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王都の薬売り  作者: 鮎河和生
13/18

12話

ちょっと短いです。

次の日、私は泣きそうになりながらバジリスクの頭を冒険者ギルドに持って行った。ギルドで解体も行っているらしい。皮と牙だけもらい、後は処分してもらう。どうもその他の物も価値があったみたいで、処分費を差し引いた後のお金をもらう。これはミュートさんに渡そう。


「ありがとうございました!」


冒険者ギルドを出て、薬剤師ギルドへ向かう。そろそろ薬のランクも出ているだろう。ドキドキしながらギルドの受付に尋ねる。


「あの…査定の結果を聞きたいのですが」

「会員証をお願いします。……ああ、結果が出ています。ランクBですね。会員証にも登録されました。これで登録分の薬を王都で販売することができます。こちらが販売許可証です。おめでとうございます!」

「ありがとうございます。それであの~…広告ってどうやって出すんですか?」

「広告、ですか?そうですねぇ…新聞屋さんに相談されてみてはどうでしょうか?…結構お金かかるかもしれませんが…」

「そうなんですね」

「ええ、少し売れだした頃に広告を打つ人が多いので…。まぁそうじゃないと払えないのかもしれませんが」

「ではみんな最初はどんな事してるんでしょうか?」

「だいたいはお店の近くの飲食店に広告を貼らせてもらってるみたいですよ」

「まずはそこからですね。ありがとうございます」

「いえ、頑張ってくださいね」


受付の人に応援されて少しウキウキしながら許可証を持って出る。早速、お店の近くの飲食店へ寄った。


「いらっしゃい!」


恰幅の良いおばさんに声をかけられる。店の中を見回すと、そこには掲示板のようなものがあり結構な数の紙が貼られていた。私はそこへ近づいて内容を見てみる。冒険者の仲間の募集や、仕事の募集、私と同じ薬の宣伝もあった。


「すみません!ここに広告を貼らせてもらいたいんですが…」

「いいわよぉ~適当に貼ってもらって。貼る人多いからすぐに下になっちゃうかもしれないけど。それと、月末にいつも整理してるのよ。だから毎月初めに貼り直しにくるといいわ」

「ありがとうございます」


数件飲食店に入り声をかけて広告を貼らせてもらう。自分の店に戻ると早速店舗の中をディスプレイする。開店は1週間後だ。きちんとディスプレイして足りない備品を調達しないといけない。プラス、裏庭に薬草を植えないと。期日が決まると焦ってくる。看板も明日届く予定だ。


(頭の中が混乱する~~!!)


 そうやってバタバタしていると、店の外から中を覗いている人に気づく。不審者ではなさそうなので、私は声をかけることにした。


「どうされました?…えっと…このお店の開店はまだ先なんですが…」


 近づいていくと、その人がとても奇麗な顔をしていることが分かる。銀色に輝くサラサラヘアが風でふわりと動く。瞳は綺麗なブルーだ。どことなくミュートさんを思い出す。うん、彼も人外に綺麗だからなぁ。同じような感じの人だ。…あ、ミュートさんは魔族か。


 その人は私にふわりと困ったように笑った。


「ちょっと外れた所にあるお店だったので、どんな人が開くんだろうと少し興味を持ってしまいまして。…すみません、まさか気づかれるとは」


 確かに。少し他の薬屋さんとは離れているもんね。商売するには辺鄙な場所だ。


「そうですよね。でもこの店舗、裏に畑があるんです。元々いた所が森の中だったので、緑がなつかしくなって気に入ってしまって…薬草も栽培できるしって事でここで開くことにしたんです」

「そうなんですね。確かに自分で栽培した方がいい草もありますもんね。私も少し薬草を作れるものですから、一々買いに行くのが面倒になる気持ち分かります」

「あら?同業者さんですか?」

「いえ、あくまで趣味程度です。資格も持ってないですし、販売できるほど上手くもありません。あくまで自分用に少し回復薬が欲しいときなどに作って使っています」


 田舎だと薬剤師さんがいない地域もあるから、そういうところは自分たちで作るって聞いたことがある。…その顔立ちで田舎育ちって事はないだろうから、本当に趣味の範囲なんだろうなぁ。


「チラシを見たのですが薬のランクはBなんですね。元々、どこかで作っていたのですか?」


 ことりと首を傾げる仕草にドキリとする。


「はい、田舎で細々と薬屋をしていました。ここでは必須の回復薬はあまり必要なくて、腰痛の薬や咳止めなどの病気の薬の方がよく作っていました。本当はそっちの方が得意なんです」

「じゃあ、私も病気をしたら寄ろうかな」

「いえいえ、家で寝てる方が回復しますよ」


 変った銀髪の青年と一時話しをした。話をして分かったのは、ちょっと作る程度の知識ではないほど薬草について詳しいこと。思いのほか話が弾んでしまった。


「じゃあ、私はこれから仕事があるから」

「はい、今度は開店したときに時間があったら寄ってください」


 やっぱり苦労して覚えた薬の話をするのは楽しい。知識の再確認にもなるし、知らないことも知ることが出来た。私は薬剤師の友達を探そうと決意しながら店の中をディスプレイしていった。


 慌ただしかったけど、やはり動いていると気持ちがいい。お風呂にゆっくり浸かってフカフカのベッドに体を沈めて満足感でいっぱいだった。明日は薬草を植えよう、そう決めて眠りに落ちた。

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