14話
今回も短めですみません!
なかなか切り良く話が書けない未熟者です…。
ミュートさんはその日から姿を見せなくなった。
それから約1年。私はトラブルもなくお店を開店させ、今では常連のお客さんもいる。日々充実していた。薬を作る際に魔力を込める実験も、だいぶ形になってきていた。簡単に出来るとは思わなかったが、ここまで時間がかかるとは思わなかった。
まだ納得はいっていないけれど、薬草を育てる時に水に魔力を混ぜると薬草自身の魔力が増し、それだけでも効果は増していた。それに作成時に魔力をこめる作業を加えているが、なかなか安定しない。
「う~ん…薬草を育てる時に魔力を混ぜるのはいくら混ぜてもこれ以上は増えなかったから、やっぱり作る時に魔力を込める仕方を工夫するしかないんだけど、どうもなぁ…」
頭を抱えていると、お店のドアが開く音がした。慌てて調合室から出る。
「いらっしゃいま……あ!」
「こんにちは!」
最近よく見るお客様だ。冒険者で森の中をウロウロするので、切り傷が絶えないらしい。女の子なのに~といつもぼやいている。
「いつもの塗り薬ですか?」
「うん、カミラさんの塗り薬はよく効くから手放せないわ。治療師にいつも頼むわけにもいかないしね」
「でも、治療師さんの方がきれいに治るんじゃないですか?」
「その分高いもの。よほどの怪我じゃない限り、私みたいな下っ端冒険者の収入じゃ使えないわ」
私はいつもの量の塗り薬を用意する。袋に入れて彼女に渡すと、お金を出そうとポケットに手を入れていた。
「あ!」
「どうしたんですか?」
もしかしたらお金が足りないのかもしれない。そう不安になっていると、彼女は1枚の手紙を取り出した。よく見ると招待状のようだ。
「これ、来てない?」
「私にですか?」
「うん、王都在住の年頃の娘、全員に来てるみたいなんだけど」
「いえ、来てないですね」
「多分来るわよ。貴族とか平民とか関係ないみたいだし」
「どんな内容なんですか?」
王都在住の娘全員ということは、城からの招待状だろう。嫌な予感しかない。
「えっとね。魔族と合同のパーティみたいね。魔族とのお見合いパーティかな」
「…魔族と結婚できるんですか?」
魔族と聞くと、悪いイメージしかないけれど、この世界では種族のひとつなのだろうか。純粋な疑問を彼女にぶつけてみる。
「そうね。でもここ数十年の話よ。確か今の王様のおばあ様の妹が魔族に嫁いでからじゃないかな。それまでは怖い種族として恐れられてたし、襲われるんじゃないかと思われていたの。ところがその妹の…シンシア様、だったかな。と、当時の魔王が恋愛結婚しちゃって、この国と不可侵の協定を結ぶことになったんですって」
「そうなんですね」
その十数年で色んな種族の一つとして受け入れられるようになったのね。それにしてもお見合いパーティまでするなんて…。なんだか平和な話だけど…参加はしたくないなぁ…。
「その招待状が来た場合、断っても大丈夫なんですかね?」
「かなりの人数に送ってるんだから、一人行かなくても気づかれないと思うわよ。行かないつもりなの?もったいないわねー」
「元々、結婚するつもりはないので」
「えー!そんなにキレイなのに」
人間の男を紹介するという彼女を追い出して、私は郵便受けを見に行く。研究で今日はまだ見ていなかったけれど、来てるなら入ってるはずだ。
…入っていた。王家の紋章が入っている。主催は王家のようだ。ドレスコードもない、気軽なもののようだ。私はそれをかまどの中へ入れた。
そのパーティ当日、私はお店を閉めて家でゆっくりと昼食をとっていた。どうやら招待状をもらったほとんどの女の子は参加するらしく、お店を開けていると余計な心配をする人達が来そうな気がして、研究に集中する日にしたのだ。なのでゆっくりと昼食をとっていたのに…
ドンドン!ドンドン!
誰かが裏のドアを叩いている。お客様ならお店の方のドアを叩くはずだ。しかしそんなプライベートで訪れるくらい親しい人はまだ王都に数人しかいない。
「…はい」
恐る恐る開けると、満面の笑みをしたミュートさんが立っていた。