々来てくれる少年だった。
「カミラさん。湿布ありますか?」
「はい、ありますよ。冷たい方ですよね?」
「そうです。良かった。また稽古で打撲してしまって。最近忙しくてこっちに寄れなかったので、支給された湿布を使っていたんですが、カミラさんの湿布の方が効きが良くて…なのでまとめて欲しいんですが」
「どのくらいですか?」
「…贅沢を言えば、100枚は…」
どんだけ怪我する気だろう。照れたように話す少年を呆れたように見る。そんなに騎士団の練習って厳しいのかな。
「今、在庫が30枚しかないんです。三日、待っていただけますか?三日後納品に伺います」
「はい!急にお願いしてすみません。今日は三日分…5枚くらい頂けますか?残りは三日後で。お昼なら騎士団専用の食堂にいます。当日門番をしている先輩方に話をしておきます」
「分かりました。今日は湿布5枚分のお代だけ頂きますね。ありがとうございました」
研究より先に湿布を95枚、作らないといけなくなった。湿布も改善したいと思っていたから、成功したらいつもの湿布に数枚試作を追加で渡して、後で感想を聞くのもいいかもしれない。あの少年ほど、私の湿布を使ってくれる人は他にいないから。回復薬とかもそうやって常連さんに試してもらうのもいいかもしれない。
午前中はそれから5人お客さんが来た。最近お客さんが増えてきた気がする。仕入れの量を増やさないといけないかな。たくさん試作品を作る予定だから、売上が上がるのは嬉しいけど研究に充てる時間がなくなるのは惜しい。アルバイトでも雇った方がいいかな。午後は注文分を作りながら数名のお客さんを相手にした。いくつか在庫分もなくなってしまった。結局この日は研究に充てる時間はなかった。
ようやく研究する時間ができたのは二日後の店休日。とりあえず湿布の試作に取りかかる。湿布は冷たさの維持が重要だ。私の湿布は他のものよりも長く効果があるようだけど、和音として記憶のある湿布よりも効果は短い。けれど長く維持しようとして冷気を固定すると、今度は冷たすぎて皮膚が凍傷のようになってしまうのだ。今はフェルトのような生地を使って包帯などで固定している。試作品はフェルトに固定している冷気を少し強くし、そのフェルトを包む生地に少しづつ冷気を送る機能とフェルトの冷気を長く維持できる機能をつけることはできないかと考えた。私は冷気を固定したフェルトを麻布に巻く。そして麻布に風を固定する。ただし内側は循環するように外側には少し風が通るように。何度か失敗すること4時間、ようやく固定に成功した。自分の腕にくっつけてみて、風が少しづつ出ているのを確認する。フェルトと麻布の間にミントに似た薬草も入れていて、元の世界の湿布に少し近づいた感じがした。
「ちょっと休憩しよう」
かなり集中してしまっていたようだ。昼を少し過ぎていた。作る気力はないので、昨日の夕飯の残りを食べる。もくもくと食べていると、裏口の戸を叩く音がした。今日来客の予定はない。突然の訪問にミュートさんを警戒したが「カミラさん、いますか?」とかけている声は女の人の声だった。ちょっと安心する。
「いま出ます!」
口の中の物を水で流し込んで慌てて戸を開けた。するとそこに魔具師のケイトさんがいた。
「やほー!気になって来たよ」
「ケイトさん!ありがとうございます。この場所はミュートさんに?」
「いや、ラニに。ラニがあの人に聞いたなんじゃないかな?」
そっか。直接の知り合いではなかったよね。でも直接自分の物を見てもらえるのは本当にありがたい。今度ミュートさんに会ったらお礼言わなくちゃ。
心の中でそう思いながらケイトさんを中に入れる。せっかく来てくれたのだ。食べている場合じゃない。急いで片付けて作業室に案内する。ケイトさんは中を珍しそうにキョロキョロしながら見ていた。
お茶を手渡すとケイトさんは苦笑しながら言った。
「他の人の研究室なんて普通は見せてもらえないしさ、ましてや薬剤師の部屋なんて見るの初めてだったから」
「そんな隠してるわけではないので、なんでも見てもいいですよ?」
「え?!でもこの間聞いたのって、特許取るんじゃないの?」
「?いえ?薬の効果を上げるにはどうしたらいいか悩んでいただけなので…」
「もったいないよ!」
ケイトさんは作業台の隅にお茶を置いて力説した。
「うちら魔具師、魔術師、薬剤師は、特許取って初めて一人前なんだよ?!魔道士は国に囲われてるから無理だけどさ、うちらはお金持ちになる可能性を秘めてるんだよ!私だって今は国の機関にいるけどさ、別で特許のための研究もしてるよ。独立したときに食っていけるかはそういうのにかかってるんだって!」
「…は、はぁ…」
勢いに飲まれそうだ…。ケイトさんの力説は一時間続いたのだった…。