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王都の薬売り  作者: 鮎河和生
17/18

16話

 ラニさんは私の方を向いて、再びじっと見た。


「これで生きてるなんて、すごい奇跡ね」


 死んだ人の体に入って動いているんだから、確かに奇跡だろうけど、魔力が不安定とは知らなかった。もしかして、魔力の扱いが下手なのも、自分が下手なだけが原因ではないのかもしれない。


「そのことについても話したかったんだけど、まずはカミラの話からね」


 ミュートさんは話を強引に進める。


「カミラは、魔力を液体に混ぜる方法を見つけたいんだ。何かヒントになりそうなこと知らない?」

「液体に混ぜる…ね…。物体に魔力を固定する方法はあるけど…液体に固定する、と考えたら、方法はあるかもしれないわね。でもその固定の仕方は知らないわ。魔法学園で簡単な物体の固定方法は習ったことあるけれど、魔導士の道へ進んじゃったから詳しくは分からないの」


 ラニさんはそう答えながら、周囲を見渡して誰かを探している。すぐに目当ての人物を見つけたようで、手まねきをした。


「あのケイトが魔具師だから、もし方法があるなら知ってるはずよ」


 ケイトさんは話を聞いてくれた。うんうん考えながら教えてくれる。


「お風呂のさ、お湯って魔法かかってるじゃない?あれ、実は水に魔法がかかってるんじゃなくて海からの水を転移して塩水の塩を浄化してさ、火の魔力を道具に込めてるんだよね。水なんかの液体に直接固定するって、まだ研究段階なんだよ。固定しようとしても流れていっちゃうみたいよ。私の知り合いにはその研究してる人いないけど、誰か研究者知ってる人いないか声かけてあげるよ」

「すみません、ありがとうございます」


 これで少しは進みだろうか。直接水に魔法を使っているのかと思ったら、違っていた。私は魔力の流れを見ることはできない。それは練習次第のようだけど、魔具師になるとそれが出来ないと話にならないそうだ。その流れを見て、きちんと固定されているか確認しているという。


 それで何回実験しても上手く出来なかったわけだ。どうして失敗するのか原因が分かったので、少し前進した気持ちになる。


「それにしても、これだけの魔力があってそれだけ不安定で、よく魔法使えるわね」


 ラニさんはどうしても私の状態が気になるらしい。


「でも、元々この身体の持ち主も魔力は不安定だったんです。産まれた時から膨大な魔力があって、それを体が受け止めきれなかったみたいで。魔力を最小に抑えつけることで、この年まで生きられたみたいです」

「魔力を最小に、ね。確かに魔力をほぼゼロにして抑えないと、少し魔力がある状態にするっていうのは難しいだろうからね。てことは、体の持ち主はほとんど魔力をつかえなかったんだね」

「はい。日常生活の魔法しか使えなかったようです。ほとんど魔具に魔力を入れることしかしなかったみたいです」

「ああ、日常生活に必要な魔具は、ほとんど魔力のない人でも使えるように開発してるからね。で、その膨大な魔力を開放して貴女の魂でその体に固定したのはいいけど、安定はしてないってことか」

「…そ、そうなんですね」

「少ない魔力だったんだから、魔術でそれを実行したんだろうね。大した人だったんだね」


 カミラは小さい頃から自分でもよくなる方法を必死に探すためにあらゆることを勉強していたのを知っているので、私は大きく頷いた。


「ええ、色んな事を勉強していたようです。まだ全部は見れていないのですが、いろんな分野の研究を読んで研究したりしていたみたいです」

「もしかしたら、魔力を安定させる方法も、その研究の中に解決策になるヒントがあるかもしれないよ」

「そうですね。確認してみます」


 ラニさんとそんな話をしていると、ミュートさんが割って入ってきて言った。


「あー、カミラの安定させる方法は知ってるよ」

「え?!」

「どうして教えてあげないのよ。魔力の安定は大事って魔族でも同じでしょ?」

「うん、そうなんだけどね、きっと嫌がると思って」


 私が嫌がる?

 何をするんだろうか?ラニさんはイライラしたようにミュートさんを促す。


「早く教えてあげなよ。そんな危ないことでもするの?」

「う~ん…後でね」


 ラニさんが迫っても決して話そうとしないミュートさん。そんなに話しづらいことなんだろうか。私は不安になってくる。


「変なとこ頑固なんだから。分かってるでしょうけど、そのままではいずれその魂も消費してしまうよ」

「そんなことはさせないさ」


 私はラニさんに体の具合などを聞かれたりしたが、どうしても挨拶したかった人が来たらしくバタバタと去っていった。


「…なかなか賑やかな人でしたね」

「そうでしょ。でもヒントは貰えたでしょ?」

「はい。ミュートさん、ありがとうございました。…来て良かったです」


 嫌々参加したパーティだったけれど、とても有意義な時間を過ごせた。ミュートさんから安定させる方法を聞きたかったけれど、やっぱり後でね、と言って答えてくれなかった。何か事情があるのかもしれないし、私はそれ以上訊くことをやめた。

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